#SUB:「らくごのご」(1996.7.22テレビ朝日(関東))
毎度おなじみの桂ざこばと笑福亭鶴瓶の「らくごのご」。
関東地区では、2回のお休みがありました。今回は、7月4日、関西放送分。
ゆきえさん、白黒のチェックの上着、白色のミニ。

ゲスト:黒柳 徹子

お題:マオカラー、海の日、息継ぎ

鶴瓶師匠
ドロポウの話。入り方を教える。「祝日をねらうんや」 一番近いのは
<海の日>。
昼間の方がええ、路次を歩いて、小さな窓を探す。肩が入る窓なら入れると
いわれたが、二人で来て、一人が、首がようよう入れるような窓に首を
つっこむ。抜けなくなる。「<マオ(窓)カラ>入ったら、ぬけんように
なった」 ハーハー。「どないしてん」「<息継ぎ>してん」「大家さん、
面白かったな『らくごのご』」と家の人が帰ってくる。一人逃げる。
「あいつ、どうしてるやろ」「つかまってる」「マオ(窓)カラ入ったのが
悪かった」「ネックや」

ざこば師匠
「今日なんの日や」「<海の日>や」「海の日か、びっくりするようなことを
する。
中国まで泳いで行く」介添えを頼む。「中国へ行くのなら<マオカラー>の
人民服で行かんとあかんで」・・・日本海側へ出て泳ぎ始める。鮫が出て
くる。オールで追う。イルカが出てくる。イルカに乗っていく。・・・中国
大陸に着く。寒い。火をいこす。「あんただれ」「モータクトーです」
「寒いんでなんとかしてください」「ぬくめてあげます」「なにすんねん」
「焚き火をします」「早よしてくれ」「モータクトー」…・・・
「どうたくんですか」「コウタクミン」「ほたら、チャイナら」楽屋に帰るが、

一つ残しているのを知らせられる。もどってきて、イルカ<息継ぎ>せえよ。

さてお待ちかねの拙作です。
  (実在の場所、人物等と一切関係ありません)

夫(カレンダーをめくりながら)「今年の7月20日て、赤おなってるな」
妻「なんや、あんた知らんのん、平成8年から<海の日>いうのんができた
  んやし」
夫「赤おなってるいうことは、祝日なんか」
妻「あたり前やないか。日本のカレンダーはたいてい、日曜と祝日が赤で
  印刷されてるんや」
夫「こんな中途半端なときに祝日にしてもうてもうれしないやろな。学校の
  夏休みは始まるし、今年は土曜日と重なっているし……。週休二日制の
  とこで、土曜と祝日が重なってるの見たら、腹立ってくるで」
妻「腹立ててるの、あんただけと違うか。なんかよう知らんけど、月に1回
  祝日を作るとかいうてたけど」
夫「ほんなら、12日間も祝日があるんか」
妻「そやな」
夫「それで、昔聞いた漫才思い出した」
妻「どんな漫才」
夫「『ぼくのスト撃退法』やったかな、(注)
  A「社長、月給を上げて下さい」
  社長「ⅩⅩ君か、正統な理由があるなら月給を上げてやろうじゃないか」
  A「ほんとうですか、話がわかりますな」
  社長「ぼくは、正しいことはちゃんとやるのやから。まず、労働日数を
   計算しよう。当社は8時間労働や。1日は何時間や」
  A「24時間です」
  社長「8時間は24時間の3分の1だな。では1年の3分の1働いているんだ。
   1年は365日、うるう年は366日。366日で計算したまえ」
  A「122日です」
  社長「日曜は休みやな、月に4日で、1年で48日。48日をひきたまえ。何日
    残った」
  A「74日です」
  社長「土曜日は半ドンやったな、日曜の48日の半分、24日をひきたまえ」
  A「50日です」
  社長「日本には国民の祝日というのがあったな。10日ひきたまえ」
  A「40日です」
  社長「当社には年末に2日、年始に3日の休みとお盆に1週間の休みが
   あったな、12日をひきたまえ」
  A「28日です」
  社長「当社には20日間の有給休暇があったな」
  A「8日です」
  社長「創立記念日は休みだったな」
  A「7日です」
  社長「確か、君はお母さんが亡くなったとかで、1過間忌引したな」
  A「ハア」
  社長「どうした、1週間、7日をひきたまえ」
  A「ハア」
  社長「何日残っとるのかね」
  A「1日も残っていません」
  社長「なんだ君は1日も働かないで月給をもらっているのかね」
妻「まあ、あんたがやるとへたやけど、面白い話やね」
夫「ほっとけ、これで、祝日が10日から12日になったら、働かないどころか、
  休みすぎてることになるで」
妻「なんでこんなことになるの」
夫「ようわからんけど、落語には、壷算とか、似てる話があるで」
妻「難しい話はええわ。それでね、『海の日』なんで、中学校のブールで
  水難予防訓練があるから、あんた、行ってくれる」
夫「水難予防訓練てなにすんねん」
妻「着服して逃げる練習するそうやで」
夫「着服て、おまえ、ぶっそうやな、銀行員か信用金庫の職員が金ごまかして
  逃げたんか」
妻「達うがな。船から落ちたり、川に落ちたりしたら、服を着たままやない
  か」
夫「服を着てるから着服か、それは誤解されるで」
妻「ふだん着を着てたら、えろう泳ぎにくいんやそうですわ、そやから、
  事前に練習しとくんやそうですわ」
夫「そうか、ターザンも水着みたいなかっこうやもんな。ジャングル・ジムは
  帽子だけ脱いでたと思うけど」
妻「古いことようおぼえてはりますなあ。ほな、頼みましたで」
夫「おまえ、なんでせえへんねん」
妻「わたしも出る予定でしたんやけど、コレでっさかい(両手で腹が盛り
  上がっている形を作る)」
夫「そやったな、女の人の方がスカートなんか、からまって、泳ぎにくいと
  思うけどな、誰ぞ女の人もするんか」
妻「さあ、聞いてまへんけど」
夫「着物がぬれて、服がぴったりはりついて、へへへ……」
妻「あんた、それが目当てと違うん(つねるかっこうをする)」
夫「痛い、痛いがな。まだなんもしてないのに妬くな」
  (間)
夫「えらい大勢の人がいてなあ」
妻「あんた、マイクで呼んではるで、水に入る人は集まらなあかんねんで、
  事前説明があるらしいで」
夫「そうか、どこやろ」
妻「あそこに、いろんなかっこうした人がいてるからあそこと違うか」
夫「ほんまやな、シルクハットの人がいてる。こっちは羽織、袴か、
  着流し、Tシャツに短パン、これは身軽でええなあ。白のウェディング
  ドレスと白のタキシードの人もいてるで。え、いま結婚式したて。
  そないいうたら牧師もいてるなあ。スキーウェア。あんなん大丈夫なん
  か、水吸うて沈んでしまうで」
妻「ぶつぶつ言うとらんで、早よ行きなはれ」
  (間)
妻「あんた、どないしたんや、<息継ぎ>せなあかんがな。顔あげなはれ。
  手と足バタバタさしてるだけで、ちょっとも進まへんやないの。頭冷やし
  なはれ。-一一頭、水の中へつっこんでどないしまんねん、息継ぎし
  なはれや顔上げなはれ。 あわてんとき言うてるやろ、手と足バタバタ
  してもしようおまへんやろ、頭冷やしなはれ、また、頭水の中へ入れ
  よった。
  どなたどいてまへんか、助けてやっておくんなはれ」
夫「ハーハー、<マオカラ->の服で水の中に入ったらきついなあ、空気が
  服の中へ入ってなあ、手にからみついて、あんじょう動かされへんねん。
  ズボンもまとわりつくしなあ」
  いや、おまえの苦労が身にしみてわかった」
妻「なんでんねん。プールに入ったぐらいで」
夫「ウミの苦しみの体験をした」

注:松鶴家光晴、浮世亭夢若の漫才を記憶をもとに再構成しました。
  細部では本物と違っているかもしれません。
                           (終わり)