さて、大昔はトレーニングと言えば「筋力トレーニング」ぐらいでしたが、最近では「ムーブメントトレーニング」「ファンクショナルトレーニング」「体幹トレーニング」「プライオメトリックトレーニング」「武道トレーニング」など、様々なトレーニングがあります。

それに合わせて「ピラティス」「ヨガ」「エアロビクス」「ズンバ」「ボディーワーク」など加えると一般の人は何をしたら良いのか?混乱して分からなくなるんじゃないでしょうか?
また、このトレーニングの細分化は今後も進んでいくと思いますので、私は業界として何かしら対策をした方が良いと思ってますが…皆さんはどう思っているのでしょうか?

「何が悪いの?選択肢が多い事は良いじゃない」と考える人もいるでしょうね。
しかし、本当にそう思いますか?


分かりやすい例を出すなら、全く身体の柔軟性が無い人が「ヨガ」をするとどうなりますか?
身体を壊しますよね?


少し難しい例を出すと
アニマルムーブメントなどは基本的な脊柱の運動連鎖が出てない人がやるとハードルがかなり高いと思います。
上手く実施出来ないだけでなく、身体を壊す可能性もありますよね?


では、運動連鎖を出そうと思って、脊柱の運動連鎖を引き出す「ファンクショナルトレーニング」を行っても、基礎的な「体幹」のスタビリティが無いと運動連鎖が体幹部分で破綻しますからエクササイズ効果が出にくいですよね?

そんな感じでエクササイズを効率的に行うには、その人にそもそも前提能力がある事が重要になります。
より土台に近い前提能力によって、効率的に実施出来るエクササイズの上限は決まってくると思います。

こういう考えの事を「パフォーマンスピラミッド」と言います。


私は思うのですが、トレーナーはもっと一般の人にも「パフォーマンスピラミッド」の概念を啓蒙すべきに思います。

そうしないと、何を判断基準に自分に合ったトレーニングを選べばよいのか?一般の人は分かりませんから、結局は運動指導者の「アテンションビジネス」によるパイの取り合いに巻き込まれるだけです。

私のクライアントでもぎっくり腰を過去に経験していて、脊柱のインナーユニットが痛み経験で「機能不全」に陥ってる人がいて、全く脊柱の動きが出てないのに通っているジムのイントラに勧められて「アニマルムーブメント」みたいな事をやっている人がいます。

当然、いくら頑張っても全く上達しませんね。
その人はイントラの知り合いが多いものですから、様々なとレーニングをあれや、これやと勧められて、人付き合いが良いから全部チャレンジして、どれもこれも上達しないから…ストレスばかり溜まっています。

選択の判断基準が無い人間に、選択肢がたくさんある事がどれだけ地獄でしょうか?
例えば、たくさんのテレビがあるショールームで、テレビのスペックが全く分からない状態だったら選べますか?

「パフォーマンスピラミッド」の概念をまず一般の人に理解してもらって、自分に足りない能力を補うトレーニングを選択してもらうようにしていかないと…

 

現実的に考えて、これからのトレーニングメソッドの乱立やアテンションビジネス化は止められないので

このままでは何をやっても効果が出ないで、流行りのエクササイズに振り回され逆に身体を壊してしまう人が大量発生してしまうと思います。

 

それは業界全体のイメージダウンにも繋がりかねないと懸念しています。

《普段運動してない人でも、一流アスリートでも、ベースメソッドを実施する事には恩恵はある》

実は人間の運動の一番の前提能力は「体性感覚」になりますよね。

そもそも私たちは「感覚」が無いと、いくら筋力があっても、柔軟性があっても、腕一つも動かせません。

実際に体制感覚を遮断する「アイソレーションタンク」という、本来はリラクゼーション目的に作られたタンクで五感を遮断するような装置があるのですが

ロボット工学や人間の意識に関する研究で有名な前野教授の実験によるとタンクに入ると徐々に身体イメージが消失していき、最終的にはほとんどの被験者は身体が動かなくなるそうです。

 

 

これは体性感覚から「補足運動野」「運動前野」で身体イメージが作られ、身体イメージを利用して「運動野」が身体の各部位の筋に指令を出すシステムの「身体イメージ」が上手く作れなくなるのが原因では?と前野教授は説明しています。

「かなしばり」なども同じ理論で説明出来ると言われていますね。
そんな人の運動に欠かせない体制感覚ですが刺激するには「ボディーワーク」が有効と言われています。

これは近年超一流のアスリートがボディーワークを実践している事実を理解するのに分かりやすい例だと思います。
つまり、パフォーマンスピラミッドの一番の土台を広げると「競技スキル」という頂点部分も高くなると言う事です。

当然ながら、普段全く運動をする習慣が無い人にも、高齢者のような低体力者にも土台を整えるボディーワークのような「ベースメソッド」は恩恵を与えます。

唯一無二のトレーニング方法はあり得ませんが、パフォーマンスピラミッドを理解するなら「ベースメソッド」は万人に進められるトレーニングだと言う事は分かると思います。

ボディーメイク系のトレー二ング指導でケガが多い事がテレビ報道などで取り上げられて、業界でも問題視する人も増えてきました。
指導者のスキルを高めないと!次のステージに高めないと!医療と同等の事が出来ないと!
と言ってるトレーナーの方々もいらっしゃいますが、それ以前に「パフォーマンスピラミッド」のような当たり前の事を啓蒙したり、ベースメソッドのような土台作りを行う重要性を説いた方が、私はよっぽどマシだと思っています。 

 

皆さんはいかが思いますか?