火縄銃は,旧式の兵器で弾道の直進性が悪く,大した威力もないと考える人は多いだろう。しかし,25年以上も前の実験によれば,現代人が考えている以上に火縄銃の威力が大きかったことが証明されている。
日本有数の銃砲史研究家である須川薫雄さんが,鉄砲と甲冑をアメリカの射場に持ち込んで火縄銃の威力実験を行ったことがある。50メートル先に設置した厚さ1.4ミリの鉄板装甲の甲冑を試射したところ,弾丸は甲冑を貫通し,20ミリ×20ミリの穴をあけた。しかも,弾丸は前面の装甲を突き抜け,背面の装甲をも撃ち抜いていた。用いたのは,重さ約5.5グラムの弾丸とそれを射出する1匁5分玉の火縄銃で,使用した黒色火薬は2.5グラムだったという。
火縄銃で試射した甲冑の前面
弾痕の中が黄色く見えるのは,銃弾が背面装甲も
貫通したため,後の板壁が見えているからです。
火縄銃で試射した甲冑の背面
前面装甲を貫通した弾丸は,その衝撃で
二つに割れ,背面装甲に2個の穴を開けた。
また7年前にNHKと日本前装銃射撃連盟が行なった実験も,意義深いものだった。この実験では,100メート及び50メートルの距離から人型標的を的にして三人の射手がそれぞれ6発ずつ撃ってその命中率をテストした。実験には,重さ約13.1グラムの弾丸と3匁5分玉の火縄銃を使用した。実験に参加した射手は,日本前装銃射撃連盟の会員でいずれも火縄銃実弾射撃の経験が10年以上のベテランばかりだ。ただ,距離100メートルの実弾射撃は,日本の競技会の2倍の距離になるからどなたも未経験だったかもしれない。実験結果は下表の通りである。
距離100メートルの実弾射撃は,三人合計で18発撃って1発しか当たらず,命中率は6パーセントに止まった。しかし距離50メートルの実弾射撃は,三人合計で18発撃って13初命中,命中率は72パーセントと高い数値を記録した。この実験結果からは,50パーセントの確率で敵を打ち倒せる有効射程距離は,おおよそ70メートルと推測することが可能と,私は考えている。
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