智弁学園、桜井を圧倒 3年ぶり16回目の甲子園 奈良
2011年7月28日0時53分
優勝して抱き合って喜ぶ智辯学園の選手=27日午後、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアム、矢木隆晴撮影
公立校として11年ぶりの優勝を狙う桜井と、3年ぶりの甲子園出場をめざす智弁学園――。27日の決勝は、智弁学園が3本塁打を含む10安打の猛攻で桜井を破って参加42校のトップに立ち、16回目の甲子園出場を決めた。桜井も一時は智弁学園からリードを奪うなど善戦し、6500人の観衆から盛大な拍手が送られた。
■主戦、昨夏決勝の悔しさ胸に…
(智弁学園8―3桜井)
智弁学園の先発はエース青山大紀君(2年)。天理に大敗した昨年の決勝でも終盤登板したが、相手の勢いを止められなかった。その悔しい思いを胸に決勝を迎えたが、3回、力みから2四球を出すなど乱れ、2失点。逆転を許した。「力を抜こう」。自分に言い聞かせ、4回から変化球主体に切り替えた。以降8回まで、1人の走者も許さない完璧な投球。9回、2者連続四死球などで1死一、三塁から内野ゴロで1点をかえされたが、落ち着いて後続を打ち取った。打撃でも3回に自ら逆転の2点本塁打を放ち、主軸として貢献。「投打両方で活躍したい」と甲子園を見据えた。
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「背筋を伸ばしてコンパクトに振れ」
4回の打席に向かう前、8番の山口悠希君(2年)は小坂将商(まさあき)監督に声をかけられた。これまでの出場は2回戦の守備1イニングのみ。前日に先発を言い渡され、気合が入った。監督の指示を胸に打席に立った。内角に甘く入った球を鋭く振り抜くと、打球は左翼スタンドに吸い込まれた。公式戦初の本塁打は貴重な追加点となった。「決勝で打ててうれしかった」。笑顔がはじけた。7回、5番の中道勝士(かつし)君(2年)は、4番の大西佑季(ゆうき)君(3年)の適時三塁打を見て燃えた。「大西先輩が打った。自分も続こう」内角低めの変化球に合わせ、自身今大会3本目の本塁打を右翼スタンドに豪快にたたき込んだ。「青山はエースとして注目される中でも頑張っていた。バッティングで助けることができて良かった」。試合後、バッテリーを組む同級生エースを気づかった。今大会は5試合で計11打点。甲子園でも主軸としてチームを引っ張るつもりだ。(根津弥)

試合終了後、智弁学園の住谷将来主将と健闘をたたえ合う小畑友希主将(右)=佐藤薬品スタジアム
■貫いた「野球道」 桜井・小畑友希主将
34年ぶりの決勝進出となった桜井。しかし、小畑友希(ゆうき)主将(3年)の口からは、1度も「勝ちたい」と言う言葉は出なかった。森島伸晃監督が指導で心がけているのは「野球道」だという。勝つことを目的とする野球はだまし合いに陥り、相手のミスを期待してしまう。一方、野球道のモットーは「お互いの全力をぶつけあうこと」だ。3回2死満塁、森星矢君(3年)が勝ち越しの適時打を放った。大きな声援と吹奏楽部の音楽が流れる中、小畑君はベンチの中で冷静に試合を見つめた。「『やった』っていう気持ちはあったけど、言葉や態度には出さなかった。ガッツポーズをしたり、喜びを爆発させたりすると、その分気持ちが緩む。緩んだ気持ちで守備に入るのは全力プレーではない。相手に失礼だ」3回裏、逆転の本塁打を浴びた。小畑君は三塁の守備位置から、「ナイスバッティング」と小さく拍手を送った。相手の好プレーに拍手を送るのも「野球道」と考えている。こうした振る舞いについて入部当初、「勝つ気はないんかな」と変に思った。しかし、2年半で野球道の意味が徐々にわかってきたという。「相手がいるから野球ができる。相手と一緒に良い試合を作っていきたい」8回表の打席、森島監督に背中を押された。「思いっきりいってこい」。結果は三塁ゴロになったが、一塁まで全力で駆け抜けた。「智弁学園はすごいチームだった」。試合後、目を真っ赤にした小畑君は相手校への称賛を惜しまなかった。(伊藤あかり)

