♯SUB:「らくごのご」(1996.3.21テレビ朝日(関東))
毎度おなじみの桂ざこばと笑福亭鶴瓶の「らくごのご」。
前回の続き、「らくごのご」イン ハワイです。
冒頭ゆきえさんのハワイ見物。ゆきえさん、上は白地に黒の細かい横縞のシャツ、
黒のスラックス。行ったところは、ハロナ潮吹き穴、サンデー・ビーチ
(サーフィンの元祖)、マカプウ岬、ラビット島、ダイアモンド・へッド。

ゲスト:福嶋晃子(プロゴルファ)

お題:夢心地、旅の母、ペア・ウォッチ

突如「鉄ビン」に。春之輔師匠ピンチ。それでも受けるところが、商売人。

鶴瓶師匠。
夫婦でハワイへ。<ペア・ウォッチ>を買って。持ってきたお酒が<夢心地>。
お父さんが悪酔いする。お母さんが家に電話する。<旅の母>から電話。柿を
食べさし。柿は捨てた。「旅の母は柿捨て」。

ざこば師匠。
夫婦でハワイへ。ホテルに着いて<夢心地>。この<たびの母>は違う。時計屋に
入る。<ペア・ウォッチ>。一生「コチコチの人」といいます。

春之輔師匠。
「奥さん<旅の母>になってください」。死んだ母に会ったようで<夢心地>
です。
<ペア・ウォッチ>の1つをつけてください。「母は病身で悩んでいました」


さてお待ちかねの拙作です。

広島「山口さん、こんにちは」
山口「ああ、広島さん、いらっしゃい」
広「こんどの町内会の旅行なんでっけどな、婦人部の部長の岡山さんが行けん
  ようになりましてな、だれぞ責任者に決めてくれ、いわはりますねん」
山「ああ、そうでっか、それで、誰に決まりましてん」
広「それをいま決めに回ってまんねん。旅なれた人をとあたってまんねんけどな、
  どなたもやってやるいう人がおられまへんねん」
山「それは困りましたなあ」
広「それで、山口さんどないでっしゃろ、ひとつ、引き受けていただけまへん
  やろか」
山「ウチでっか。そない旅なれてまへんけど」
広「ウチも力になりまっさかい、どないど引き受けていただけまへんやろか、
  もう、ウチ、疲れてしまいましたわ」
山「そんなとこにへたりこまんと。弱りましたなあ」
広「弱ってるのはウチの方でっせ」
山「どなたど、おられまへんのんかいな」
広「みなさん、なんのかんのいいはってなあ」
山「さよか、あんさんも大抵やおまへんなあ」
広「あきまへんか」
山「泣きなはんな」
広「そやかて、ここで断られたら、また、回っていかなあきまへんのでっせ」
山「ウチが引き受けて、いざとなったときにウチのいうこと聞いてくれはり
  まっしゃろなあ、それやったら、引き受けてもよろしいわ」
広「さよか、ほっとしましたわ」
山「みなさんに、そのこと確かめといてくださいよ」
  (旅行説明会にて)
山「このたび、今回の旅行の責任者となりました、山口です。本日はお忙しい
  ところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。いよいよ、町内会
  の旅行も間近になりました。今日は旅行会社の担当者の方から注意事項などの
  説明をしていただきます。どうぞ、お聞きもらしのないようにお願いいたし
  ます」
A子「山口はんが、今回の先達さんでっか」
B子「先達? また古いこと」
C子「岡山さんが行けんようになったんで、他の人頼みはったんやけど、どなたも
  引き受けはらんというんで、山口はんが引き受けはったいうこってっせ」
A「うっとこへも、広島はんが来やはりましたんでっけどな、あんまりすぐに
  引き受けるんも、なんやさかい、お断りしましたんやけどなあ、山ロはんが
  引き受けはるとは思いまへなんだ」
B「ウチもなあ、礼儀や思て、一旦は断りましたんやけどなあ、山口はんが引き
  受けはるとはなあ、思いまへなんだ」
C「うっとこも、そうですわ。ちょっと、釘さしといたりまほか。ちょっと山口
  はん」
山「へ」
C「責任者いうたら、親も同然なんやから、しっかりしてや」
山「親やなって、そんな」
B「そやで、親やで、母なんやから」
A「旅行の母や、<旅の母>やで」
山「ハハ」
C「何、シャレいうてはりまんのん」
山「ハハはハハでも、ハハ、ノンキだねの方のハハでっさかい、よろしゅう
  お頼み申します」
一同「こら、あかんわ」
  (ホノルル)
広「山口さん、お疲れさん、やっとホテルに入って、落ち着きましたなあ」
山「ああ、広島さん、お疲れさん、どないしてはります」
広「どないもこないも、まだ、頭がボーとしてますわ。<夢心地>でんねん」
山「時差ボケいうやつでっか」
広「そうでんねん、なんか、ふわふわした気持ちでんねん。まあ、それもおます
  けどなあ、急に大役おおせつかりましたやろ、日本を出るときには緊張して
  ましたけど、こっちに着いたら、なんや、ホッとしましてなあ。頭の中
  真っ白けですわ」
山「さよか、ウチも、一安心でっけどなあ、まだ、帰りがおますよってなあ、
  安心も半分ですわ」
広「ほんまに、えらい目に会わしますなあ、あと、もうちょっとでっさかい、
  よろしゅうお願いいたしまっさ」
山「それはええんでっけど、ウチらも、ちょっと、みやげでも買いに行こか思て
  まんねん、一緒に行きはらしまへんか」
広「さよか、そんなら、一緒に行きまほか」
  (間)
広「あそこのあれ、タタキ売りとちゃいまっか」
山「ほんま、こんなとこにも、クタキ売りておまんねんなあ」
広「やあ、あそこにある時計、免税店でもええ値してたやつだ。なんぼで売り
  まんねやろ」
山「時計て、あのエンジのやつでっか」
広「そうですわ」
山「免税店のやつは、大きいのと小さいのと、二つあったんと違いまっか」
広「そないいうたらそうでんな」
山「あれ、あそこに、奥の方によう似た色の時計がありまっせ」
広「ほんまや、あれ、ひょっとして<ペア・ウォッチ>を別々にして売って
  まんねんで」
山「なるほど、二ついらん人にはこっちの方がよろしおますなあ」
広「そない思てたら、腹も立ちまへんわなあ」
山「なんででんのん」
広「あれ、一つずつ、免税店のペア・ウォッチと同じ値がついてまっせ」
山「そしたら、倍の値でんがな」
広「そうですわ」
山「えらい、人の足元見てまんなあ」
広「いや、手元見てまんねん」

  (実在の場所、人物等と一切開係ありません)