宮城県丸森町のお煮しめとヘソ大根 | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

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 先週は宮城県南の丸森町でタタラ製鉄の調査をしていた。その時に,山里のご家庭でお煮しめを御馳走になった。お煮しめと言えば,半世紀前は,人寄せなどの時の花形料理だった。杉浦日向子さんによれば,江戸時代,お煮しめを炊けない女は鳶の頭の嫁にはなれないと言われたそうだ。

 

宮城県丸森町のお煮しめ

凍み大根のまん中にある穴は,長い串を刺し通した跡,その名も,ヘソ大根。

 

 丸森町のお煮しめには,この冬に作った凍み大根も入っていた。そのお家では,毎年冬になると凍み大根を大量に作るのだそうだ。大根を輪切りにして茹であげ,串に刺して寒の頃の厳しい寒さの中で干しあげるのだという。出来上がった凍み大根のまん中にある穴は,長い串を刺し通した跡で,地元ではヘソ大根と呼んでいる。北国の山家では何も実らない冬の間に凍み大根や凍み豆腐,凍み餅などの保存食を作り,春からの忙しい農作業の糧として備えるのだ。いってみれば,雪国の労働分配なのだろう。

今の人には,素朴でつまらぬ料理と映るかもしれぬが,ついこないだまでは,お煮しめは上等な料理だったのである。他国の貧しさに同情する人は多いが,私の父親世代が子供の頃は,日本は貧しい国だったのである。

断捨離だ,グルメだ,海外旅行だ,なんぞと言えるのは,先人の努力のおかげであり,今の私たちの力によるものではない。お煮しめを肴に飲みながら,そんなことを思った。