「らくごのご」(1996.9.16テレピ朝日(関東))
毎度おなじみの桂ざこばと笑福亭鶴瓶の「らくごのご」。
今回は、9月12日、関西放送分。
ゆきえさん、青の半袖(ペパーミントグリーンとのことです)。白の
パンタロン。

ゲスト:前田 日明。

テーマ:一家団欒

お題:エキストラ、デカンショ祭、トイレトレーニング。

ざこば師匠
マイ(人名)。二才、まだ、おむつをしている。父「<トイレトレーニング>
せないかんな」 父「<デカンショ祭>行こ」 マ「<エキストラ>」 
父「どないした」
マ「勝手に口から出た」 祭だからと、酒を飲む。マイにも飲ます。赤い顔に
なる。
二日酔いなる。---六才になる。まだ、おむつがとれない。「オー、六つ」

鶴瓶師匠
「集まらへんがな、<デカンショ祭>に」 「<エキストラ>使てる
らしいで」
「一家団欒でできんのか」 ロシアから人を雇う。名は<トイレ
トレーニング>
絵を描いたり、その他、祭の企画をする人。祭は成功の内に終わる。「地図を
描いてくれ」ト「わたしの名前がトイレトレーニングだから、もう地図は
描かない」

さてお待ちかねの拙作です。
  (実在の場所、人物等と一切関係ありません)

映画監督(腕組みをして、頭をひねっている)「ウーム」
助監督「どないでっか」
監「ウーム、群馬県の「眠る男」の向こうをはって、兵庫県の映画を作って
  くれ、言われてんのやけど、どうしたもんかな」
助「そうでんな、大地震に遭うた神戸から、姫路城の姫路、たこやたいで
  有名な明石などの南地方と但馬(たじま)牛の但馬や北の日本梅側と、
  いろいろありますね」
監「ただの観光映画にはできんしな」
助「どないでっしゃろ、今度の大地震で、瀬戸内海から大怪獣が目覚めて、
  日本全国荒らしてしまうというのは」
監「なんやそれ」
助「日本の90%以上が荒れ野原になって、みんなが神戸の人たちの苦労を
  しのぶんですわ」
監「そんなもん作ったら、金出してもらえへんで」
助「あきまへんか」
監「原作になりそうなもん考えてみたけど、志賀直也の「城崎にて」。これは
  日本海側やな。宮本百合子の「播州平野」。これは名前の通りや。あとは
  司馬遼太郎の「播磨灘物語」。こんなとこかな、有名なんわ」
助「どうもかたよりがありまんな」
監「作家はわりと出てるんやけどな、あんまり兵庫県を舞台にしたもんは
  ないなあ」
  (間)
  (扉を叩く音)
助「ハイ、どうぞ」
監「なに、言うてんねん」
  (再び、扉を叩く音)
助「ハイ、どうぞ」
監「どないしたんや」
助「どなたど、ドアを叩いてはります」
監「どなたて、家内は留守やから、他にだれもいてへんで」
  (もう一度、扉を叩く音)
助「ほれ、今」
監「ああ、ミケやろ」
助「ミケさんて、どなたで」
監「ミケ言うたら、ミケや、猫やがな、ちょっと開けたって」
助「さよか」(扉を開ける。甘えた猫の鳴き声)
助「ワテ、ちょっと猫は苦手でんねんけど、かわいいもんでんなニャーニャー
  鳴いとる」
監「これは、トイレに行きたいんや」
助「トイレに行くんでっか」
監「そうや、<トイレトレーニング>できてんねん。終わった後、トイレット
  ベーパーしまいまでほどいてしまうのが困ってんのやけどな。ちょっと
  連れて行ってやってんか」
  (間)
助「いや-、利口なもんでんな、便器の上にチョコンと座って、上手に
  しましたわ」
監「大きに」
助「どないでっしゃろ、メーキングストーリーと言うことにしては」
監「メーキングて」
助「監督がこう、映画作りに苦心して、あちこち見て回るというところを
  そのまま映画にしてしまうんですわ」
監「ちょっと安易やけど、それで企画書作っとこか」
  (間)
ゲ「なんやねん、季節はずれに、ヤグラなんか組んで」
キ「ア、ゲンやんか。映画とるねんで」
ゲ「映画て、なんの映画や」
キ「あんまり知らんのんやけどな、どっか大きい会社のドラマ言うことや
  ねん」
ゲ「それで、ヤグラなんか組んでんのか」
キ「そうやねん、ドラマの背景にここの<デカンショ祭>が映される言う
  ことやねん。
  それで、<エキストラ>雇て、囃子方や踊り手をやりまんねん。ワタイも
  出てくれ、言われてまんねん、ゲンやんもどないでっか」
ゲ「そうかいな、暇やし、ちょっと行ってみよか」
  (間)
助「シーン16の撮影に入ります。エキストラの方は集まってください。真ん中
  の輪と、次の輪と、外の輪。お囃子の方、いいですね。それでは
  音楽。(盆踊りのお囃子)スタンパイ。シーン16。ヨーイ、スタート」
音楽(デカンショ、デカンショーで、半年暮らす、あとの半年、寝て
  暮らす……)
監「カーット。どうもよくないなあ、なんだろう。(腕を組む) ウーム」
助「休憩に入ります。次の招集まで、小休止にします。あまり遠くへは
  行かないでください。(間)小休止にします。……(間) 小休止に
  します」
  (間)
キ「ああ、びっくりした」
ゲ「どないしたんや」
キ「今、トイレに行ってきたらな、トイレで猫がウンチしてまんねん」
ゲ「猫なんか、そこらの草むらか砂地でするんと違うんか」
A「それ、監督の猫だ」
キ「へ、この映画の監督の猫、トイレでウンチしまんのん、利口なもん
  でんな」
  (間。キー公、服のポケットをあちこちさぐる。首をかしげる)
ゲ「今度は何があったんや、そわそわして」
キ「ジュースでも飲も思て、サイフさがしてまんねんけど、おまへんねん。
  トイレで落としたんやろか」
ゲ「トイレで落としたんやったら、もうないで」
キ「トイレで落としたらあきまへんか」
ゲ「ネコババされてる」
                          (終わり)