XTZ125を購入して2年が経過しました。

走行距離こそ大したことはないものの、ちょうどいい時期となったのでフロントフォークのオイル交換を行うことにした。必要な道具などを揃え、雨が収まった時間を見計らって作業を開始する。

 

XTZ125 ブラジル製造型のフォークオイル指定

 

10W相当 366cc 油面120㎜

 

今回はヤマハ純正サスペンションオイル G-10を用意

 

※中華製造のXTZ125についてはweb上にフォークオイル指定の情報が見られないため、ブラジル仕様と同じにしたが、おそらく問題ないはず。

 

 

フロントフォークを取り外すには車体をメンテナンススタンドで持ち上げる必要があるが、その前に各ボルトを緩めておく。

 

 

まずはフロントフォークのステアリングステム(上)のボルト2本を緩める。ここを緩めないとフォークのトップボルトが(たぶん)緩まない。

 

 

フォークトップのボルトは14mmの六角レンチ穴があるが、14mmという六角レンチのサイズは一般的ではなく、普通のホームセンターなどではなかなか見かけないし、値段もそこそこ高めだったりする。そこで1個90円程度で買える高ナットで代用。高ナットの長さは25mmの物がベスト。これ以上長いとハンドルとの間隔が取れなくなり、ボックスレンチが使えなくなってしまう。ボックスが使えないということはトルクレンチが使えないということなので、高ナットを買って代用しようという人は、この点は注意しましょう。

 

 

こんな感じにボックスとアダプター使用で問題なくトップボルトは緩められます。しかしここは最初からやけに緩く、大した力を入れずに簡単に動いた。左側は隙間が狭いので慎重に。左右で同じ作業を行ったら、フロントフォークに固定されている物を先に外していく。

 

 

フロントブレーキは固定ボルト2本を外し、ハンドルからビニール紐で吊り下げておく。なかなかの重量がある部品なので、間違ってもそのままぶら下げたりしないようにしましょう。ブレーキホースにストレスをかけると破損やフルード漏れの恐れも。続いてブレーキホースとメーターワイヤーの固定バンドなどを外す。

 

 

ホースやワイヤー類の位置は、組み付ける時に元の状態を覚えていられるように撮影しておこう。

 

 

最後にメーターケーブルも外してしまうが、ここで思わぬトラブル。画面右端にチラッと写っているメーターケーブルのワイヤーだが、このままぶら下げていたらどんどんずり下がってきて、半分以上が飛び出して地面に接触してしまった。当然、細かい砂などが付着してしまったので、一旦ワイヤーを引き抜いて保管し、後で清掃しオイルを塗って組み付けることにした。続いてフロントアクスルのナットを緩める。

 

 

供回りを防ぐため、ボルト側17mm、ナット側19mmのメガネレンチを掛けて緩めておく。そして最後に、ステアリングステム(下)のナット2本を緩める。ただしここは緩めすぎないよう、少し左に回る程度に留めておく。車体をスタンドで浮かせる前に全部緩めてしまうと、フロントの支えを失い大変危険。常識といえば常識ですが。

 

 

以上の作業が完了したら、ようやくメンテナンススタンドでバイクを浮かせ、フロントアクスルを引き抜いてホイールを外してしまう。

 

 

身軽になったところでステアリングステム(下)のボルトを緩め、フロントフォークを引き抜く。フォークが落下して傷つかないようにだけ注意。

 

 

XTZ125というかオフ車はフェンダーを外さなくて良いのは楽である。

 

 

フォークブーツが邪魔なのでこれも外しておく。しかしここで予期せぬものが……

 

 

なんと片側のフォークブーツの中に水滴が溜まっていた。なぜこんな事になったか調べたところ、フォークブーツには伸縮時に空気を逃がすための小さな穴が一列に並んで空いているのだが、以前触った際に、どうやらその向きを前にしたまま固定してしまったようだ。穴が前向きだと、上から垂れて来た水が入り込んでしまうので、これが原因で間違いないだろう。フォークブーツの向きとバンド位置をきちんと修正し、二度と同じ状態が起こらないようにしておく。だが、真の恐怖は後からやってくるものである。

 

 

せっかくなのでオイルシールの状態を確認すべく、まずはダストシールを外す。マイナスドライバーで簡単に浮かせて取り外しが可能。そしてオイルシールを覗き込んだのだが

 

 

ギャーーーーッ!!!!(梅図かずお)

 

水が入り込み、結構な錆が浮いてしまっている。画像では伝わりにくいが、錆が盛り上がっていてなかなかヤバい見た目になっていた。ここまで放置していたことを激しく後悔しつつ、マイナスドライバーを使って錆だらけのクリップを外す。

 

 

見事に錆だらけである(号泣)

こいつの処置は後回しにして、オイルシール回りの錆をOリングピックツールなどを使い、こそぎ落として可能な限り清掃しておく。もちろん落ちた錆はウエスで念入りに拭き取る。場所が場所だけにCRCなどは使えないため、シリコンスプレーを吹きながらの作業であった。

 

 

錆がひどかったのは水が入っていた側で、水分が入り込んだ影響は大きいのだと、身をもって体験させられた次第。賢明な皆さんはこんなマヌケはしないと思いますが。で、2本ともそこそこ綺麗になったので、錆落としはひとまず終了し本来の作業に戻る。

 

 

トップボルトに高ナットを装着して緩めて取り外す。中にはスプリングがあるので、垂直に立てた上で慎重に外し、ワッシャとスペーサー、スプリングを取り出してオイルを排出する。

 

 

真っ黒でクッソ汚いオイルが出てきました。元の色が何だったのか判別できないが、特に着色もされていないタイプのフォークオイルだったようだ。オイルの中には金属粉が多量に混じっており、とにかく汚いの一言に尽きる。

 

 

フォーク内に納まっているパーツ類。スプリングは画像左側の巻きが密になっている方が上。画像では分かりにくいが、実際に見ても分かりにくい。トップボルト以外はパーツクリーナーを吹いて汚れを落としておく。古いオイルよりも金属粉を洗い流すのが目的である。後は逆さにしたフォークからオイルが抜け切るのを待つが、その間にオイルシールのクリップを掃除しておいた。CRCと真鍮ブラシで錆を落とし、サンドペーパーで磨き上げていく。

 

 

まあまあ綺麗になったかなと。これ以上サンドペーパーを当てても金属が削れて痩せてしまうので、やりすぎは禁物。その他、せっかくなのでフロントホイールのメーターギアの中も確認。

 

 

グリスはしっかり残っており問題なし。ここは手をつけず元通りに組めば良し。2時間ほど放置してオイルを抜いたフロントフォークに、それぞれ100ccずつ新しいフォークオイルを注ぎ、何度もストロークさせて濯いでから排出。本当はこの行程をもう1回ずつ行いたかったが、フォークオイル残量の関係で1回で終了

 

 

ブレーキが付いている左側からは、金属粉が多く出てくる。こんなものがオイルに混じっていれば、性能が落ちるのも無理はないだろう。またしてもしばらくオイルが抜けるのを待つので、スプリングの自由長を計ってみた。

 

 

スプリングの自由長は左右共に430mm

規定値を知らんのでこれがどうか判断できないが(殴)、おそらく出荷状態のままだろう。濯ぎのオイルが抜けたら、メスシリンダーに規定量のオイルを入れる。

 

 

366ccは微妙すぎて正確には測れないので、360ccにしておいた。ちなみにこのシリンダー、径が大きくて安定しており使いやすいです。計量したオイルを静かにフォークへ注ぎ、インナーチューブを何度かストロークさせてエア抜きを行い、それから油面の調整を行う。バイクのメンテ用品には油面調整ツールが売られていたりするのだが、2000円くらいもしてやや高い。使用頻度もそう高くない道具なので、ここは安上がりな方法で代用。

 

 

スポイトに油面位置(120mm)に合わせて洗濯バサミを付けただけ。

総額500円以下。

これをフォークに入れて余分なオイルを吸わせる。

 

油面測定法方は、インナーチューブを一番縮めた状態でオイルを入れ、インナーチューブの口から油面までの距離を測る。

 

 

安物ツールだがスポイトはなかなか便利で、吸い上げられる上限まで勝手に吸い上げてくれるので、片手がフリーになって楽である。余分なオイルは再び缶に戻し、空気を吸うまでオイルを抜いたら油面調整は完了。念のために金属ゲージでも測ってみる。

 

 

即席ながら完璧である。左右とも同じように油面調整をしたら、インナーチューブを伸ばした状態でスプリング、スペーサー、ワッシャの順に挿入し、トップボルトを締めこんで完了。

 

 

スプリングは密な方が上。

 

トップボルトの本締めは車体に取り付けてから行うので、この段階では手で回らなくなるくらいまでで良い。トップボルトを締めたらフォークを軽くストロークさせて、オイル漏れがないかも確認しておく。オイル交換が終わったフォークを車体に組み付ける前に、オイルシール周辺に錆対策を施しておく。綿棒でシリコングリスを塗りたくるだけですが。

 

 

錆が溜まっていた溝などにもたっぷり塗りこんだ後、クリップもしっかりグリスアップしてから取り付け、ダストシールとフォークブーツも取り付けておく。で、いよいよ車体に組みつけようと思ったが、ステアリングステム(下)の内側に錆が浮いていたので、ここも綺麗に磨いておく。

 

 

馬鹿にならん錆び方をしている。CRC6-66を吹いてから真鍮ブラシで念入りに磨いて落とす。

 

 

けっこう綺麗になったのではなかろうか。

左右とも同じように錆びていたので、ここは錆びやすい場所なのであろう。放っておけば腐食が進行し、ガタが出たりインナーチューブを傷付ける恐れもある。錆は出来る時にきちんと処理しておきたい。錆落としが終わったら念のため、もう一度CRC6-66を噴いてウエスで拭き上げ、多少なりとも錆が発生しにくい状態にしておく。すべて終わったら、フォークを車体に仮組みし、左右の平行も確認。

 

 

フロントアクスルを通して固定し、曲尺を当ててガタがないかを見る。

位置がきちんと決まったら、トルクレンチを使いステアリングステム(下)フォークトップボルト、ステアリングステム(上)の順にボルトを本締めしていく。締め付けトルクは全て23Nm

 

この後はホイールを取り付け、メーターケーブルや固定バンドを付け、最後にブレーキを取り付けたら、メンテナンススタンドからバイクを下ろし、トルクレンチで各ボルト・ナットを本締めする。

 

フロントアクスル 60Nm(※規定値は80Nm)
ブレーキキャリパー 40Nm

 

全ての作業が完了した時点で汗だく、日も暮れて腰も爆発しそうだったので、シャワーを浴びて汚れと疲れを流してから、サスペンションの状態を確認すべく近所を走ってみた。

 

まず第一印象として、サスが柔らかくなった。

前に入っていたのがどんなオイルかまったく分からないが、交換後と比較して硬めだったのは間違いない。で、フロントが柔らかくなった走りの変化としては、まず路面のショックをよく吸収して乗り心地が良くなった。そして直進時の安定性がかなり増していて、サスが路面に吸い付くようにぴったりとした質感に。おかげで直進、コーナリング共に安心感が出てきた。全体的にゆったりとした上質な乗り味になったかな、というところ。ただ失った部分もあって、前の方がスイスイヒラヒラと軽快に姿勢を変更できていたので、この安定感は維持しつつ、以前の軽やかな挙動にしたいというのが今後の目標。サスを現状から少しだけ硬めの方向へ持って行けばいいので、次は油面を110㎜にするか、フォークオイルを15Wのものに変更するかを試してみたい。

 

フォークオイルを交換したことでサスがきちんと仕事をするようになったので、この作業の効果はなかなか大きい。バイクを買って一度もフォークオイル交換をしていないという人は、是非やってみて欲しい。ただし事前に作業手順をよく調べたうえ、自己責任でお願いします。あと倒立フォークのメンテナンスは素直にディーラーやバイク屋に頼みましょう。構造的に個人で整備するのはかなり厳しいです。

 

ではでは、今回はこの辺で