知事選 主な候補者に聞く 上
中盤戦に入った知事選。読売新聞が9のテーマについて、主な3候補に聞いた「政策アンケート」を3回にわたって紹介する。(上から届け出順)

■倉田 薫氏 63 諸新
〈1〉最も重要な争点
数の力にまかせた上から目線の府政から、21人の市町村長連合を中心とした連携、協調の府政へかえます。ALLおおさか会議(仮称)を設置し、成長戦略、企業誘致など広域行政を推進。さらに、救急、防災、教育など課題別の市町村連合をめざします。WTCの失敗、府民負担を最小化するため庁舎を再検討します。
〈2〉大都市制度
特別法やねじれ国会でいつ実現するかわからない法改正が必要な大阪都構想は争点ではありません。府県は高度医療、産業政策、警察行政に特化。政令市、中核市をはじめ市町村に権限移譲。広域行政は、市町村連合で可能。関西広域連合や首都圏連合が、府県の機能を担っていくべきと考えます。
〈3〉咲洲庁舎
2回の移転条例が否決されたにもかかわらず、WTCを購入したことで約550億円もの無駄遣いになるといわれています。二重庁舎を続けると30年で1200億円以上の経費がかかることから、利便性や関係機関の連携、府民負担を勘案して、大手前に集約を図るよう幅広く検討していきます。

■梅田 章二氏 61 無新(共推薦)
〈1〉最も重要な争点
橋下氏と「大阪維新の会」は「政治は独裁、教育は強制」と公言し、強権的な政治をすすめてきました。最大の争点として、庶民の大阪から、「独裁ノー」の審判を下します。また東日本大震災の教訓にたち、震災・津波から命を守り、「原発ゼロ」・自然エネルギーに転換するなど、「安全・安心・やさしさの大阪」をつくることです。
〈2〉大都市制度
「大阪都」構想は、大阪府・大阪市の財源、権限を「1人の指揮官」に集中し、「関空リニア」や「カジノ」構想まで狙うもので、反対します。大企業・外国頼みでは大阪経済の歪(ゆが)みは加速します。大阪府と大阪市は、それぞれ「住民の福祉を増進」させる自治体としての責務をつらぬき、相互連携を強めることが重要です。
〈3〉咲洲庁舎
咲洲庁舎が防災拠点になりえないことは明白です。議会の否決にかかわらず、府庁移転を推進し、庁舎買収・耐震補強に250億円もムダ遣いした前知事の責任は重大です。府庁舎は咲洲から撤退します。旧WTCビルの活用と咲洲のまちづくりは府と大阪市、開発にかかわってきた関西財界などで協議機関をつくり、検討します。

■松井 一郎氏 47 維新
〈1〉最も重要な争点
最重要課題は大阪の長期に亘(わた)る地盤沈下と住民の貧困化をどのようにして食い止めるか、必要な成長戦略をどのようにして可能にするかです。成長を実現するには広域行政と基礎自治の運営主体を明確に分けることで財源をまとめて集中投資することが必要です。2%成長を実現し、その果実で基礎自治を充実させるのが都構想です。
〈2〉大都市制度
多様な制度が用意されるべきですが、大阪に相応しいのは大阪都構想。大阪都市圏の成長を実現すべく広域行政に係る権限と財源を大阪都に一元化する一方、大阪市を8~9の特別自治区へと再編し、中核市並みの権限と財源を保障することにより、区民に身近なところで区が責任をもって区民サービスを展開することができます。
〈3〉咲洲庁舎
来年、中央防災会議の見解が示されるまでは、大手前庁舎と咲洲庁舎の併用が望ましいと考えます。大手前庁舎は歴史的、文化的価値の高い部分を耐震補強し、引き続き庁舎として使用します。一方で咲洲庁舎はオフィスビルとして十分な耐震性能があるということなら、国際戦略総合特区のシンボルタワーとして今後とも活用します。
(2011年11月17日 読売新聞)
知事選 主な候補者に聞く 中 (上から届け出順)

■倉田 薫氏 63 諸新
〈4〉行財政改革
全会計の借金(府債残高)が6兆円をこえる大阪府財政。短期的に財政改革が進んだような印象ですが、法人2税が落ち込む中で厳しい状況が続いています。知事の給与20%カット、退職金50%のカットを自らの姿勢として打ち出します。府市あわせを脱却し、大阪市などと1000人規模の人事交流をおこないます。
〈5〉関空・高速道路網
関空アクセスの改善のために、JRはるかのダイヤの組み替え、主要ターミナルからのシャトルバス連絡網を充実し、都心から1時間以内を実現。世界遺産の多い関西のゴールデンルートを策定。アジアからの集客をすすめます。ミッシングリンクの解消のため淀川左岸線の早期完成。物流ネットワークを形成。
〈6〉大阪の魅力向上策
B級グルメの博覧会など、食とお笑い、ユニークな大阪文化、庶民性をアジアにアピールしていく取り組みをすすめます。おせっかいの町大阪=外国人の道案内で目的地まで一緒に歩いていく、大阪おばちゃんのホスピタリティー、バックパッカーが泊まれる新今宮の簡宿など新しい魅力を発掘します。

■梅田 章二氏 61 無新(共推薦)
〈4〉行財政改革
橋下府政は府民向け施策を削る一方、6兆円もの府の借金の要因をつくったムダな公共事業については、槙尾川ダムなど一部を除き見直していません。不要不急の開発事業は中止します。職員の配置や人件費は、「府民の奉仕者」にふさわしく、ムダをなくし、効率的にすすめます。国に大企業減税の見直し、補助金復元を求めます。
〈5〉関空・高速道路網
関空の経営危機を助けるための「伊丹廃港」や、ばく大な費用がかかる「なにわ筋線」「淀川左岸線延伸」「関空リニア」などの建設をすすめることには反対します。過大需要見積もりにもとづく失敗をさらに重ねる「ハブ空港化」などでなく、国と関西財界、大阪府の責任で、関空のあり方についての根本的な論議が必要です。
〈6〉大阪の魅力向上策
大阪に集積する中小企業の業種、人・モノ・技術は豊富で多彩です。この力を引き出す「大阪ブランド創出事業」を新設し、大阪のすぐれた製品、技術を開発・発信する施策を積極的に進めます。「カジノ」などではなく、大阪の歴史、自然と文化を生かした「緑と文化の回廊計画」を推進し、大阪の魅力を対外的に発信します。

■松井一郎氏 47 維新
〈4〉行財政改革
大阪府は単年度黒字を3年連続で達成していますが、将来の府債の償還に備えるための減債基金に積み立て不足があり、財政再建の手綱を緩めることはできません。職員給与カットや不要事業の見直しを継続実施し、府債発行を抑制します。また、財政規律を強化すべく財政運営基本条例案の早期制定にも取り組みます。
〈5〉関空・高速道路網
関空は大阪の最重要インフラです。伊丹空港との一体経営の円滑な滑り出しに府として最大限協力します。高速道路については、阪高と名神等有料道路を地域で一体的に運営(ハイウエーオーソリティー)し、走行距離に比例した合理的な料金制度を目指します。また、大阪のミッシングリンクである淀川左岸線を早期整備します。
〈6〉大阪の魅力向上策
大阪は食・文化・経済のレベルが高く、観光産業を飛躍的に成長させることが可能です。プロモーションデスクを世界各地に設置し、府が先頭に立って集客します。特に集客がみこまれる中国人客に対しては、大阪の繁華街から京都や奈良の神社仏閣へとつながる関西ゴールデンルートを整備し、大阪を訪れる観光客を増やします。
(2011年11月18日 読売新聞)