こまつ座さんを観てきました。

井上先生のお話は、先輩劇作家の方々に
「伝説」として聞いています。

遅筆。

本当に遅い。
初日前にまだ、ホンがあがってない。
「そんなことあるんですか?」

我が師匠、北村 想氏いわく
「ほんまやがな」

なんでも、なんとか幕をあけて、書いたそばから
原稿を役者に渡し、渡された役者さんはその場で覚えて
舞台を続けたとか。

でてる役者も、そうとうデキル人じゃないとムリ。
「役作りが~」なんてこだわる人には絶対ムリ!!
むしろ
「ホンが遅れても、先生とやりたいねえ」という
(確か)勘三郎丈が言ってらしたと記憶してますが
それくらい「芸に余裕があり、かつ非常事態を楽しめる役者」
でなければ。

そんな井上先生のホン。
1冊ご紹介。
「井上ひさし・コレクション~ことばの巻~」(岩波書店)

先生の「日本語」に対する尋常でないこだわりが
ちりばめられた、宝のようなホンです。

日本に生まれていながら
美しい言葉を話せないコトは
哀しむべきコトである。

「表意文字ソング」

1「物干す竹は?
2「竿
1「老いた女は?
2「姥
1「末の女は?
2「妹
1「良い女は?
2「娘
1「男をたたせる女は?
2「妾
1「女を喜ばせるのは?
2「嬉しい
1「水臭い女は?
2「汝

延々とコトバ遊びが続きます。

「お父さん、お母さんが隣のおじさんと、かけおちしたよ!
「いいんだ。あれが本当の亭主なんだから

浅草のストリップ小屋の台本書きから
コント作家、そして劇作家の頂点にたちながら
最後まで「日本語の美しさ」にこだわった作家さんでした。

最後に。

「ことば ことば ことば ことばには どくがある
(略)
主君に忠義な侍に たった ひとこと ささやく
「貴殿は不忠者じゃと 殿が仰せられておった」と
とたんに すべては変わる
侍は おのれの腹を掻っ切る。

ことば ことば ことば ことばには どくがある
たった一つのことばが マムシの毒よりもよくきく
下総じゅうの どく蝮も
ことばのどくの 敵ではない
ことば ことば ことば ことばには どくがある 

機会があれば、またコトバについて
思うことを書きます。