#SUB:「らくごのご」(1996.10.10テレビ朝日(関東))
毎度おなじみの桂ざこばと笑福亭鶴瓶の「らくごのご」。
ゆきえさん、白の上下。織り方がこってるようですが、詳しくはわかりません。

ゲスト:斉藤 慶子

テーマ:旅行

お題:雪女、携帯電話、交代制動務

鶴瓶師匠
<雪女>ツアー。雪が降ってきた。雪女の足跡。穴まで続いている。男の声。・・・<交
代制動務>。今日は雪男。再び行く。雪女が出る(幽霊のかっこう)。雪崩。電話が
鳴る。雪女が<携帯電話>。帰ってきてください。スりラーやな。「わてのは「セル
ラー」でんねん」

ざこば師匠
「院長先生、みんなで旅行に行きたい。<交代制勤務>だから、全員が揃わない。
NTTの人に代わりに来てもらう。NTTの人はタクシーの人に頼めばいい。冬がい
い」「冬は<雪女>が出るからいや」 NTTの人に頼む。だめと言われる。だめな
んですか。「ドコモ行けません」

さてお待ちかねの拙作です。
  (実在の場所、人物等と一切関係ありません)

語り「パブルがはじけて、大学生さんの就職難が続いているそうですな。氷河期や超
  氷河期やいうてネ。
  男女雇用均等法というのができて、いろんな職業に、男でも女でもつけるいうん
  ですが、そういえば、今まで男だけの職業やと思われてたところにも女の人の姿
  を見掛けますナ。
  建設業とか…ヘルメットかぶって高いとこに上がる女性がふえているようです。
  ダンブの運転手なんかもありますナ。タクシーの運転手はかなり前からあります
  が」
  (職業安定所)
係「はい、次の方どうぞ」
ユキ「お願いします」
係(書類を出す)「これに必要事項を書いてください」
ユ「西条<ユキ、女>。生年月日、ン年ン月ン日。住所、××××と、これでいいで
  すか」
係(書類をもらってチェックする)「はい、けっこうです。あんまり、いいのがない
  んですが、<交代制勤務>でもいいですか」
ユ「はい、なんでもけっこうです」
係「それじゃ、ここへ行ってください(紙片を渡す)」
  (小規模の旅行会社)
ユ「コンニチハ、ごめん下さい」
男「はい、どなた」
ユ「あの、ここ紹介されて来たんですけど」
男「ア、職業安定所に頼んどいたの、君か。こっち来、履歴書見せてんか。(見る)
  特技のとこ何も書いてないけど、なんどないか」
ユ「ハー、あんまり」
男「タイブとか打てへんか」
ユ「タイブはちょっと」
男「ワーブロは何か使えるか」
ユ「ワーブロはちょっと」
男「パソコンは使えるか」
ユ「パソコンなんて、見たこともない」
男「そうかいな、きょう日の子はなんぞ知ってると思てたけどなあ」
  (電話が鳴る)
男(電話をとる)「ハイ、ハイ、あー、でけましたか、すぐにとりにいかせます。無
 理いうてすんまへん。(首をのばして周囲をさがす) オーイ(だんだん声が小
  さくなる) 金井君、おらへんな、またどっかへ油売りに行ってるな」
ユ「あの、ガソリンスタンドもやってはるんですか」
男「なにがいな」
ユ「今、油売りに行ってるて」
男「違うがな、サポッてることを油売るいうんや、こんなこともわからんようになっ
  てんの。かなんなあ、話がでけへんがな。ア、そうや、君、いまこの先の印刷所
  で今度パンフレットでけたいうてきたから、とってきてんか」
ユ「このあたり、初めてで、よくわかりませんのですけど」
男「ここ出て、右の方へずっと行ったらある。印刷所いうても家内工業やよってな、
  ガチャコン、ガチャコン、印刷機の動いてる音がしてるわ。そやよってすぐわか
  る。そこへ行ってな、浜田に聞いてきたいうたら渡してくれるからな」
ユ「そうですか、ほな、行ってきます」
  (間)
男「なんや、ちょっとも帰ってこうへんな。電話してみよか。(ダイヤルする) も
  しもし浜田でっけど、うちの女の子行きましたか。--なに、まだ行ってない。
  もうかれこれ2、3時間になりまんのやけど、さよか」
  (間)
ユ「ただいま」
男「どないしとったんや、心配しとったんやで」
ユ「ガチャコン、ガチャ±ンの音を探して行きましたんやけど、ちょっとも音がしま
  へんねん。3時間ほど歩いて足が疲れたよって、喫茶店で一服してから、また戻
  ってきました」
男「なんかの加減で休んでたかもしれへんやないか。君も字が読めるんやろ、印刷所
  の看板があがってたやろ」
ユ「印刷所の看板いいますと、屋根に印刷機上げて、周りからライトアッブしてまん
  のか」
男「町の中の家内工業やで、なんでそんな大袈裟なことせなあかんねん。こんなとこ
  の看板なんか、字で書いてあるだけやがな」
ユ「ほな、もう一回」
男「もうええ、もうとってきてもろたがな、ええかいな、明日からあんじょうやって
  や」
  (間)
ユ「交代制動務やいうて聞いて来たんですけど、旅行会社でも、交代制があるんです
  か」
男「そやねん、全世界に散らばってるからな、24時間、万一に備えて待機してなあ
  かんねん。ーーま、君の場合は、午前と午後の交代制やけどな」
ユ「それは、パートタイマーと違いますのん」
男「英語でいうたら、パートタイマー、日本語でいうたら、交代制勤務」
ユ「ハー」
  (間)
男「西条君、君、こんど旅行のブランができたら、お客様のとこへ行って説明してき
  て。これは渡辺さんとこのヨーロッパ一周、こっちは斉藤さんアメリカ西海岸」
ユ「ハイ」
男「アメリカ西海岸の方は新婚さんやさかい、あんじょう説明してくるねんで」
ユ「ハイ」
男「ア、そや、携帯持って行き」
ユ「携帯て」
男「<携帯電話>や。なんかわからんようになったら電話して来るんやで」
  (間)
ユ「コンニチハ、渡辺さんのお宅ですか」
ワ「ハイ、渡辺ですが」
ユ「旅行社よりまいりました。ヨーロッパ一周の旅行ブランを持ってまいりました」
ワ「そうですか、こちらへ上がってください」
ユ「失礼します。--いいお宅(うち)ですね。--なかなか普通のことをしてては
  こんなお宅は建ちませんでしょう」
ワ「あんた、人聞きの悪い」
ユ「え、ご苦労なさったんやないかと思いまして、いうたんですけど」
ワ「そうな風には聞こえへんかった」
ユ「そうですか。すんません」
ワ「そこに座って、話聞かせてもらおか」
ユ「へ、これがブランです(カパンの中から出して、テーブルの上へ広げる) 成田
  をたって、ハワイ……あれ……あ、すんません、こっちでした。まず、ロンドン
 へ直行便で行っていただいて、優雅に馬車で市内見物していただきまして、続い
  てパりへ行きます。パリで一夜を明かして……」
ワ「えらい、色っぽいな」
ユ「ア、一泊ですネ」
ワ「なに、赤なってんねん」
ユ「エヘン、次ぎに南は、ローマ、ギりシャと回ります。余裕があるようですと、ナ
  ポリ、ポンペイなども見どころです。スペイン、闘牛などもおすすめですが、特
  に希望がございませんでしたら、スイスからウィーンの方へ行きまして、ベルリ
  ン、オランダ、ノルウェーの森、デンマークなどを見て、モスクワ。ここからシ
  ベリア鉄道でナホトカへ来て、ローカル便となりますが、チャーター機で新潟。
  そこから新幹線ということになっております」
ワ「なんか、随分と多なってるな」
ユ「へ、これわたしの行きたいとこも入ってまんねん、一緒に行きまほ」
ワ「なんで、あんたと行かないかんのや、それで、それ、何日くらいかかりまっか」
ユ「マー、そうですね、3ヶ月から半年あれば、十分……」
ワ「そんなもん、行ってられるかいな、もう一回、練り直してきてんか」
ユ「そうですか、えらいすんまへん」
  (間)
ユ「今度は失敗せんようにせないかん。斉藤さん、コンニチハ」
サ「はい、コンニチハ」
ユ「旅行社よりまいりました。アメリカ西海岸の旅行ブランを持ってまいりました」
サ「そうですか、こちらへ上がってください」
ユ「失礼します。--いいお宅(うち)ですね。-一ここで変なこというて、話が変
  な方に行ったんやな」
サ「あんた、なにいうてはりまんの」
ユ「いえ、ちょっと独り言です」
サ「さよか、そこに座って、話聞かせてもらいまほか」
ユ「成田をたって、ハワイのホノルル空港に着いて、ワイキキの浜辺で一日過ごして
  いただきます。次ぎの日はサンフランシスコ、そして、ロスアンジェルスと一日
  ずつのご予定になっております。その後、ディズニーランド、ラスベガス、グラ
  ンドキャニオン、いずれか1日のご予定を選んでいただけます」
サ「それ決めなあきませんのん」
ユ「はい、できましたら」
サ「慶太に聞かな決めるられへんわ、電話しよか」
ユ「それなら、これで(携帯電話を渡す)」
サ(電話をかける)「あかんわ」
ユ「え、壊れてますか」
サ「ケイタ、イテンワ」
                                  (終わり)