(秋田にて 大潟村田園)

(田沢湖)

 

  回想その⑤

5.「みさと」のこと

 他クラスに授業に行って、驚いた。教室の後ろの壁に、テストの解答用紙が貼られているではないか。しかも、点数のよい順に上から全員分を。即座に、ぼくはそれを外させた。その時、「みさと」が急に泣きだした。

 「みさと」は、残留日本人孤児を親に持ち、小学生の時に、中国から日本にやってきて、日本語にもやっと支障がなくなってきたかなという時期であった。順に貼られた一番下に、その「みさと」の名があった。それを貼った先生には、その先生なりの意図があったかもしれない。それを勝手に外させたぼくの行動には、責められるところもあるのだろう。でも、「みさと」の涙は忘れない。

 

  ぼくは思うのだ。どんな仲間でも、批判し合うことは大切だ。それが非難や中傷とならないかぎり…

 

  回想その⑥

6.「のぶ」のこと

 「のぶ」には困った。「のぶ」のそばには、クラスの者が寄らない。特に女子は「のぶ」を避ける。「のぶ」はきたないし、不潔だというのだ。「のぶ」がさわったものには、さわりたくもないとさえ言う。クラスの者が、特定の人物を遠ざけること、本来は絶対に許せないことだ。でも、それだけでは片付かない背景もある。確かに鼻くそはほじっているし、歯の間のカスを爪の先で取り、それを鼻に近づけにおいさえ嗅いでいる。そんな姿を、ぼくも眼にしたことはあるが、そういうことがしょっちゅうらしい。うーん、「のぶ」には困った。で、どうしたか。明るく考えることにした。原因がはっきりしているのなら、その原因となるものを取り除けばいい。『のぶよ、人前で鼻をほじるな!においを嗅ぐな!』である。

 人というのは、手のひらを返したように、急に変わるものでもない。だから、明るく言いつづけよう。

 

 人を拒絶するのは、ある意味簡単なことだ。でも、人に歩みよること、人を受け容れるには、努力を要する。その分だけ、価値もあるのだ、とぼくは思う。

                                   (すべて仮名です。終わり)

 

※僕が、僕の人生を歩んできたように、「回想」に登場した諸君も、それぞれが自身の人生を力強く歩んでいてくれるものと思う。人間って哀しいところもたくさんあるけど、そんなにヤワじゃないよ。

 

(岩手県 遠野)

探したけど、河童は見つからなかった…