「らくごのご」(1996.7.29テレビ朝日(関東))
毎度おなじみの桂ざこばと笑福亭鶴瓶の「らくごのご」。
今回は、7月25日、関西放送分。
ゆきえさん、白の上着、白色の短パン。若干の色違い。

ゲスト:出川 哲朗

お題:ありがとさん、文武両道、梅雨明け

鶴瓶師匠
ポヤキ落語(らくごのご?)講座が始まる。 まず、オチに悩むという話。
「ありがとさん」なんて坂井俊夫ぐらいしか思いっかない。「文武両道」は
文武両道しかない。
「梅雨明け」あたりでオチになると思いますがと、言いながら……
「さがしてもらう」……「こんなとこにほんまにあんのんか」……「フミタケ、
フミタケ」……などと言いながら・…‥
「ここやここや、ひともうけする。勉強だけではだめ、腕力もつけないかん。
それを<文武両道>というんや」「<ありがとさん>」……。山に登る。瓶に
水を入れる。
中に木の実か葉を入れる。良い匂いがするので、オーデコロンで売り出す
ことにする。
名は<梅雨明け>。テレフォンショッピングで売る。タレントの出川を雇う。
よく売れたが、肌が荒れたとの苦情も集まる。売り出した二人は逃げる。
出川が捕まる。
「これは肌に悪いんや」「香水やないんですか」「梅雨明けで、コウスイ確率
0パーセントや」

ざこば師匠
「先生、技を一つ教えて」背負投げを教える。「勉強もせなあかんで」
「やってます」
「<文武両道>をこなしてるなあ」……お中元にピーナッツを持っていく。
のし紙に<梅雨明け>と書く。「<ありがとさん>。何が入っている?」箱を
開ける。「あけたら夏か。ピーナツのナツはわかるが、ピーはどうなってん
ねん」……「たくさん食べてください」「たくさん食べて、ピーやて、
そんなんでは納得しない」……電線に入れ換えて、持っていく。「梅雨前線の
梅雨があけて、
前線(電線)だけか。納得でけんで」……「なにも入れんと持っていこか、
梅雨明けやから、カラとしてる、としよか」と、言ってしまう。言うたら
いかんという声をききながら、「梅雨明けやめて、梅雨まっさかりにする」
いろいろなものを箱の中に入れる。先生、箱をあける。哲学書やインター
ネットや、ワケのわからないものが入っている。「梅雨まっさかりか、
……うん、うっとうしなってきた」

さてお待ちかねの拙件です。
  (実在の場所、人物等と一切関係ありません)

息子「お母ちゃん、ただいま」
母「お帰り、今日も遅かったなあ、お父ちゃん、ビール飲んでもう寝て
  はるわ。
  よう汚れてるなあ、家の中にドロあげたらあかんよ。外でよう砂はろて、
  男の子やから、上も下もユニホーム脱いで、風呂に入り。脱いだもん
  すぐに洗濯機に入れてな。全自動やから、スイッチ押すだけでええわ。
  野球もええけどなあ、梅雨どきは洗濯物が乾かへんからな、お母ちゃん、
  かなんねん」
  (間)
子(風呂あがり。頭や首のあたりを拭きながら)「ああ、さっぱりしたわ」
母(食事のしたくをしながら)「運動もええけどな、勉強もせなあかんで」
子「先生もそない言うてるわ。それで練習の終わったあと2時間ほど宿題
  とかするねん。帰ってきてから、一人でしよ思ても寝てしまうからな、
  みんなでワイワイ言いながらやってしまうねん」
母「そうか、ええ先生やな」
子「うん、<文武両道>に励まないかん言うてはるわ」
母「なにが『文武』やの」
子「勉強と野球のことやんか」
母「野球のどこが「武」やの、変なこといわんとき。バット持って相手
  たたくんか」
子「そんなことはせえへんけど、クラブ活勤の中には剣道も弓道もあるん
  やで、オリンピックのゲームの中には、洋弓やライフルなんかもあるん
  やで」
母「あちゃ」
子「砲丸投げも、もとは大砲の玉と達うか」
母「……」
子「槍投げもあるで」
母「……」
子「なんか、言いな」
母「平和の祭典も、結構恐ろしいとこあるなあ」
子「文武両道でええか」
母「わかった。それでも文武両道なんてことばそない古いことないねんで、
  寛政の改革のとき、老中の松平定信がいいだしたんやで」
子「ふーん」
母「松平定信いうのんは、吉宗の孫にあたるんやで、最初は期待されて
  幕府に入って改革に着手したんやけどな、しまいに嫌われてしもたんや、
  「世の中にかほどうるさきものはなし、ブンブといいて、夜も寝られず」
  いうてな」
子「さすが歴史だけは100点のお母ちゃんや」
母「誰が歴史だけ100点やの、誰がそんなこと言うの」
子「お父ちゃんが言うてたで」
母「ろくなこといわへんな」
子「ほな、他にもあったんか」
母「ない」
子「ほな、ええやんか」
母「はんまやから、腹が立つねん。--それで勝てそうなんか」
子「うん、去年の成績がよかったからな、PTAとか力入れてくれてんねん」
母「地区大会の優勝戦までいったからな、勝ってたら甲子園やったのに」
子「練習がたらんかった言うてな、雨天練習場作ってくれはったんや」
母「は、雨天練習場まで」
子「そない言うても、車庫の雨よけの大きいようなやつやから、キャッチ
  ポールぐらいしかでけんけどな、今までは体育館で他のクラブに気使い
  ながら練習するとか、教室の建物の廊下や階段使こて体操ぐらいしか
  できんかったんやから、えらい違いや」
母「そうか、そしたら、がんばらなあかんなあ」
子「<梅雨明け>したら、すぐに夏の大会や」
母「そうか、がんばりや」
  (地区大会、決勝戦)
父(叫ぶ)「しまっていけよー」
母「もう最終回やで、まだ負けてるやないの」
父(叫ぶ)「まだ、ワンアウト、ワンアウト」
母「今回もあかんのかなあ」
父(叫ぶ)「打った。--よーし、よし、ヒット、ヒット」
母「アー、わたし見てられへんわ」
父(叫ぶ)「ボール、ボール、球見ていけよ、ホラ、2ボール、--3ボール、
  --フォアボール。<ありがとさん>。1、2塁。さあ、1本いこか」
母「ア、ほんま、見てられへん」
父「見てられへんて、しっかり目開けてるやないか」
母「目開いてても、見てられへんの。うちの子の番まだか」
父「ほら、また、フォアボール、満塁、満塁。うちのボウズ出てきたで」
母「ほんまや。(叫ぶ)しっかり打ちや」
父(叫ぶ)「落ちついていけよ」
母「空振りや」
父(叫ぶ)「ドンマイ、ドンマイ。当たる、当たる」
母「アー、2ストライク。--アー、ファール、--またファール、
  --どないしよ」
父「なさけない声、出すな。(叫ぶ)よう見ていけよ」
母「1ボールや、--2ボールになった」
父(叫ぶ)「打った、打った。--ぐんぐんのびてる、のびてる。センター
  バック」
母「センター、飛びついた」
父(叫ぶ)「抜けた、抜けた。走者一掃や、逆転や、逆転や」
  (間)
父「とうとう甲子園や」
母「雨天練習場のおかげやな」
父「ウテン? そうや、練習したから、ウテンのが、打てるようになった
  んや」
                           (終わり)