資料館の2階には壁面一杯、たくさんの絵馬が掛けられています。


 大阪府難波1丁目にある、法善寺(ほうぜんじ)です。

 

 かつて京都宇治にあった浄土宗天龍山法善寺は、寛永14年(1637年)、ときの住職である中誉専念法師が「金毘羅天王墾伝」の故事に基づき、現在の大阪難波の地に移転しました。

 

 念仏聖の専念法師は、人々の供養のために千日間にもおよぶ念仏回向を勤めるなど、民衆に寄り添う日暮らしを送られました。

 

 大阪ミナミの法善寺一帯の地域が「千日前」と呼ばれるようになったのは、この専念法師が行った「千日念仏回向」に由来します。

 

 絵馬には、西向不動明王が祀られているお堂が描かれています。

 

 「水掛不動尊」「水掛け不動さん」と呼ばれる法善寺の西向不動明王は、あざやかな緑の苔に包まれた珍しい姿です。

 

 400年近い歴史をもつ法善寺ですが、実は“水掛け”の歴史は浅く、戦後すぐに始まったものでした。

 

 ある日、法善寺へお参りにやってきた一人の女性が、お供えされていた目の前の水を手ですくい、お不動さんに掛けたのです。

 

 「願いを叶えて欲しい」と仏さまにすがる女性の強い思いが、今日まで続く“水掛け”の作法の発祥となりました。

 

 水掛不動尊を包む苔は、願いの数だけ広がり、願いの分だけ育まれてきました。すべての命の源である「水」を、全身で受けとめてくださるお不動さんは、いつも私たちの祈る姿を見つめていただいています。