火薬の威力 その1  | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

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ドクロバツレッド炎  火薬の威力 その1  炎バツレッドドクロ

 

  火縄銃の演武には黒色火薬を用いる。火薬の爆発エネルギーは凄まじい。その燃焼温度は3000 度に達するという。不発処理を誤り顔面に大やけどを負った事例も過去に報告されている。

 

     左上 木綿性の火縄 左下 直径約18ミリの鉛玉 右 黒色火薬

 

火薬爆発による燃焼ガスは,銃口のみならず火皿からも放出される。この燃焼ガスが抜けるとその通った所にはタールのような火薬残滓が付着する。この火薬残滓は硫黄を含んでいるので鉄を錆びさせる。古い火縄銃を観察すると,この火皿の穴を補修した痕跡がみられる鉄砲は少なくない。火薬の燃焼ガスと火薬残滓による錆が鉄を腐らせたのだ。

 

          火縄銃の燃焼ガスは銃口及び火皿の2か所から放出されます。

写真提供 若旦那  (インスタID) takenoko.no.yama

 

 先日,修繕の虎造さんが修繕した火縄銃は,火皿が腐っており,その交換を行ったところおどろくべき事実が確認された。

 

     火皿の底やその周辺が腐っている。 写真提供 修繕虎造工房

 

虎造さんが,腐った火皿を苦労して取り外したら,銃身に破孔が生じていたのだ。錆と経年劣化だけでなく,火薬爆発による燃焼エネルギーが鉄に穴をあけていたのだ。火薬を取り扱う者は,その威力の凄まじさと恐ろしさを,再確認しなければならないだろう。

 

                             写真提供 修繕虎造工房

 

 長年,火縄銃の演武をしていると,火薬を恐れるという気持ちが希薄になる可能性があることは否めない。火薬取り扱いが,日常的になるにしたがって火薬の威力に対する警戒心がマヒしていくのだろう。新年に当たり,もう一度,初心を思い出さなければならない。古式砲術を次代につなげていくためにも,またそれを生涯学習として定着させるためにも,安全管理と法令順守は最も重要なことであるからだ。