(ん?)
一つひらめく。詐術は敵と相対してから始める必要はない。宮本武蔵の巌流島もそうだった。
真偽はさておき、巌流島の決闘は武蔵と佐々木小次郎によって行われた戦いである。
そのさい、武蔵はわざと遅刻して小次郎をじらせ、また太陽を背にして目くらましをし、さらには『武器として使用した
(できる。これなら、今すぐにでも)
魔剣と呼ぶにはほど遠い。だが、これなら確実に敵は迷う。それに剣士の策は、一瞬ですべてを見切れなければ十分な効果を持ちえる。なにより、義影なら武蔵の伝説をどこでも再現可能。敵にとって、これほど戦いにくい相手はない。
(試すか)
部屋にいる鏡陰との【力】のつながりを確認し、剣を影に隠すイメージを重ね合わせる。【力】と共に、せっかく休んでいるのに、という思念が流れ込んできた。
苦笑しつつあやまり、イメージを完結させる。
(よし、できるな)
視覚できなくなった小太刀で薄く自分の腕を斬った。この状態のまま攻撃できるかを確かめる。問題ない。少し考え、技に『新月』という名前を与えて【力】を解除する。
(まだ足りない。もう一工夫、いや、二工夫いるな)
ゆえに、剣を振るう。
魔剣の究極形は「分かっていても防げない」だ。本気で爆発すれば街ひとつ消し飛ばすという茜は、卑怯なくらいにそれを満たす。剣ではないが。
『本気出しても、火山噴火には負けると思うよ~』
ふと茜の言葉が脳裏をよぎった。ちなみに火山の噴火とは、規模によっては第二次世界大戦型核爆弾に数十倍する威力を持つ。人間として比較基準がまちがっている。
(天然活火山女……。タチ悪っ! 自覚がないあたり、とくに)
思考がまたわきにズレた。
突進に優れる義影が参考とすべきは、
この技はまず、剣を八相あるいはかつぎ上段に近い独特の構えをとる。
突進。緩急自在の〝
接近。さらに間合いを錯誤させるため、体重移動を兼ねた最後の一歩を大きく踏み出し、刀を全力で振り下ろす。これにより、さらに間合いをカン違いした敵は何もできずに斬られる、といった寸法だ。万が一、相手が気付いても関係ない。相討ち上等で一閃する。
これが二之太刀要らずの示現流、トンボの構えからの突進撃。たんなる突撃剣と思われがちだが、走る、斬るの動作にいくつもの欺瞞があるのだ。もちろんリスクは大きいが、それでも薩摩隼人と称された荒武者たちは委細かまわず突進し、敵味方双方の屍と最剛剣の名誉を築いたのだった。
(毎度毎度、捨て身攻撃するわけにもいかないだろ)
多くの同志がいた幕末の彼らと、孤兵の義影では置かれた立場が違う。使うには改良の必要がある。
義影の場合は――
更新ペースが上がりません(泣)。気長にお待ちくださいませ。