『寝返りの重要性と必要な要素③』 

 

皆さん、こんにちは! TC研究会 理学療法士の梅澤です。

今回もコラムに興味を持って頂き本当にありがとうございます。

今回のコラムの内容は『寝返り』について第3回目のお話させて頂こうと思います。

 

前回の1回目と2回目の内容では“姿勢制御について”と“寝返り時の姿勢”についてなどを簡単に述べさせて頂きました。

 

今回のコラムの内容を“寝返り”にした理由については、最初から何回も述べましたが、一般的に私たち人間の基本は“直立二足歩行”で、その直立二足歩行の基本が“寝返り”であるため そこをわかることが非常に重要であるからです。

 

例えばある研究では、寝返りのパターンと立位での保持パターンは比較的類似することが多く、寝返りの屈曲優位パターンは立位時体幹、膝、肘関節などを屈曲位で保持しやすく伸展優位パターンは立位時に背筋群の過緊張や膝関節のロッキング、頚部の伸展で保持するタイプが多いと報告しています。

 

但しどちらのパターンにしても質量中心の安定が重要であり、個別性に応じて屈筋群や伸筋群を活用して質量中心が不安定にならない戦略をとっています。

 

ちなみに 寝返りのパターンは多種多様であり、同じ人でも必ず同じパターンで行っているとは限らないということも覚えておいて頂ければと。

また、そう考えるとその点をうまく利用していくことでクライアントの身体を良い方向へ導くことも可能であるということもできると考えます。

そして寝返りパターンを大きく分類してしまうと先ほどの屈曲優位パターンと伸展優位パターンに分かれます。

 

また、寝返りには普遍的特性が存在はしており、それは『脊柱の回旋運動による肩甲帯と骨盤帯の間の回旋』すなわち『体軸内回旋』であるとされています。 これは身体に対する身体の立ち直り反応とも呼ばれます。

健常成人の寝返り動作では、安静臥位から身体各体節を筋活動によって連結させ、頭部もしくは、それ以外の部位から始まった回旋運動が途切れることなく全身に波及する。また、身体のすべての体節が身体の回転運動を阻害しないように運動するのが特徴である。

 

これらのことからも寝返りと直立二足歩行のつながりが見えてきましたかね?

実は私も物理的に(数値を用いて)ここを説明することができず、かなり感覚的な側面も出てしまうのですが、身体の使い方の基本は寝返りも直二足歩行ともに同様で重力に抗する方向が違うだけで大きなくくりで言うと“移動動作”であり、直立二足歩行ができる前にできるようになる動作が寝返りであるということです。

 

話しが少しそれますが、興味深いことに人間のように眠っているときに背臥位の姿勢をとっている動物は存在しないようです。そしてこれは真実であるかどうか定かではありませんが、背臥位で眠ってもいても大丈夫なように赤ちゃんは可愛い顔をしているとのことです。

またこれに関しては何も科学的根拠はわかりませんが、背臥位で危険なく眠れる環境を人間がつくれるようになったことによって、睡眠中に記憶など様々なことを統合できるようになり、脳が発達したとも言われています。

 

 

それでは話を戻しまして、先ほど寝返りの特性は“体軸内回旋”であると述べました。そして、寝返りするには体軸内回旋に必要な質量中心の安定が必要になります。

つまりは、その際にとても重要となる体幹機能、今回ここでは主となる“コアスタビリティ”について中心に述べていきます。

 

コアスタビリティというと、何となくイメージではただ体幹を固めることを想像してしまうこともあるかと思いますが、実はそうではないのです。

 

Kiblerらはコアスタビリティの定義として

「体幹・肩甲骨・骨盤、大腿部の一連の活動、つまり多関節運動連鎖であり、予測的にも反射的にも効率的に動ける安定性」と述べており、主要な役割として以下の3つを挙げています。

 

予測的な姿勢制御として、事前にプログラミングされた筋活動であり、連続的な筋の生成を予測する身体活動のサポート

➁相互的なモーメントを作り出し、各関節が適応できるよう力や荷重の生成の制御

③全身を介した力の生成のサポート

 

とあり、ただ体幹を固めるということからはかなりかけ離れたことを行っているということです。そのため私たちがクライアントに関わる時も多関節運動連鎖であることや予測的な姿勢制御を考慮した内容が重要となります。

 

 

そして、Pnjabiは、脊柱のコアスタビリティの必要条件として、ニューラルサブシステム、パッシブサブシステム、アクティブサブシステムの3つを挙げています。

これら3つの要素が組み合わさることで、予測的にも反射的にも脊柱が機能するとされています。

 

それではこの3つの機能を簡単に説明します。

 

<パッシブサブシステム>

脊椎、椎間板、靭帯、関節法などであり、運動への機能的な抵抗や張力の最終域を安定させます。また、感覚受容器を介してニューラルサブシステムに荷重情報や位置感覚を伝える役目も担います。

 

具体的には、骨梁構造によって腰椎を安定させています

 

<アクティブサブシステム>

筋、腱、筋膜などであり、安定性に加え感覚入力運動生成の役割があります。

横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋などが脊柱や体幹を安定させ、コルセットのような役割も果たしています。

 

<ニューラルサブシステム>

筋紡錘、ゴルジ腱器官および脊髄の靭帯からのフィードバックに基づき、筋出力を絶え間なく監視および調整する複雑なタスクを担っています。

 

姿勢の調整や身体への外部荷重に基づいて、十分な安定性を保証しながら目的とした関節運動を可能にします。

 

ニューラルサブシステムを介して安定性を確保する上で重要となる筋として腹横筋が挙げられます。

研究から、この腹横筋が主に腹腔内圧を上昇させ、腰椎圧迫への負荷を軽減させることや上肢や下肢の運動が起こる前に筋が活性化されていることなどが報告されていることは皆さんもご存知かと思います。

 

また、Hodgesは腹横筋のフィードフォワード機構を提唱しており、ニューラルサブシステムは姿勢調整または外乱に備え、以前経験した運動パターンからのフィードバックを利用して、腹横筋を予期的に調整していると。

 

 

以上がコアスタビリティの簡単な概要となります。

コアスタビリティについて少しイメージが変わりましたか。 思っている以上にこの機能の役割は広く重要であると感じて頂けましたか。

 

次回は寝返りとコアスタビリティについて更に詳しくお話させて頂こうと思います。

本日もコラムを読んで頂き本当にありがとうございました。

 

コラム執筆者紹介

梅澤拓未(うめざわたくみ)先生

理学療法士として、急性期病院・認知症専門病院・片麻痺リハビリ専門クリニックなどで13年勤務。

資格

理学療法士

呼吸療法認定士

認知症ケア専門士

介護支援専門員(ケアマネージャー)

福祉住環境コーディネーター2級

日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー