それは、埼玉のとあるお客さんに頼まれたのがはじまりだった。


年の頃はあたしよりちょいと上で子供が二人。マイホームも建てて一見順風満帆に見える夫婦だが、ちょっと変わっている所がある。


四月ごろあたしはこの夫婦の家に三週連続で訪問させていただいたのだが、土日の昼間であるにもかかわらず奥さんが不在だった。毎週毎週旦那さんの口から今日は飲み会で~今日は仕事で~なんて話を聞いていた。わりと深く奥さんのことを伺うと、どうも土日は家にほとんどいないらしい。それどころか夜中に飲みに行ったっきり家にも帰ってこないそうだ。家に奥さんがいない土日は旦那さんが小さい子供の面倒をずーーーっと見ている、との事。


そもそもこの家族、旦那さんの稼ぎは同世代の平均よりかなり多い上に投資なんかもしていたりする。つまりいくら住宅ローンがあろうがとても切迫した家計であるとは思えない。なのになぜ奥さんは外に稼ぎに出ているのであろうか。その事を旦那さんに聞くと、さらっと


「自分が飲みに行く小遣い稼ぎでしょうね」


と、言ってのけた。あたしも奥さんの事に関して言いたいこともあったのだが、そこは黙っていた。大人だもん。


そうこう旦那さんの愚痴を聞いているうちにいつの間にか飲みに行く様な中になった。まぁ飲みに行っても旦那さんの愚痴を聞いている事が多いのだが、話を聞けば聞くほどすっごい可哀想な人なんだな、と思った。嫁の実家が近いからと縁もゆかりも無い土地に家を建てさせられ平日は日付が変わるか変わらないかまで働き家に帰れば嫁は不在。平日すら家にいなかったりする嫁。土日は上記の通り…


これが甲斐性無しの旦那であれば仕方ないのかな、とも思うがここの旦那さんはそんな事もない。おょさん、僕辛いですよ…飲みながらそんな事を言っていた旦那さんが、何かのきっかけでぶつりと糸が切れて発狂しない事を祈る事しか出来ないあたしは、なんとなくこの夫婦の事が気掛かりで過ごしていた。気にしているだけで特に何をするわけではなかったが。


そんな夫婦の奥さんの方から先日電話をもらった。離婚でもしたかなと一瞬思ったがそんな事ではなく、なんか探し物をしているから探してほしい、との事だった。


妖怪ウォッチ…の、DX妖怪ウォッチというおもちゃがどうにもこうにも東京近郊では手に入らないらしく、おょさんの住んでいる地方ならあるかなーと電話してきたらしい。


今日日インターネッツがある時代に手に入らないってどんなおもちゃやねんと思いつつ、ネットで通販したらどうですかと聞くと、品薄の上の人気により価格が暴騰しているとの事。3000円ちょっとのものが一万円での取引の上に手に入らないらしい。あーおもちゃってたまにそういうのありますよねーなんて言いつつあたしはこのDX妖怪ウォッチを探すのは消極的だった。だってこんな奥さんなんだもの。


まぁふらっとおもちゃ屋見てみますねーなんてなぁなぁに電話を切ろうとした時、この奥さんがぼそっとこんな事を言った。


「旦那にも仕事の合間や休みの日に探させてるんだけどないのよねーお願いしますね」




!?



ちょ…すでにプライベートなんかない状態の旦那さんに更に鞭を打つような事をしているのかこの奥さん…夫婦間の事は他人がとやかく言う事はないがそろそろいくら優しく働き者の旦那さんでも朽ち果ててしまうだろうと思い、あたしはDX妖怪ウォッチを手に入れる事を決意した。だってまじで旦那さん死んじゃうよこのままじゃ!


と、いうことで連絡後すぐさま割と近所のトイザらスを覗いてみると、あれ




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なんか簡単に手に入れてしまった…のかな、と思いつつも不安がよぎる、いや、最早不安しかないのでインターネッツでさくっと調べてみた。









これDX妖怪ウォッチじゃねーじゃん!



きちんと箱をみてみるときゃらっち!妖怪ウォッチとか書いてある。ささっといってぱぱっと買ってきたのが敗因だろう。これ、一応バンダイ製品なのでパクリではないのだろうけど…とりあえず敵を知らなければ戦えないと思いそのまま妖怪ウォッチの事を調べた。



なるほど、ポケモンを越えたとか越えるとか言われているこの作品。開発はドラゴンクエスト8,9あたりを作ったレベルファイブで、同社のイナズマイレブンやダンボール戦記のようにゲームから入ってアニメ化等色んな方面に進出しようって商品なのですね。ゲーム→アニメ→グッズ販売→また新作、とループを狙った2つの兄貴ソフトをぶち抜いて大ヒットだそうで。売り方云々はともかく、ゲーム発祥という事と、主役が妖怪と仲良くなってお供を増やしていくってのがポケモンと比較される理由だと思いますがね…



とりあえずポケモンと決定的に違うのは、妖怪は結構喋るんですよ。コンビニでマンガ本も売っていたので買って読んでみたのですが、何かやらかす妖怪がいる→主役がそれを解決する→妖怪が仲間になってメダルがもらえるっていわゆる水戸黄門のように話の流れは一緒みたいな感じですね。



で、大体はポケモンでいうピカチュウにあたる看板キャラのジバニャンとかいう尻尾が2尾ある化けネコが召還されてなんとかするんですが、この召還された時って何をしていても呼ばれるんですよね。アイドルの握手会の途中とかでも呼び出される。で、ジバニャンってのが妖怪なのによく喋るんです。ぴかーぴかー言ってるねずみとはちげえんだよとばかりに喋る。喋るキャラ設定からなのか、死んでから妖怪になるまでの設定も妙に凝っているというか…飼い主ひでえなというか…今までのマスコットとは違うんだよと言わんばかりのキャラですな。



そういえばこの妖怪と仲良くなった時に貰える妖怪メダルってのも商品になっていて東京近郊では売っていないから探して、と埼玉奥様に言われていますた。うーん売ってるもんなんですかねえ…



で、そこからは足で稼ぐ作戦へとでました。オモチャ屋というオモチャ屋に行き情報を収集する。人気商品でやはり品薄状態が続いているが、意外と入荷もあるとの事。ただし、入ったらすぐ、それこそ午前中には売れてしまうようだ。そして不定期なので予約をしていない店がほとんど。



イオンだと、結構告知して土曜日に販売します、何て事もやるようだがすんごい並ぶよ、と別のお客さんにもそんな話を聞きました。妖怪ウォッチの話って結構みんなに通じるんだな…そしてみんなメダルは何枚かあるようだがDX妖怪ウォッチは持っていないという。



まぁ、最初に書いた通りインターネッツで定価の3倍とかになっている商品ですから、転売するアホのおかげで慢性的な品切れが続いているんですよね、というか正確な所、転売バカと子供にせがまれる大人の醜い戦いなのですね妖怪ウォッチを探すという事は。



数日後…いや数日ではないか、およそ2週間後、妖怪メダルは結構ぽっと近所のスーパーやおもちゃ屋に入っていて手に入れる事ができた。が、肝心のDX妖怪ウォッチはやはり見つける事が出来ず…うーんこれはどうしたもんかと頭を悩ませていたらとあるお客さんから電話がくる。このお客さん、勤め先がとあるオモチャ屋で、妖怪ウォッチの事を聞く為に電話して話していたのだが、もし入荷したら連絡下さいねーすぐ買いに行きますから!と、言ったらいつはいるかわかんないよーと消極的な事を言っていた。が、






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「取り置きはできないけど、入ったから欲しいならすぐ買いに来てね☆」


と、いう電話のおかげで無事に買う事が出来ました。その日のすべての予定を投げ出しましたよまったく…



と、いう訳で何枚か買っていたメダル20枚くらいとDX妖怪ウォッチを梱包して、埼玉のお客さんの所に送りつけて無事ミッション終了。うん、よかったよかった。これできっと埼玉旦那さんも昼休憩くらいは取れるであろう。



で、まぁ

























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ちゃっかり自分の分も買っておいたのですwww



えーだってさぁ、あんなに探して無いとこのオモチャは一体どれだけ楽しいんだろうって考えちゃうじゃないですか。そうするとやっぱ欲しくなっちゃうじゃないですかwwwそんな訳で付属の妖怪メダルのジバニャンをセット!!




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ぷりちーしょうかん!ぷりちー!ぷりっちともだちふくはうちー!ジバニャン!だるいんですけど




…え、終わり???




まさか、このDX妖怪ウォッチってメダルをセットするとなんかこう召還の時のテーマが流れて終わりなの?え?もう一回メダルを引っこ抜きセットしてみる。





ぷりちーしょうかん!ぷりちー!ぷりっちともだちふくはうちー!ジバニャン!だるいんですけど








33さいのおっさんが一人で腕にはめて遊ぶ物ではないと、後悔ががっつり押し寄せてくる…他にもサーチモードとかいうほわんほわんいいながらライトが付くモードがあるらしいが…つまりDX妖怪ウォッチって妖怪メダルを紹介してくれるだけのものなのね…



まぁ、この妖怪ウォッチをまとめると、



一つ、欲しいなら平日の午前中にオモチャ屋に訪問もしくは電話すること



一つ、できれば知り合いに頼むこと



一つ、転売バカが調子に乗るので定価以上で売ってるモンには触れないこと



一つ、おっさんが一人で遊ぶ物ではないこと




と、こんな感じでしょうな。妖怪メダルのレア、大吉メダルも手には入れたのですが、これまたクソめんどくさいんですよねあれ。




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こんな感じのメダルなのですが、これを手に入れる為には妖怪ウォッチおみくじバトルなる機械をやらなければなりません。お金でプレイするのではなく、妖怪メダルがあればプレイできます。ちなみに一度使った妖怪メダルはもうおみくじバトルには使えません。



で、このおみくじバトルってのがやたら長ったらしい上に当たらない。敵が出てきてバトルに勝利し、尚かつ最後におみくじルーレットで大吉がでないと手に入らないのです。バトルの勝利までは結構行くのですが…台フル回転で30分に1枚くらいですかね並んでみた結果…



この妖怪ウォッチって小学校低学年か、それより下のお子様がターゲットだと思うのですが、そうなるとやぱり大人が付き添うじゃないですか。で、この台レスポンスがえらい悪いので大行列になってたりするじゃないですか。子供はうきうきでも疲れている大人の顔を見ると、何をしていても呼び出されるジバニャンくらいの覚悟がないと子育てって大変なんだろうなぁと思いますた。



と、いうわけで埼玉の旦那さんは、案の定今度は休日におみくじバトルに並ばされているとの事でした…おみくじバトルは妖怪メダルが売り切れているからか、あんまり当たらないからか結構どこでも稼働しているんです…20枚+DX妖怪ウォッチに付属の22枚って全く並んでなくても消化するのに1時間以上かかるよな…もちろん並んでいないなんて事はありません。大人気妖怪ウォッチですから…



と、言う訳でどうあがいても埼玉の旦那さんを助けられなかったおょょでした。ちなみに大吉メダルをDX妖怪ウォッチにセットしてもこんぐらっちぇれーしょん!としか言ってくれません。こんなのだったら妖怪メダルを裏返しでセットした方が面白いような…