離陸時は、生憎の雨だった。


機体は分厚い雲の中へ。


これじゃあ景色は綺麗に見えないだろう。


少しがっかり。



しかし、雲を突き抜けた時


窓から眩しい光が射した。





なんて綺麗な夕日だろうか。


雲の下は雨でも


雲の上は晴れていてこんなに綺麗なんだ。




目の前が雨でも、それは雲の下の話。


見えないどっかで晴れてたりするもんなのかもしれない。




それは日常にも通底するのかもと思ったら


なんだか視野が拡大したような気持ちになって


あらためてひとり旅に出て良かったと思った。



このエモーショナルな光景と感情を


絶対に忘れないだろう。






飛行機は30分遅延して出発したので


そのぶん、ぶっ飛ばしたのだろうか。


55分のフライトで着いた。




早い。


夕飯の支度するくらいの時間で北海道から帰って来れちゃうなんて。



アクセス鉄道に乗り仙台駅へ。




おぉ〜帰ってきた感。



ペデストリアンデッキを降りて市営バスに乗った。


彼さんから帰宅を知らせるLINEがきた。


もしかして仕事帰りの彼さんとバス一緒になるかなぁなんて思ったけど一足遅かった。




いつものバス停で降車。


マンションはもうすぐそこ。





彼さん。


いつも貴方に手を引いてもらって歩く女は


ひとりで知らない街を旅してきました。


小さな不安をひとつひとつクリアする度に


小さな自信を得て帰ってきました。


一時は地下鉄も乗れなくなってしまったあの頃は完全に払拭してきたよ。



言いたい事、伝えたい事がわーっといっぱいでてきた。


でもそんな時ほど言葉は出ないもんで…




玄関のドアを開けると


優しく微笑む彼さんが出迎えてくれた。



「おかえりなさい。」


「ただいま。」





おしまい。