東大阪大柏原、死球サヨナラ劇的V 5点差を逆転
2011年8月2日0時43分
甲子園初出場を決め、大喜びで応援席に向かう東大阪大柏原の選手たち=舞洲、水野義則撮影
大阪大会決勝は1日、東大阪大柏原が大阪桐蔭を劇的なサヨナラで破り、187校の頂点に立った。5点を追いかける苦しい展開だったが、驚異的な粘りでひっくり返した。春夏を通じて初めて出場する甲子園で、夢の続きを追いかける。
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(東大阪大柏原7―6大阪桐蔭)

大阪桐蔭―東大阪大柏原 8回裏東大阪大柏原1死満塁、中河の左犠飛で三塁走者西田が生還、同点に追いつく。捕手川端=舞洲、水野義則撮影
東大阪大柏原が5点差をはね返した。エース福山が3回途中で降板する思わぬ展開となったが、救援の投手陣が踏ん張り、代打がチャンスを広げる「全員野球」で勝利を呼び込んだ。4点を追う7回、無死一塁で代打花本元。「応援も聞こえないほど緊張した。無心に振った」という打球は左翼手の頭を越え、適時二塁打に。末武の適時二塁打で大阪桐蔭先発の藤浪をマウンドから降ろし、花本太の適時打で1点差に詰め寄った。続く8回は1死満塁から途中出場の中河の犠飛で追いついた。9回、三塁打と連続敬遠の1死満塁で、打席には3回戦でサヨナラ安打を放った山崎。2球目が死球となって押し出しサヨナラに。「一瞬、時が止まった」と興奮ぎみに振り返った。3回途中から登板した白根は6回、ライナー性の打球が体を直撃するアクシデントがあったが、変化球でタイミングを外し好投。3番手には代打で適時打を放った花本元が登板、2回を無失点に抑えた。大阪桐蔭は1点を追う3回、西田からの5連打で4点を奪い逆転したが、5回以降は追加点を奪えなかった。(佐藤達弥)
■投手陣引っ張り、あと一歩 大阪桐蔭・中野悠佑投手

ベンチに戻る大阪桐蔭の中野悠佑投手=舞洲、水野義則撮影
同点で迎えた9回裏1死満塁。大阪桐蔭の中野悠佑(ゆう=3年)は、捕手の川端晃希(3年)が要求した外角のサインに首を横に振った。犠牲フライでも負けが決まる。「思い切って内角で勝負しよう」。投げ込んだ直球は打者の腕に当たり、押し出しで試合終了。野手は守備位置で泣き崩れ、中野はマウンドに立ちつくした。昨春、2年生で選抜大会に出場した。甲子園のマウンドは投げやすく、大観衆の中で投げるのは気持ちよかった。新チームになって背番号1を任され、秋の府大会は優勝したが、近畿大会は初戦敗退。目前だった甲子園出場はするりと逃げた。春の府大会は肩と腰を痛めてベンチ入りできなかった。背番号1の藤浪晋太郎(2年)が好投し、チームは優勝。その間、夏に向けて走り込んだ。今大会の背番号は10。悔しさがこみ上げたが「大阪大会でしっかり投げて、甲子園で背番号1を取り戻す」。そう思い直した。準々決勝までの4試合に先発し失点1と好投した。
投手陣の3年生は中野だけ。「俺が引っ張らないと」と大会中、ブルペンで投げる藤浪に「左手をもっと使った方がいいぞ」「低めに集めろ」とアドバイスした。この日も、先発の藤浪に試合前「俺が後ろにいるから思い切って投げろ」。試合中は藤浪がベンチに帰ると水を差し出した。7回、2点差に詰め寄られたところでマウンドに立った。調子は悪くなかった。何度も帽子を飛ばして投げ込んだ。だが、初球からどんどん振ってくる東大阪大柏原打線の勢いを食い止めることができない。試合後、帽子のつばで顔を隠して泣き続けた。閉会式。スタンドから「ナイスピッチング」「よくやった」と声援が聞こえた。「全力で投げた結果。もう一度甲子園に行きたかったけど、その夢は藤浪たちに託す」。胸を張って行進した。=敬称略(向井大輔、阿部峻介、吉浜織恵)

