今日はキリル・ゲルシュタインさんのピアノリサイタルを武蔵野市民文化会館にて聴いてきました。


ゲルシュタインさんのアノは不思議なピアノ。
左右の使い分けや、シンコペーション等、たぶんジャズ的要素があるのだと思う。
低音と高音で違った音質を同時に弾き分けるので、多層的に面白く聴ける部分がある反面、和声的響きは少ない感じ。
よりリズムを優先した音楽にも聴こえました。
うまく言えませんが、響きを感じさせる前に、音切れ良く次の音へ進むような音楽と言えばよいでしょうか。
ですから、バッハは個性的で面白い。
一方、ブラームスはブラームスに聴こえない。聴きながら何に近い音楽と言えばよいか考えましたが、思い浮かびませんでした。
ドビュッシーの前奏曲は、分散和音を多様した曲は面白いけど、和音による響きを追求した部分はドビュッシーの美しさをあまり感じませんでした。
ショパンは少し粗めだったかも。
ゲルシュタインさんの音色は多様で、特に弱音は美しいし、柔らかな音は魅力的です。
一方、強音部分は、個人的には強打し過ぎにも聴こえました。
このブログで前から書いてますが、男性ピアニストは現代のコンサートグランドをMaxで強打すると、音量が出過ぎる場合が多い気がします。(ホールや席の位置にもよりますし、本当に個人的な意見です)

かつてウィルヘルム・ケンプさんは、ベートーヴェンを弾く際にff以上は弾かないと言っていたような気がします(かなり昔の記憶ですから曖昧ですが)。
当時はピンとこなかったけど、今はその意味が少しだけ理解できる部分があります。
これも、主観的な好みの問題ではあります。

アンコールはバッハ=ブゾーニ。
切れのよい速弾き。

ゲルシュタインさんは、かなり癖はありますが、音色多彩ですから、好みが合えば素敵なピアニストだと思います。
少なくともロシア出身には聴こえませんでした。似ているピアニストは、あまりいないかもしれません。

楽しい演奏会に感謝です。