〈兵庫:秘伝公開(4)三田松聖 眼球運動〉球の縫い目 見えた
2011年7月7日13時16分
$とっちゃんのブログ

素早い眼球運動で上下に構えた指を交互に見つめる=三田市の三田松聖高校グラウンド
 ある時は矢のように、ある時は変化しながらストライクゾーンを射抜く白球。その姿を確実にとらえる「眼」の持ち主でなければ、好打者にはなれない。
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 今年4月、丹波市の春日スタジアムであった県春季高校野球丹有地区大会2回戦。打順を待つ三田松聖(三田市)の選手たちが、次打者席で奇妙な儀式を繰り返していた。両手の人さし指を顔の両横に立て、「右、左、右」と目玉を動かしながら交互に凝視。続いて顔の上下に指を構えて「上、下、上」。さらに、指を顔の手前と奥に立て、焦点距離を変えて交互に見つめる。対戦相手は昨秋の地区大会で大敗を喫したチーム。だが、「儀式」の効果を信じて疑わない選手たちは初回から安打を連発した。「ボールの縫い目が見えた。その回転で直球とわかった」。そう振り返るのは、適時打を放った3年の藤原世始基(よしき)君。チームはこの試合、15安打を浴びせ、9―4の大勝で雪辱した。
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 「儀式」の正体は、眼球を動かす筋肉を活性化させ、動体視力を向上させるトレーニング。1月に導入した原智徳監督(34)は「短期間で予想以上の効果がありました」と驚く。同校野球部は2004年創部。06年から出場し始めた夏の兵庫大会での勝ち星は07年の1回だけで、あとは初戦敗退。春や秋の大会も常に地区大会で敗れ、昨年まで県大会に出たことがなかった。壁を破りたいと頭を悩ませていた監督が目をつけたのが、テレビなどで見聞きしていた動体視力トレ。ノウハウを知る卓球部監督に話を聞いたり、本を読んだりしながら、野球に合った練習メニューを考えた。図形上に点在する数字を目で追う訓練、教科書を使った速読、指を使った眼球運動……。従来と一風変わったメニューに興味を持った部員たちは、通学電車や自宅でも、人目をはばからずに目玉を動かし続けた。監督が効果を実感し始めたのは、3月の練習試合あたりからだ。「以前なら簡単に三振していた子が、2ストライクまで追い込まれても、ファウルで延々粘る。それで相手の失投を誘うケースが増えてきた」そして4月の地区大会。部員らは毎試合、球場に教科書を持参し、直前まで速読訓練。15安打で初戦を飾ったチームは、そのまま3連勝して県大会へ進み、さらに2連勝して8強入りを果たした。
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 「手元に来る球を、顔を動かさずに目だけで追えるようになった」「1割を切っていた打率が3割に乗った」。部員たちからはそんな声が聞かれる。原監督は「よそがやってないことをやっている、という心理的効果も大きいと思う。速読のスピードがあがったといった成功体験が、プラスに働いているのでは」と話している。(宮武努)
■心得
一、練習中だけじゃなく、暇を見つけてどこでもやってみる
一、試合の直前、打席の直前にやってみる
一、トレーニングの効果を信じ抜く
■アンケートから 速読やパソコン活用
 ある有名選手は少年時代から、車に乗ったら対向車のナンバープレートを読み取りながら動体視力を鍛えた――。こんな逸話が語られるほど、野球選手にとって目の力は重要だ。県内でも多くのチームが動体視力の強化に知恵を絞っている。
甲南(芦屋市)や篠山産(篠山市)は三田松聖と同じく、練習前に両手の指を交互に見つめる眼球運動を実践している。甲南の楢崎大貴主将は「球を見極められるようになり、バントの成功率も上がった」。
 速読に力を注ぐのは明石高専(明石市)。視野を広く保ち、視覚情報の処理能力を向上させる目的で、部員たちに専門家の速読講習を受講させ、毎日5分程度の訓練を続けている。
 加古川東(加古川市)では、冬場に2人1組で1メートルほどの距離からピンポン球を投げてもらい、目を離さずによける練習をしている。
 立体映像の球体を目で追いながら動体視力を鍛えるパソコンソフトも開発されている。神戸弘陵(神戸市)は2年ほど前にソフトを導入し、雨の日などに部員がパソコン画面に向かう。ただ、「まだ効果はわからない」(石原康司監督)そうだ。
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