東郷のブログ


韓国サムスン電子が、米電子機器大手アップルとの特許紛争の緒戦で手痛い敗北を喫した。

サムスンのタブレット型端末「ギャラクシー10.1」がアップルのデザインを侵害しているとして、ドイツで販売を禁じられたのだ。


 世界のIT(情報技術)企業は、スマートフォン(高機能携帯電話)とタブレット端末がパソコンに代わる主戦場とみて、激しい特許紛争を繰り広げている。

サムスンは電子部品供給メーカーから世界的な最終製品メーカーへの脱却の過程で知的財産権の壁に突き当たっている。



損失総額860億円?


韓国の中央日報などによると、独デュッセルドルフ地方裁判所は9日、「ギャラクシー10.1」はアップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)2」と「明らかに似ているという印象を与える」として、サムスンに同端末の独国内での宣伝・販売禁止処分を決定した。

この判決を受け、サムスンは控訴する意向を表明した。


 アップルは、サムスンがスマートフォンでも「iPhone(アイフォーン)」のデザインや操作性を「露骨に模倣した」として、米連邦地裁に提訴。

サムスンもアップルが同社の無線通信技術を侵害しているとして、逆提訴した。両社は現在、米・日・韓・独・蘭・豪など9カ国・12裁判所で25件の特許をめぐり争っている。


米国の市場調査会社IDCによると、サムスンは昨年、「ギャラクシータブ」を投入し、世界で約270万台を販売したが、約3000万台売れたアップルのiPadに大きく水をあけられた。

初代ギャラクシータブは7インチと、iPadより画面が小さく、携帯性を重視し、iPadとの競合を避けた。

今夏発売のギャラクシータブ10.1はiPadより一回り大きな10.1インチ画面を持ち、iPadの牙城に正面から挑む世界戦略製品との位置づけだ。この商品の販売機会を奪われれば、サムスンの痛手は計り知れない。

 

中央日報によると、サムスンにとって、スマートフォンとタブレット端末の3分の1が欧州で販売されており、このうち独は約17%を占める主要市場。

蘭ハーグ地方裁判所も8月、サムスンのスマートフォン「ギャラクシー」3モデルがアップルの技術特許を侵害していると認め同国内での販売を禁止する仮処分を決定している。

サムスンがギャラクシーシリーズの販売を欧州で年末まで差し止められた場合、損失総額は1兆2500億ウォン(約860億円)に上るという。



「恐怖の均衡」で対抗


ただ、アップルとサムスンは対立ばかりでなく、共生の側面もある。

アップルは昨年、サムスン電子から約4300億円の部品を購入した最大の顧客だ。

英エコノミスト誌によると、アップルの「iPhone 4」の部品原価178ドル(約1万3700円)のうち、サムスンはCPU(中央演算処理装置)8.08ドル、DRAM(汎用(はんよう)メモリー)11.6ドル、データ保存用のフラッシュメモリー26.0ドルの計45.68ドルと、価格ベースで25.7%の部品を供給している。

アップルは次期「iPad 3」の液晶画面の調達先を、供給の質と量を両立できない韓国LGディスプレーからサムスン電子に切り替えるとの報道もインターネットのIT専門サイトなどで見受けられる。


 しかし、サムスン電子が単なる電子部品供給会社から先端IT機器の最終製品メーカーに脱皮するには、独創的な製品やビジネスモデルを生み出す知財戦略の確立が不可欠だ。

中央日報は社説で、米ソ冷戦時代に双方が相手の本土を攻撃可能な戦略核兵器を持つことで両国間に平和が保たれたことを踏まえて、特許紛争の抑止には「恐怖の均衡」が特効薬だとして、韓国企業に対し、世界の先進企業に対抗できる特許網の構築を求めている。