#SUB:「らくごのご」(1996.9.23テレビ朝日(関東))
毎度おなじみの桂ざこばと笑福亭鶴瓶の「らくごのご」。
今回は、9月19日、関西放送分。親子デーです。
ゆきえさん、薄紫の上着、白い大きな襟が付いている。白の短いパンツ。

ゲスト:伊原 剛志

テーマ:刑事

お題:行けず後家、オーロラ、瓜二つ

鶴瓶師匠
不思議な事件が起きている。生簀(いけす〉が盗まれる。<イケス5件>盗まれた。
<瓜二つ>盗まれている。喫茶<オーロラ>。熟帯魚を飼っている。ここが犯人や。
逮捕状を持っていく。犯人がいない。「オーロラでホシは見えない」

ざこば師匠
中村主任、課長の指示で、交通課の婦人警官<行けず後家>と見合いする。帝国ホテ
ルのレストラン。グラスワインを注文する。グラスに露がついて、<オーロラ>みた
い。デザートは瓜が一つだけ。婦人警官が<瓜二つ>に切る。指をきった。中村主任
がその血をなめる。「ケッコンを意識する」

さてお待ちかねの拙作です。
  (実在の場所、人物等と一切開係ありません)

  (寄席、講談の高座)
講談師「……白夜の夏、<オーロラ>輝く、ストックホルムからやって来たその男…
   …」
刑事1「あいつか」
刑事2「へえ」
1「ほんまに、この似顔絵にそっくりやな」
2「そうでっしゃろ、<瓜二つ>言うたら、これ以上ないという感じでっしゃろ」
1「こいつが、結婚詐欺の犯人とはなあ」
2「そうだんねん、<行けず後家>の弱みにつけこんで、結婚をちらつかせて、10
  万、20万と金を出させては、行方くらましまんねん」
  (間)
ゲ「二竜斎定坊はいつ聞いてもええなあ」
キ「さよか、あんなもん、ほめてたらあきまへんで」
ゲ「どないしたんや、お前好きや言うてたやないか」
キ「そら、昨日までは何も知らんよって、ファンやったんでっけど、あないなこと聞
  いたら、ファンなんかなっとられまへんで」
ゲ「一人で怒とっては分からんがな、どないしたんや、言わんかいな」
キ「大きな声ではいえまへんけどな」
ゲ「もう十分大きな声で言うてるやないか。どないしたんや」
キ「講談が始まってすぐに、ワタイ、トイレに行きましたやろ」
ゲ「そうや、ワイ、言わなあかん思とったんや、あんな、行儀の悪いことしたらあか
  んで、ちゃんと始まる前に行っとかな、やっとるもんの気が散るやろ」
キ「そうでんねん、えらいすんまへん、---違いまんがな、そんな話やおまへんね
  ん」
ゲ「なんやねん」
キ「そのトイレに行く途中で小耳に挟みましたんや」
ゲ「なんやいな、もったいぶらんと早よ言わんかいな」
キ「あの二竜斎、えらいやつでっせ」
ゲ「どないしたんや」
キ「驚きなはんな、結婚詐欺らしいでっせ」
ゲ「そら、ええ男やけど、そんなことするとは見えんけどな」
キ「人は見かけによらん言うのんは、このことですわ、ワテちゃんと、この耳で聞き
  ましたんですわ」
ゲ「それがほんまやったら、ひとこと言うたらなあかんな」
キ「言うたりまほ、言うたりまほ」
  (間)
コ「まいど、ごひいきで、ありがとうございます」
ゲ「いっつも、ええ調子やな」
コ「ありがとうございます、ここのところ、ずいぶん売れてきました」
ゲ「講談いうたら、たいていマゲ物か、せいぜい明治ごろの話やのに、おまほんのは
  一気に現代物やからな、若い子もずいぶん聞きに来てるらしいな」
コ「へえ、現代作家の先生にお願いして、試しに高座にかけてみたら、案外評判がよ
  ろしおまんねん」
キ「ゲンやん、そんな話するために、連れて来たんと違うで」
ゲ「わかってるがな、オイオイ聞いていくんやがな」
コ「へ、なんど」
ゲ「なんや、ちょっと悪い噂聞いたんやけど、なんど、おぼえはないか」
ゲ「いや、何もおまへんけど」
ゲ「そうか、女づきあいの方はどうだ」
コ「それが最前も言いましたように、このごろ、売れてきましたもんで、付き合うて
  るヒマがおまへんねん」
ゲ「それでも、高座終わったら、ヒマになるんやろ」
コ「移動せないけまへんしな、まだ、芸が未熟でっさかい、練習もせないけまへんし
  な、そんなヒマおまへんねん」
ゲ「そんならええんや、ちょっと売れてきたから言うて、慢心して天狗にならんよう
  にな、悪い気分にさせたな、今日は、ゆっくりしていって」
コ「へ、大きに」
  (取り調べ室)
1「君、E子さん知ってるか」
コ「さあ、知りまへんけど」
1「それやったら、Y恵は」
コ「Y恵て、あの年令不詳のタレントでっか」
1「知ってるか」
コ「そら、こんな商売でっさかい、一回や二回は放送局のスタジオで会うたことはあ
  りまっけど」
1「交際はないんか」
コ「交際なんて言うもんやおまへん。みんなで昼食に行ったり、夕食に行ったりした
  ときに、一緒になることはおましたけど」
1「そうか、ほな、○月○日、何しとった」
コ「○月○日は、確か、N座の高座に上がってましたけど」
1「×月×日は」
コ「その日は、えーつと(ポケットから手帳を出して、繰る)。あ、A放送局の打ち
  合わせですわ、そのあと、係の人と飲みに行きました」
1「そうか、それ証明できるな」
コ「へ、もうちゃんとした仕事でっさかい、先方に聞いてもろたら」
l「そうか。(間)ある人がな、君にそっくりな男にだまされた言うてんねんけど、
  なんど心当たりがないか。楽屋もうろうろしてるらしいで」
コ「ワテにそっくりな男で、楽屋にも出入りするて、(間)あ、そっくりさんと違い
  ますか」
1「そっくりさんて」
コ「テレピでもやってますやんか、有名人にそっくりや言う人が」
1「ア、そのことか、君にそっくりさんているの」
コ「そうでんねん、まだそない売れてない内からそっくりさんがいましてん。人気と
  りの一つや言うて、一緒にテレビにも出たこともありましたわ。ところが、こい
  つ、悪いやつでんねん、あちこち、ワテや言うて、借金して帰りよりましてん、
 借金言うても、千円、二千円で、まあ、たしても一、二万でっしゃろけど、おか
  しなもん連れて来な言うて、えらい怒られましてん。そない言うたら、チョイチ
  ョイ、ワテとデートした言う女の人から電話がかかったこと、おましたな」
1「そうか、そいつの住所知ってるか」
コ「さあ、昔のことでっさかいな、放送局やったらなんど記録が残ってまっしゃろ」
  (間)
キ「ゲンやん、二竜嘉定坊のそっくりさんがなあ、結婚詐欺で捕まったんやで」
ゲ「オー、ワイも聞いてる」
キ「これがまたええ男なんや、ホンマ物より上違うか言う話やで」
ゲ「色男、金と力はなかりけり言うけど、女だますやなんて、ひどいやつや」
キ「それにしても,ようそないだまされよったな」
ゲ「しようないわな」
キ「なんでや」
ゲ「講談師のにせもんや、見てきたような嘘つかれたんや」
                                  (終わり)