1972―6

#39

頭のなかに多分納まっているだろうmy脳味噌が取り出せるものなら

そうして貴船の川の流れに冷やしてみたい  

絵になる 滑稽だろう

総てを無に帰するなか 或いは 全能を我に与えよ!

如何せん 確実に日々は過ぎ去りぬ  わめいても 

結局は空しいからそうはしない

何をするにも結果が見えすぎている  結局は…

 

 

#40(21:05 於:シアンクレール)

一室に見知らぬ男三人と女が一人  jazzのplayに耳を傾ける 胸中何を抱く 知る由もなし

果ては己と同じかしらん と思えど  流れる曲に同化するのみ  もう部屋を離れよう  

外は北風

 

 

#41

私は つと部屋を離れた  

別に四畳半の圧縮された空気にいたたまれなくなり、漂う紫煙が眼を染ませたからではない

私は 雪解け水を運ぶ彼の川に確実に足を向けていた  

別に そのせせらぎの奏でる音が、我が心を慰撫してくれるだろうことに誘われたからではない

私は 心を決めたのである  

実際それは私の一大飛躍であったろう (もしかしたら戻らなくなるんじゃないか)

私は 川辺に脚を組んだ  川面を走る風が頬をうつ  

その冷たさが心を緊張させ 私の手は慎重になる

額から ちょうど円木に溝を彫り進める要領で ただ鋭くメスを入れる   

耳の上から後頭部 ここは最も気を遣う   そしてまた耳の上から額    

研がれた刃は 命ずるままの軌を描く

メスを足許に置く  決して頭部は微動だにさせてはならない  

両手を側頭に添え  そっと外す

冷流に浸された意識器官      実に爽快だ…