鹿王院 と 嵐電嵯峨

 

 

鹿王院…鹿王院は足利義満が創建した寺院で、覚雄山と号している。薮の中から白鹿が出てきたために名付けられたらしい。

 

 

嵐電嵯峨…嵯峨とは、右京区の西北部一帯地域のことであるが、この辺りは愛宕山麓にあって、ゆるやかな傾斜地になっていることから、坂(さか)、さがと呼ばれるようになった。

 

  嵐電嵯峨駅の旧名は「嵯峨嵐山駅前」駅らしい。JRの駅があり、トロッコ列車の始点駅とも連絡している。トロッコ列車には数年前の春、一時嵐山や嵯峨野一帯を散策していた折に初めて乗ってみた。

 窓からの早春の風は肌寒く、それでも同乗した中国人とおぼしき観光客のグループは、ワイワイ言いながら右に左にシャッターを切っていた。亀岡の終点に着くと、僕は、すぐさま同じ列車で折り返した。

 

 トロッコ列車が走る保津峡を、翌年の五月に行ってみた。

 どこか野外でお昼をしようと思い、それならとバイクのハンドルを保津峡に向けた。

 トンネルを抜け、この辺かなと思う場所の道端に駐輪し、斜面を川辺に降りた。春の陽光に川の水も温(ぬる)んでいるようだった。大きな石に腰掛け、おにぎりをほおばる。と、何やらざわざわとした声が。眼前を保津川下りの船が通り過ぎる。それだけならいいのだが、乗船客が手を振ってくる。観光都市京都、その一市民としては無視もできず手を振り返す。それだけならいいのだが、観光シーズンたけなわで、しかも水が恋しくなるその日のお天気。次から次へと船が下ってくる。手を振ってくるから、やはりそれに応える。照れ臭くばつが悪い。食べ終わると、そそくさとその場を離れた。

 でも、決して嫌な気分ではなく、のどかな光景の一コマであり、今思い出しても可笑(おか)しくなる。