漢陽の雲従街に住むサンノム。
本当はラオンという名前ですが、弁よし、筆よし、器量よし。
この少年を街では「サンノム」(三拍子そろったやつ)と呼んでいました。
彼の仕事というか、特技というか、それは悩みの相談屋。
恋煩いや、女房の気持ちがわからないという亭主たちの相談に乗ることを生業としていました。
「筆よし」ですから、文の代筆もしていました。
ラオンはク爺さんのタバコ屋の隣に、ちょっとしたスペースを借りて、相談業を営んでいます。
ラオンには年老いた母と病弱な妹がいます。
この二人の家族を何としても養っていきたい。
そんな思いから、ラオンは必死に生きてきました。
ある日、以前から恋文の代筆をしていた、
両班キム進士の末息子から依頼を受け、お屋敷に出向いたところ、
末息子は悲壮な顔をして、ラオンにすがりついてきたのです。
恋文の相手が会いたいと言ってきている。
しかしその方は最初から実らぬ恋の相手だった。
頼むから、うまく断ってきてくれ。
会いたいと言ってくれたらうれしいはずが、
奇妙なことを言うなぁ~と思いながらも、
必死に縋り付く末息子を見て
ラオンは頼みを聞き入れるのでした。
両班になりすましたラオン。
いざ!
恋文の相手が待つ木覚山へ。