小島「で、えっと先週。あの上杉さん、このコーナーでね。震災、それから原発事故の情報など、情報公開の在り方が、例えば先週の時点では海外メディアにもネットメディアにもフリーランスにも閉ざされているのは、かえって情報が正しく出ていないという誤解を与えてね、混乱を招くし海外で誤報が出回ってしまう元にもなるから、とにかく皆に開放するべきだと仰っていたんですけれど、一週間経ってだいぶ改善された面もありますか?」
上杉「改善されたんですけれど、世界的な誤報どころか世界的な風評被害になっちゃいましたね。結果としてね。それはもう隠す事なくやれば、日本の原子力政策、この対応に関しては完全に失敗したと。コントロールを失っているということで。」
小島「ええ。」
上杉「枝野官房長官にも会見で質問して来ましたが・・・ちゃんとね、会見に出てますから。質問して来て、海外全部ですね、数十ヵ国・・・じゃなくて、80何ヵ国が【80キロ圏外への避難】なんですよ。これ、全世界もう。最低が80キロ。日本だけが30キロなんですよ。『(この差)50キロに住んでいる人、不安じゃないですか?』と。『日本の政府はみんな信じたいけど、こうなっているんだから、これはちゃんと日本政府が違うのか、或いは世界中の(国の)政府がIAEA含め80キロが間違いなのか。もし、間違いだったらオバマ大統領も先程会見しました』と。『枝野長官、オバマ大統領に抗議してください』と。『何で、そんなデマを流すんだと。正々堂々と日本政府が抗議しないと、混乱するんですよ』と、そこ。言って来たんです。混乱しますよね?」
小島「あー、たしかにね。情報が出て来ないということは、念のため最も重大なことを想定して行動するわけですもんね。」
神足「答えはあったんですか?枝野さんの?」
上杉「『日本と海外は国際的な基準は違います』と。恐ろしいことを言っているんですが。それは・・・。」
小島「国内ではだいぶあの、申請から時間が経てば経つほど随分丁寧に出してるし、解説もしてるなって気はしますけれど。」
上杉「たぶん、遅いと思います。ここで先週も言ったけど、原子力のこと。こと原子力に関しては、世界中のスタンダードでダメージコントロールは大きく出す訳です。30キロって、最初はやれと。後付けで言ったんじゃなくて、発生した日に僕はずっと言ってた訳です。で、発生して以降、色んな形で色んな人がボランティアとか支援とかやっていますよね?私自身の支援というのは、出来ることというのは立場上、自由報道協会(仮)の代表(暫定)として、情報を出来るだけ外に正しいのを伝えようと。とりわけ、公的機関。これは入れていましたから、情報を世界中、ネットも含めて被災地の方に伝えようと。ラジオでやっていましたけれど、TOKYO-FMの。そういう形で、自分で役割を決めたんですね。だからもう毎日毎日、その日の朝から・・・。」
小島「あの、上杉さんは被災地に行って現場の現状を取材しながら伝えるという立場ではなくて、情報がどのように出されているかっていうことを伝えるっていうのを今回の取材活動に・・・。」
上杉「公的機関・・・まぁ、全員が同じことをやってもしょうがないんで。私が一応、自由報道協会(仮)の代表なんで、百何人が官邸に行ってこの忙しい時に朝から晩まで記者会見のオープン化。海外メディアも言って来ましたけど、それもあると困るからFCCJ(日本海外特派員協会)の方にも行って、『私が一本化します』と。『こんな状況なんで』と。言って、(地震)発生から12時間後に総理官邸の所に行って、「これこれこういう事情で海外メディアとネットとフリーランスは私が対応しますので、そちらの方も是非きちんと対応して下さい』と。」
小島「あれですね、震災が起こった時に、現地で何が起こっているのか?っていうのを、危険を顧みずに現地に行ってリポートすることも大事であれば、同時に公的な情報というのが本当に日本国民に安全を伝えるため、及び海外への風評被害を防ぐために的確に出されているかどうかを監視する。両方の役割の人がいた方がいいという・・・。」
上杉「いっぱいいればいいですね。私も、2003年までは現地に行く方が多かったんです。あのイラクとか、北朝鮮とか。でも、今回はこの役割だなと。自由報道協会(仮)の中には、もう現地に入ってガイガーカウンター持って放射能レベルの高い所に入って行ったり、或いは被災地にもう一早く行ってすぐに伝えてくれた人もいるわけですね。それは、それぞれがやればいいんで。それぞれのやり方でやるんですけど。私自身は、そこは今回は、公的情報を出すことが何より情報公開こそがデマとか広げない最大の理由だと。ということで・・・。」
小島「上杉さんがずっと仰っているのは、原子力発電所の事故に関しては早くから正確な情報を海外にも、それからネットに対してもフリーランスに対しても同じ情報を早くから正確に出さないと、憶測とかデマとかあの過剰な行動とか報道が広がっちゃうよと言ってたらそのとおりになっちゃって、あの今、取り返しの付かないような誤解とか日本ブランドに対するこう悪いイメージが広がりつつあるということですか?」
上杉「だから悔しいのは、例えば自分が後付けで言ったんならしょうがないけど、正直言って100時間以上、自分の仕事止めてボランティアでやった訳ですよ。あのね、テレビとか新聞の記者の方は自分の仕事ですよ、サラリーマンだから。どこに行くにしても給料発生しますけど、フリーランスとかネットの人間は全員、自分の仕事ストップしてそれぞれがボランティアに近い形でやっている訳です。被災地に行けばね、その後、情報を売ることが出来ますけど。僕の場合は完全にボランティアだと。でも、もういいやと。立場的にたまたま代表だったんで、しょうがないからと。いう形で、東京に残って、(地震の)翌朝のですね、先週の土曜日の朝5時位から官邸の横の駐車場に止めて、そこから色んな人にずーっと電話していたんです。」
小島「ええ。」
上杉「官房長官以下、官邸室。それは何かというと、『早く(官房長官会見に)入れてくれ』と。私がずっと一貫して言っていたのは、『私は入れなくてもいいです。』と。ただ、海外メディア一社でもいい、ネットのメディア一社でもいい。そうしないと、外に伝わらないし、何といってもTwitterを見ている人が多かった訳ですから、被災者がもしかして助けを求めているかもしれない。Twitterで実際、来ているんですよ、と。これを官邸に、記者会見になんか行って質問することじゃないんですよ。情報を繋ぐことも記者会見ですから。『入れてください』と・・・言っていたのにも関わらず、結果。海外メディアが全部入ったのは昨日(21日)ですよ、やっと。一昨日(20日)、インターネットメディアが入りました。」
小島「(官邸)Twitterも(13日)立ち上がりましたけどね。」
上杉「Twitterがいちばん最初ですけれどね。それと、英語のTwitter。英文(官邸 16日)の発表。そして、海外メディアの一部。そして、その次にネットメディア。インターネットメディア。で、海外メディアが全部入った。フリーランス、入ってないです。『これでもういいです』ということで、私は辞めたんですが。それはどうしてかというと、入ったことによって情報がやっと出だしたんですよ。」
小島「そうですね。」
上杉「これは今バーッと言ったのは、自由報道協会(仮)がずっと交渉したから結果としてなったんです。成果として。だから、最初に色々な支援の仕方があると言ったのは、こういう形で今。例えば、ニコ動で官房長官会見、見れますよね?色んな人が見れますよね、枝野官房長官の。あれは、自由報道協会(仮)がお願いして入れたからです。だから、そういう様な形で結果として良ければいいと。」
小島「ただ、上杉さんはもう最初の段階。災害が起きた最初の段階から、最初からそうしなくてはいけないということは先週も仰っていましてけどね。」
上杉「そうしたら、もっとねマシなことになっていたと思うんですよ。」
小島「要するね、広がったしまった噂とか、間違った噂とか情報を海外やネットメディアから、一々回収する手が今はなかなか取れない訳ですものね。事態がやっぱり。今、目の前の課題が多くてね。」
神足「この後の番組(デイキャッチ)でさ、宮台真司さんがね【愚民政策】だって言っていたけど。つまり、ちゃんとした情報を与えないのは、安全だといい続ければみんな安全と信じてくれただろうというね。危険なことは全く言わないというそういうことになっちゃう。」
上杉「『安心下さい。安心下さい。放射性物質が飛んでいます。東京にも飛んで来ました。ただちに健康被害に当たるものではありません。安心して下さい・・・』。言葉、矛盾していませんか?ただちにと。」
小島「でも、だいぶ時間が経って本当、上杉さんとか自由報道協会(仮)の働きもあって、だいぶ丁寧にどういう裏付けでっていう説明がなされて、色んな専門家の意見も聞いてやっとこの数字をどう読めばいいのか?なぜ安全だと言っているのかという、裏がね。やっとみんな知識が段々こう付いて来たと。」
神足「あのチェルノブイリなのか、スリーマイルなのかって思っちゃうじゃない?それって両方違うのに、それもどっちか何なんだと思うしかない訳だから。」
上杉「デマだとか噂だとか、テレビのように安心だとか危険だという報道が飛び交うのはなぜかというと、情報を出していないからなんです。情報を全部出せば、デマもパニックも起きないんですよ。それを勝手に、神足さん今仰ったように、宮台さんも言っていた愚民政策というのは正にそうで、『そんな国民は知らなくていい』という感覚でずーっと来た。それはマスコミも政府も東電も、『ずっと情報は俺たちのものだ』と。『それはプロだから隠しておけばいいんだ。俺たちに任せろ』という、要するに驕りがあった訳ですよ。だから、国民はみんな混乱しちゃう訳です。だからここのポスト、モニタリングポストで『ここは何ミリシーベルト、何マイクロシーベルト』と。『今日は安全です。今日はちょっと屋内の方がいいかもしれません』って、やればいいじゃないですか。何でやんないんだと。」
神足「今日ね、初めて枝野さんが言ったのって、シーベルトという単位の発表って言うのは原発に万が一のことがあっちゃいけないから、漏れてるぞと知るための単位であってそれは人的被害がないんだという説明を今日したんですよ。あれ、早くに言ってくれればさ・・・。」
小島「上杉さんが仰るように、現状で良くなって来ていると思います。より分かりやすい情報がより色んなチャンネルで世界に出るようになっては来ているけれども、やっぱり災害というのは起きた直後がいちばん混乱と不安が大きい訳ですから、その時に最初から機能しておけば、もっと状況が悪化しないで済んだのにというのにっていう。色々な風評被害とか誤解も流れなかったのにって。それは今回、大きい教訓ですよね。」
上杉「だから、口酸っぱく言ったのは官邸の記者会見。枝野さんのこれを、前の日まで開いているんです。で、閉じるからおかしいんだと。ずっと言ったのは、『これは開けなさい』と。繰り返し言うのは、『私は入らなくていいんですよ』と。『海外メディアとネットだけ入れてくれ』と。ずっと言って来た訳ですよ。それが被災地に届くかもしれないし、海外に届くかもしれない。これを最初、ボランティアで100時間やった訳です、寝ないで。それで自分の仕事はある程度、今回の支援は終わったなと。その部分では、残念ながら結果としてはもっと早くやっていれば、力があればですね、開くことが出来たかもしれないですけれど、力がなかったんで・・・。」
小島「でも、何も変わらなかったわけじゃないですからね。」
上杉「ええ。でもまあちょっとね、非常に遅かったのは。でも、残念だけど、悔しいですね。あの・・・30数字間目に初めて、船の上、屋根の上に乗っかっている漂流している人を米軍が救出するんですけれど。やっぱり、72時間とずっと口を酸っぱくして言ったのは、今すぐ入れば、ハッシュタグ、Twitterなどでもっといっぱい被害に遭っていますよと。来てた訳ですよ。一人でも官邸に入って、それを質問出来ればもっと早く自衛隊を10万人って言ったのを・・・最初、3千人だったんですよ。僕は、10万人とその日に言ったんですね。ダメでも、要するに何でもなかったって。10万人出動したと、無駄じゃないかおまえと、言ってもいいじゃないかと。そうなったらと。そしたら、『デマ野郎』と永久に言ってくれと。だけど、10万人でやって、もし対応できればそれがいちばん良いんだからと。いうことを、最初から言っていたんですけれど、さっき言ったように携帯には官邸に100数十回電話しましたけれど、えー門前払いというか・・・。」
神足「それに情報が官邸に入らないから、質問者が重要だってことだよね?つまり、10万人動員しなけりゃいけことは官邸が分からないから・・・」
上杉「記者クラブの人に頼んだんですよ。何人か。『言ってくれ』と、『質問してくれ』と。NHKが生放送している時に。(途中で)切っちゃいますから、ニコ動以外は。だから、言ってくれと。だけど、結局、『言えない』と。『それは、言えない』と言っていました。それは単純に、『社で言えない』と。」
小島「あの、用心深さってとっても実はとても勇気のいることだと思うんですよね。用心深い人っていうのは、こう臆病者と勘違いされたりすることもあるけれども、その用心深くある勇気というのと、用心深いことと実は情報を出すということはセットだと思うんですよね。用心深い行動をしながら正しく情報を出して行けば、用心深さが要らぬ恐怖を招くこともないし、それから情報が出ていれば用心深さが何故の用心深さか真意も伝わるしね。最初から10万人送るとか、最初から避難の範囲を広くするとか、その辺りが最初上手く出ていなかったので、日本の国民も政府とか東電に対して不信感が広がったし、海外からも情報が出ないということは何か隠したいことがあるのかっていう誤解を受けてしまったっていう、改善されて来たとはいえ初動の遅れというのが悔やまれるということですね。」
上杉「決定的ですね。本当に。だからまあ、半ば後半の原子力に関しては、人災に近いんじゃないですかという風に申し上げているのは、やはりその当初入って、金曜日の夜。(地震が)発生して夕方ですね。えー、土曜日には広河隆一さんとかが入っていた訳ですよ。ガイガーカウンター持って。ずっと電話で話してて、『大変だよ、上杉さん』と。『4キロポストまで行った』と。『ガイガーカウンター振り切れている』と。『子供達が遊んでいると伝えてくれ』と。それを伝えたんです。一生懸命、官邸に。『違いますよ、報道と。東電の言っていることとは違いますよ』と。二日目、土曜日の夜に言ったんですよ。官邸に。直接、副長官、長官、補佐官の携帯電話鳴らして。留守電に残して。やっぱり・・・所詮ね、フリーランスで会見から追い出してる人間よりも、自分のそばにいる官僚とか記者クラブの大手メディアの人とか、東電の人の方ををやっぱり信じた訳ですよ。どっち信じてもいいんだけれど、両方の意見を並べて判断してくれと。それは怖いのは、世界中で色んな意見が出ていた訳です。で、全部根拠示して言っていますから。IAEAの数値です、IAEAも出しました。ワシントンポストはここに書きました。えー、それから現場に行った広河隆一さんがこう言っています。神保哲生さんがこう言っています。全部、ソース出して言っているんですよ。ところが、ソースのない報道に全部邪魔されると。【安全です】と。」
神足「あの、ルース駐日大使がアメリカからスタッフ連れて来て自分で調べるって言い始めた・・・。」
上杉「だって、ルースさんTwitterに書いていましたから。」
小島「まあ、あの是非ねこれを聴いてる方。えっ、じゃあ今、自分がいる所が本当は危険なんじゃないかと急に不安になった方もいらっしゃるかもしれないんですけれど。その後、上杉さんはじめ皆さんの訴えがあって大分細かく解説も出ていますし、正しく数字も出ていますので。今あるものを信じるなということではないんですけれど、ただ、やっぱり最初に取るべき動きというのが、上杉さんの仰るのには他にもっといい方法があったのに無念だという気持ちがね・・・。」
上杉「結果論で言うと、まあ後から知ったのなら幾らでもね。『残念だ』と言ったら、何言ってんだおまえ、動かなかったくせにと言うんですけれど。」
小島「その時、実際に声を挙げていた立場としてはね。」
上杉「やっぱりね、力が足りなかったっていうのがすごい悔しいというか・・・。その辺が残念ですね。」