皆さん、こんにちは! 

TC研究会 理学療法士の梅澤です。

 

 前回はパーキンソン病の症状や診断・評価などについてお話させて頂きました。今回 2回目の内容としましては パーキンソン病の治療についてのお話をさせて頂こうと思います。

 

また、前回同様にコラムの内容としましては、病態生理から細かくというよりは 現在高齢化とともに増加の一途をたどるパーキンソン病に対して まずは大まかな情報を知って頂き いつでも この様な疾患を呈した方と関わる事があった時に対応できる知識を獲得して頂くことを目的に述べさせて頂こうと思います。 

 

そして 現在 60歳以上の100人に1人はパーキンソン病の可能性があるということなので、皆さんが関わる可能性もわりと高いのではないかとも思います。

 

 

現在の治療の種類としては、薬物治療が主で、場合によって外科的治療が選択されています。そして今後は再生医療に大きな期待がもたれています。

 

またその時の患者さんの状況に合わせて生活の維持や向上のためにリハビリが考慮されます。

 

治療の第一選択である薬物治療は、診断が出た時点から直ぐに開始されることが一般的です。 

 

少し話はそれますが、現状では患者さんがしっかりと自覚症状を感じることは運動障害などが出た時などが多いです。 

しかし実際にパーキンソン病になり始めているのはもっともっと前の可能性が非常に高く 非運動症状(自律神経症状)などは何年も前から出ていることも多くあります。 非運動症状としては便秘、嗅覚障害、レム睡眠行動障害などがあります。  

これは、前回もお話したパーキンソン病の原因となる α-シヌクレインというタンパク質(凝集したものがレビー小体)が体の様々な場所で影響を及ぼしているからだとも考えられています。

 

話を戻して薬物治療についてですが、ほぼほぼ確実に行われているのが、原因となっている 運動をつかさどる線条体への神経伝達物質であるドーパミンの不足を補うレボドパ(L-ドパ)という薬を投与することです。

ちなみにレボドパ(L-ドパ)とは、ドパミンの前駆物質で、微量ですが、もともと体の中にある物質ですので、効果も安全性も高いといえます。

この薬は1960年くらいに使用されるようになったとのことですが、1817年にパーキンソン病が発見されてから それまで殆ど良い治療方法がない中で とても効果的な治療方法が見つかったため、この発見は当時本当にすごいことだった様です。

 

この薬に関係する映画では 「レナードの朝」というロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズ が出演しているものがあり、このことからもその影響がすごいかが何となくうかがえます。

 

このレボドパ(L-ドパ)の問題点としては、最初の数年はかなり効果があり無動などの症状が改善されますが、服用し続けていると、飲んで少しの時間が経過すると薬の効果が弱まってきてしまします。

 

この様に効果が薄れると(オフになると)、体が動かなくなる、姿勢が前かがみになる、ふるえが出る、暗い気分になる等、治療前の状態に戻ってしまいます。これを「ウェアリング・オフ(現象)」といいます。 

その様になってくると 1日のうちで、薬が効いている時間(オン)と効いていない時間(オフ)を何度も繰り返すので、レボドパ(L-ドパ)の服用量や回数を調整します。

 

また、レボドパ(L-ドパ)は体を動かす働きをするドパミンを補充する薬のため、「ジスキネジア(不随意運動)」といって、手足や肩等がくねくね動く、口がもごもぐ動くなど、自分の意思と関係なく、体が勝手に動いてしまう症状が出現します。 5年以上薬を服用しているとかなりの確率で見られます。 

 

これらの症状はただの副作用というよりは、パーキンソン病が進行しており中脳黒質の状態などが障害されてきて より起こりやすくなっているということも理解して頂ければと思います。

 

薬物治療では基本的には、レボドパ(L-ドパ)を投薬しながら、この薬ほどの効果とはいかないが症状を緩和できる他の薬を併用したりすることがされています。

 

下の図に パーキンソン病診療ガイドライン2018 の診断からの流れが簡潔に書かれたものを載せさせて頂きますので、ご参照下さい。

 

 

 

次に外科的治療についてですが、有名なものに脳深部刺激療法(以下 DBS : Deep Brain Stimulation)というものがあります。 

このDBSは定位脳手術と言って、脳をフレームで固定した状態で施行されます。そしてこのDBSの原型となるような手術は、レボドパ(L-ドパ)が出る以前から行われていましたが、先ほどもお話この薬の効果があまりにも絶大であったため、一時期は行われなくなっておりました。 しかし、これも先ほど述べたようにレボドパ(L-ドパ)自体も持続して効果を出し続けることが難しいことがわかると、再びDBSにも脚光があびることになりました。

 

理由としては、これだけではなく基底核の病態生理の理解が進歩し、視床下核と淡蒼球内節がPDの運動症状へ重要な働きをしていることが明らかとなったことや脳神経外科治療そのもののがCTやMRI等の画像の進歩、微小電極を用いた神経生理学的マッピングの発展により、脳の特定部位の正確な破壊によって淡蒼球内節と視床下核の過活動は抑えられるという知見がDBSの道を再度開いたようです。

DBSの良い点としては、手術中に下の写真のように動きを確認しながら行えるためかなりの確立で高い効果が見込めるということです。

また、細かい手術法については他の資料を参照にして頂き、簡単なイメージを理解して頂ければと思います。 下の図の絵を参照して頂ければと思います。

 

 

このDBSは2000年4月に本邦でも保険適用が認められています。

また、効果はありますがリスクとしては手術中に脳に針を挿入するためその時に出血のリスクがあったり、数年に一度胸に埋め込んだ電池を交換しなければならないなどもあります。他にもやはり薬と同様に良い点もあれば悪い点もあるため医師としっかりと相談することが重要になります。

 

 

その他の外科治療として、最近出てきたもので「ふるえ」に対する保険診療として認められた外科治療として集束超音波治療(FUS)という方法があります。

この「集束超音波治療」は、最新の「切らない手術」で安全な方法として注目されています。超音波を用いるだけで、メスで切る、骨に穴を開けるといった手術操作が不要であり、「脳深部刺激療法」で用いるペースメーカー型の機械を埋め込む必要もありません。「集束超音波治療」は、頭を装置に固定した状態でMRI検査室に入り、脳の一部に超音波を集中させて、効果と安全性を確認しながら「ふるえ」を抑える、という画期的な治療法です。「切らない」方法であるために、従来の手術に比べ安心して治療に臨んでいただくことができます。

 

 

最後に再生医療ですが、2018年10月に第1例目の手術が行われています。その後7例実施とのことですが、この辺の詳細はまだしっかりと確認できていません。 

但し、この治療法は今までの治療が根治ではなかったのが根治により近い状態になるという点がとても素晴らしいところです。  今後に期待しないわけにはいきません。

そして今後数年後には、病気やケガなどに対しては再生医療が第一選択の治療法となることは間違いないでしょう。 そしてこの再生医療後には新たな運動教育が必要なことも簡単に予測がつくと思います。 その時には私たちのような運動などに関わるものの必要性も大きいものと考えます。

 

 

今回はパーキンソン病の簡単な治療方法について紹介させて頂きました。今後機会がありましたら、パーキンソン病のリハビリについてもお話させて頂ければと思います。

 

本日もコラムを読んで頂き、本当にありがとうございました。

 

コラム執筆者紹介

梅澤拓未(うめざわたくみ)先生

 

理学療法士として、急性期病院・認知症専門病院で13年勤務。

資格

理学療法士

呼吸療法認定士

認知症ケア専門士

介護支援専門員(ケアマネージャー)

福祉住環境コーディネーター2級

日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー