<世界水泳>入江陵介が銅メダルを獲得 男子百メートル背
(毎日新聞 - 07月26日 20:40)

男子百メートル背泳ぎ決勝で銅メダルを獲得した入江=中国・上海のオリエンタル・スポーツセンターで2011年7月26日、森田剛史撮影
【上海・芳賀竜也】第11日の26日、当地のオリエンタル・スポーツセンターで行われ、男子百メートル背泳ぎ決勝は、入江陵介(イトマンSS)が52秒98をマークし、今大会の日本勢で第1号のメダルとなる銅メダルを獲得した。カミーユ・ラクール(フランス)とジェレミー・ストラビウス(同)が52秒76で同着優勝した。女子百メートル背泳ぎ決勝は、寺川綾(ミズノ)が59秒35で5位にとどまり、メダルには届かなかった。趙菁(中国)が59秒05で優勝した。男子二百メートル自由形決勝はライアン・ロクテ(米国)が1分44秒44で制し、北京五輪8冠のマイケル・フェルプス(同)は2位だった。
男子二百メートルバタフライ準決勝は、予選5位の松田丈志(コスモス薬品)が1分54秒30をマークし、全体のトップで決勝に進出した。女子二百メートル自由形準決勝は、予選16位の上田春佳(キッコーマン)が1分58秒28の14位で決勝に進めなかった。
水球男子の日本は、9~12位決定予備戦でオーストラリアに9-15で敗れ、28日の11、12位決定戦でルーマニアと対戦する。
○…男子二百メートルバタフライを今大会の最重点種目に置く松田は準決勝で、北京五輪8冠の「怪物」マイケル・フェルプス(米国)を破ってトップ通過。「ローマの準決勝でも一度勝っています」と、胸を張って答えた。前回ローマ大会の同種目準決勝でも、松田がフェルプスを引き離した。しかし、決勝ではフェルプスが金メダル。松田は3位に沈んだ。1位通過の選手は中央のコースで泳ぐが、「それも楽しんで、いいレースがしたい」と必勝を誓った。
○…女子二百メートル自由形予選は上田、伊藤が1分58秒74の同着でスイムオフに持ち込まれた。約1時間後に行われたレースでは、上田が1分58秒19、伊藤が1分58秒55と、ともにタイムを上げた。「最初から出していたら、2人とも残っていたのにね」と上田。レース前、「どちらが勝っても握手しようね」と約束したという。しかし、上田はその後の準決勝で敗退。「最初の50メートルはうまく泳げたが……」と、壁の高さを実感したようだった。
【世界水泳】北島康介、惨敗の真相。ライバルの出現で勝負は新たな次元へ
(スポルティーバ - 07月26日 18:10)

7月25日の世界水泳選手権男子100m平泳ぎ決勝。北島康介は「今日はもう、飛び込んだところから相手にされていなかった。彼は何か、別のところで勝負しているような感じでしたから」と、自らの完敗を認めた。「彼」というのは、北京五輪銀メダリストのアレキサンダー・ダーレオーエン(ノルウェー)だ。北島を指導していた平井伯昌コーチの門を叩いたこともある選手である。平井も「彼は才能がある。北京の後は康介が競技を続けると思っていなかったから、次の五輪で金メダルを獲るのはダーレオーエンだと思っていたんです」と高く評価する。そのダーレオーエンが、決勝で驚異的な泳ぎを見せた。前半の50mは異次元ともいえる27秒20で入り、後半の50mも31秒51。優勝記録の58秒71は08年北京五輪の北島のタイムを0秒20も上回るもので、禁止となった高速水着以外の水着で、初めて記録された58秒台だった。
北島は「僕が27秒20で入るなんて無理。来年も、もし27秒台前半で入るような勝負になれば、正直厳しいと思う」と言い、25mからのダーレオーエンの強烈な加速で泳ぎを乱されて、「心の部分でちょっと余裕がなかった。ああやってバーンといかれると、自分が思い描いていたストーリーと違ってしまって、後半は泳ぎが小さくなってしまった。自分が本来持っている力すら出させてもらえなかった」と呆れるほどだった。 結局59秒3~4では泳げるだろうという目論見を見事に打ち砕かれ、1分00秒03で表彰台にも上れない4位と惨敗してしまったのだ。「北京五輪の頃は、最初の50mを27秒5~7で入るとみんなオーバーペース気味になって後半落ちていたんです。だからちょっと次元が変わったなという感じがしますね」と平井コーチは言う。04年アテネ五輪で2冠を獲得した後、北島も前半を27秒台で入るレースを試していた。いずれはそれが必要不可欠になる時代も来ると考えていたからだ。だが、北京五輪で北島は、前半を28秒03で入り、後半も30秒88でカバーして58秒91で泳いだ。ストローク数も前半は16と少なく、水の抵抗をいかに軽減して泳ぐかというスタイルの完成型を示したといえる。だがライバルたちはその北島を超えるスタイルを模索したのだ。そのひとつがダーレオーエンの今回の泳ぎでもあった。「技術で負けたとは言いたくないんだけどね。やっぱりその辺はまだ負けたとは認めたくはないけど、彼は力もあるし、技術の面でも3年前とは比べ物にならないくらい上達しているのは確かですね」と北島は言う。そこには、彼が4月の代表選考会で左脚の内転筋を肉離れし、世界選手権までのスケジールが狂ってしまったという現実がある。結局は3週間ほどしか追い込めず、よくて59秒前半という状態にしか仕上げられなかったからだ。その影響か、準決勝までのレースをみていても、彼にはいつものようなギラギラするものがなかった。
平井も「体や泳ぎから発するパワーが感じられなかった」と言い、こう続ける。
「今回は泳ぎの問題というより、根本的なトレーニングの部分に問題があったと思うんです。ケガをした後で本拠地のアメリカへ戻らず、日本で治療していたということが影響した。本心では、あの故障からよく頑張って戻ってきてくれたと思うけど、ダーレオーエンも去年の10月に尻を骨折して4カ月泳げない時期があった。だからその後のアプローチの仕方に問題があったと考えなければいけない」 その部分さえ完璧にできれば、北島には後半を30秒台でカバーできるという力はある。来年の勝負が58秒5台になっても、前半を27秒6台で入ればいいという計算になる。「アレキサンダーはやさしいから僕のことも気をつかって色々言うだろうけど、たぶん相手にはしていないし、彼には誰も適わないと思いますね。だから、来年勝負をかけるとしたら、彼の心の中に、自分のことを少しでも意識させるのが必要になってくると思う」(北島)
それはかなり厳しい戦いであり、相当の覚悟を持って臨まなければいけないものだろう。だが、そんな逆境に置かれた時にこそ強さを発揮するのが、北島康介の持ち味でもある。ロンドン五輪ヘ向けて何をしなければいけないかという課題がハッキリ見えたことこそ、この惨敗がもたらせてくれた貴重は収穫だったといえる。
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi