人の脊柱は矢状面において一連の相反する彎曲を持ち、静止立位では脊柱は自然な彎曲になる。

 

頸椎・腰椎部は前方に凸、後方に凹の彎曲を呈する。このアライメントを前彎と呼び、一般的に前彎の程度は腰部より頸部の方が少なくなっている。

 

胸椎・仙尾部では、対照的に後彎を呈する。後彎は前方で凹、後方に凸の彎曲を表す。

前面の凹は、胸腔・骨盤腔に入る臓器収容の為の空間を作る。

 

 

胎児の脊柱は、全長にわたり後彎を呈する。頸椎と腰椎の前彎は出生後に生じる。これは、運動発達と直立姿勢と関係する。

頸椎は、幼児が周囲を状況を観察し始める時期に、伸筋が頭部と頸部を引き起こす。

腰椎では、歩行に備え発達した股関節屈筋が腰椎を前方に引っ張ることで、前方に凸を作る。

 

脊柱の自然な彎曲は固定されておらず、動的であり、動作や姿勢によりその形を変化させる。

例えば、脊柱を伸展させた時は、頸椎と腰椎の前彎は増強し、胸椎の後彎は減少する。

逆に、脊柱を屈曲させた時は、頸椎と腰椎の前彎は減少、もしくは平坦にさせ、胸椎後彎を増強させる。

 

仙尾椎に関しては、彎曲は固定されており、前面では凹、後面では凸である。

 

 

矢状面においての脊柱の彎曲は体軸骨格の強さと、弾性力を提供している。前彎・後彎が交互に彎曲した脊柱はアーチのように働く。脊柱の強度と安定性は、大きな圧迫力を静的に支持できる能力というよりはむしろ、わずかに『しなる』能力である。