鉄散弾の馬上筒 | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

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馬上筒としての鉄散弾銃を考える。

この鉄砲は、某資料館から譲っていただいた田付流仕様の馬上筒である。会津藩士の所持していたもので、戊辰戦争においても使用されたと伝わっている。
この馬上筒は,口径の大きさは違うものの,須川薫雄氏の「日本の火縄銃1P32で紹介された鉄散弾銃と同型のものだ。この本の記述によれば,写真の鉄砲と全く同タイプの銃に直径6ミリほどの鉄散弾が数発,装填されていたのを武器研究家の須川薫雄氏が発見し、鉄散弾銃と名付けた。もちろん、通常口径の弾丸も入れられるので、普通の使い方もできた。
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             会津藩士所用の六匁玉の田付流馬上筒
            全長59.5㎝,36.0cm,口径1.6㎝  福島県登録

火縄銃の弾丸は、鉛や鉄、石などの丸玉であるが,この中で、弾丸として一番用いられたのは鉛だ。鉛は,鉄より質量が大きいため破壊力が高い。鉛は鉄よりも柔らかいから,敵の甲冑に弾丸が命中すると,衝突の衝撃で偏平に潰れ大きな穴をあけることができる。しかも鉛は融点が低いから、囲炉裏に掛けた鉄鍋で,誰にでも簡単に弾丸を作ることができるから補給の優位性も高い。一方,鉄は融点が非常に高く、鉄の弾丸を製造するには、大量の燃料と人手,そして溶解炉を必要とするから,そう簡単に作れるものではない。また鉄製銃弾はその硬さのため銃身内を荒らすので、砲術家からは好まれないのである。
それにもかかわらず、鉄の弾丸をわざわざ使用したのは、それなりの理由があるはずだ。おそらく,近距離戦闘で鉄の弾丸の硬さが効果的と判断されたからだと私は推測している。

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近距離では射出速度が乗らず、柔らかい鉛弾では貫通力が弱くなる。だから鉄の散弾を用いたのではなかろうか。近距離制圧用として,貫通力の高い多数の鉄製銃弾をバラまくための馬上筒が鉄散弾銃というものなのであろう。日本の射撃場で散弾の実弾実験ができるか,その法的調査は未了だが,ぜひ誰かに実証実験をやってもらいたいものだ。そうでないと,考えすぎて今夜も眠れない。

参考文献  (あいうえお順)
          
          古式銃入門 砲術士筒之部 武道藝術秘傳圖會  澤田平著                   日本の火縄銃1 須川薫雄著