今日で、この土地ともお別れだな
最後に、寄っていくかな…

こんばんは

いらっしゃい
今日は、早いのね
はい、どーぞ

私は、初めて来た時に、女将に手渡された、このおしぼりの花の匂いが気に入り、疲れた時や、何かナーバスになると、この小さな居酒屋を訪れる様になった。

口下手な私を気遣って、いつも端に座らせてくれるのも、女将の気遣いであることに感謝している

まだ、誰も客が入っていなかったので、女将に話をする事にした

実は、今日で暫くこの地には戻らないんだ
最後に挨拶と思い来たんです

女将は、ビックリした様に、振り返った

いつも喋らない私が喋ったからなのか、唐突な言動だったからなのか、女将の言葉を聞く前に頭を色々な物が過った

女将からの言葉は、良かったね!!
家族待っているでしょ

だった…

一番最初に来た時の、歓迎会での話を聞いて覚えていたのだ…
三年も前の話なのに…

私からの会話は、続いた

家族の話し、本社の話し、飼っている犬の話までも…
酔ってもいないのに、私らしくない…

女将の一言で、私は黙ってしまった

大丈夫よ
皆、貴方を待ってるわよ!!

話の途中から、気付いていたのだろう不安な私の気持ちを

任務を果たして、満たされた気持ちと裏腹に、難しい年頃の娘、本社に戻り定年までの仕事、現場を離れる寂しさ
不安なのだ…
また、家族と共に生活する事に、本社に戻りサラリーマンをする事に…

うつろいがちで顔を上げると、女将のニッコリした顔が、女房に見えた

早く、帰ろうと気持ちが落ち着いた

そして、最後のいっぷくをつけようとしたときに、女将がつけてくれた

赤い使い捨てライターを渡され、電話番号入っているから、近くに来たら電話ちょうだい
明かり付けて待ってるからね

旨い煙草になった

明日のいま頃は、東京だな…