宮城県丸森町にある火縄銃に特化した私設博物である『金山城伊達・相馬鉄砲館』は,ここ半月の間に火縄銃射撃の全日本チャンピオン(正確には全日本前装銃射撃競技選手権大会総合優勝者)を二人もお迎えした。一人は6月24日に来館された山伏の長光院殿で,当館を激励するために85歳の高齢を押してはるばる千葉県館山市からお越しくださった。二人目は7月6日に来館された一昨年の全日本チャンピオンのH多さんである。
御年85歳の山伏の長光院殿
H多さんは,今年三月に立ち上げた仙台藩丸森鉄砲隊の指導や座学講習の講師を勤めるため来館された。H多さんは,千葉県流山市のご自宅から常磐高速を4時間も走って,当館へ駆けつけてくれた。大赤字の続く当館であるから,H多さんは食事代・交通費は自分持ちの完全なボランティアである。私としては,とてもありがたいことだ。
外部講師のH多さん
分かりやすくするため全日本チャンピオンと書きましたが,正しくは総合優勝者です。
本写真の撮影は,本年3月10日の古式大会日です。写真は試合前の『未装薬状態』
さすがだと唸らされたのは,H多さんの射撃姿勢の指導である。H多さんから型稽古の指導を受け少し手直しをされだけで,誰もがその射撃姿勢が美しくなった。これには,私もすっかり驚いてしまった。射撃姿勢が美しいということは,合理的な射撃姿勢がとれていることを意味する。火縄銃射撃の全日本チャンピオンの実技指導は,天下一品としか言いようがない。また日本一の男から指導を受けた事実は,彼女たちの一生の宝になるに違いない。
指導後の射撃姿勢
昨年,H多さんは当館の行った馬上筒の実証実験にベンヴェーに跨り駆けつけてくれた。もちろん手弁当である。それだけはない。彼は日本各地の火縄銃演武に手弁当で参加し精力的に火縄銃演武を盛り上げようとしている。それが彼にとっての社会貢献なのだ。
ベンヴェーに跨り,帰路につくH多さん
本写真の撮影は,昨年3月24日
私と違って彼は,経費の話なんぞはおくびにも出さない。H多さんは,まさに火縄銃純情派といえる漢なのであるが,H多さんを支える奥様は大変だと思う。H多さんには,奥様の掌から落っこちないように筋斗雲を操てもらいたいものである。