一体私はなんてところに来てしまったのだろうか……




どこまでも、高く果てしなく続くコインロッカーが並ぶ銭湯の脱衣所に呆然と立ち尽くしていた




何千何万とあるだろう、その一つ一つのロッカーは殆ど物が入らないほど小さくて、
そこらじゅうの籠に脱がれた服が積まれている





目の前の景色にどうしていいのか分からなかったが、後悔していた



あぁ、お風呂が付いてる家に住みたかった
もっと頑張っておけばよかった……と

……ん?何を頑張る…?

いゃいやいや!……住んでたすんでた!……お風呂のついた家に住んでた!………はず⁈
あれ?アレあれあれ?住んでたっけ⁈ 



記憶喪失のように混乱しながらも、とにかく私は銭湯に来ているんだからお風呂に入りにきたのだ…。



とりあえずロッカーに……

なにをロッカーに入れるんだ?
入れるものなど何一つ持ってない…



そう考えてる間、目の前のロッカーが瞬時に入れ替わったり、突如真横に増えたりしている。
まるでマトリックスの世界のようだ…



服も脱いだのかどうか分からないまま浴場の方へ行く




いつの間にか膝くらいまでお湯の中にいる




広かった……

ここは山の上なのか、高原なのか

見渡せる限りどこまでも半露天風呂や露天風呂が広がっていた






唖然と突っ立っていると、お風呂の中にある大きな番台の上からお婆ちゃんが声をかけてきた


「あんたここ来たの初めてやね〜」


頷くと一人のお婆ちゃんがスカートを捲し上げながらジャボジャボと湯の中に入ってきて、


「ここに来たら皆最初に温泉の湯を飲むよ。ついておいで」



お婆ちゃんの後に続いて内風呂のような半露天風呂の中にある小さな噴水の所に行った
お湯がコンコンと湧いている



どうやら近くにお爺さん達が入っているようだが、
湯煙のせいなのか見えない。
誰も見えないけど、気配はそこかしこにある…。

きっと私の姿もこの人達には見えていないだろう…




景色は遠くまでクリアに見渡せるのに
不思議なところだった



とにかく私はいつまでも呆然としていた…













どこかへ迷い込んだような…
そんな夢だった