カフェの水槽立ち上げにご協力させて頂いた際に、水槽にはハイポ以外に何も入れないようにお願いしていることを述べましたが、これはソイルで立ち上げた初期の話で、水草には栄養分が必要になってきます。
水草用の肥料(栄養剤)として、いろいろな商品が販売されていますが、これも日本では成分が公開されていません。水草水槽では魚の餌から窒素、リン酸は供給されるが、カリウムは不足するということで、主としてカリウムを補給する必要があります。園芸用の肥料には窒素、リン酸が多量に含まれているので栄養過多になりコケが生えるわけです。私が主に使っているのはテトラのイニシャルスティックとクリプトでした。パソコン通信時代お世話になったNifty Serveのアクアリウムフォーラム(FAQUA、FMIZUBE)の水草部屋ではよく肥料の話題になりました。液肥のフローラプライドはコケが生えやすいという評価が高かったので、成分がわからないということもあり使用を控えていました。A社のブライ○ィKは炭酸カリウムだとかいう話もあり、炭酸カリウム溶液を使ったり、アルカリ性にするのがいやで園芸用の硫酸カリウムを水溶液にして使ったりしていました。鉄分の補給にメネデールも使用しています。微量成分にはマルチケーミンが良いというような話もありましたが、あまりメジャーな商品ではないので使ったことがありません。
コケ防止剤では海外の商品の成分が判明しましたので、肥料についても調べてみました。テトラ社のフローラプライドの内容物は下記のようです。
成分: 硫酸カリウム, EDTA(エチレンジアミン4酢酸), 塩化鉄, 水酸化ナトリウム, DPTA(ジエチレントリアミン5酢酸), ヘプタモリブデン酸アンモニウム
保証値: 溶解性カリウム (K2O) 3.00%、 鉄(Fe) 0.19%、 モリブデン (Mo) 0.0005%
カリウムが主成分で鉄やモリブデンが微量に配合。これを溶かすのに窒素を含むキレート剤が使われていますが、問題となるような窒素量ではないかと思われます。この組成をみてからは、メネデール添加をやめて、テトラフローラプライドを毎日数滴入れるようにしていますが、特にコケが増えるでもなく好調をキープできています。
しかし、メーカーの説明にあるような添加量(水10Lあたり5mL)を入れると、Kの量は5000mg×0.03/10L=15mg/Lの濃度になります。農作物の水耕栽培の培養液で適切なカリウム濃度を調べますと、いちごで3mg/Lですので5倍も濃いですね。
これでは一気に藻類が生えてきてもしかたがありません。カリウムが不足している水槽ではリービッヒの最少律でリンや窒素が消費されずにたまっていると推測されます。ここにカリウムを加えるとすべての栄養分が過剰になってしまい、余った分は藻類の栄養になってしまうわけです。
栄養剤を入れる際は、少量から様子をみながら徐々に増やすことが鉄則です。
テトラクリプトの組成は独)テトラ社のHPを参照しました。
カリウム(K2Oとして):12%、水溶性ホウ素:0.8%、水溶性EDTAキレート鉄:0.9%、水溶性EDTAキレートマンガン:0.3%と記載されています。フローラプライドにホウ素とマンガンが強化されている感じでしょうか。ドイツ語版の説明書には、これ以外に0.005%のEDTAキレートコバルト、0.303%のEDTAキレートモリブデンが入っているように書かれています。
1錠で0.8gを40Lあたり月1回ですので、カリウム濃度は800mg×0.12/40L=2.4mg/Lです。私も使用していますが、90cm水槽で 1回に1個または半分しか入れていません。フローラプライドと組み合わせるなら、KやFeはかぶるのでもっと減らしてもよいかもしれません。
トロピカの肥料の組成についても情報があったので載せておきます。
成分(%) | 茶液 | 緑液 |
窒素 | 0 | 1.34 |
リン | 0 | 0.1 |
カリウム | 0.8 | 1.03 |
マグネシウム | 0.39 | 0.39 |
硫黄 | 0.91 | 0.91 |
亜鉛 | 0.002 | 0.002 |
モリブデン | 0.002 | 0.002 |
ホウ素 | 0.004 | 0.004 |
鉄 | 0.069 | 0.069 |
銅 | 0.006 | 0.006 |
マンガン | 0.039 | 0.039 |
トロピカでは緑液の用法として毎週50Lあたり6mLの使用を推奨しています。
カリウム濃度にして6000mg×0.01/50L=1.2mg/Lです。テトラフローラプライドの使い方の1/10以下です。この量は感覚的に納得のいく量ですね。窒素、リンの入っていない茶液が良さそうな気がします。