こんにちは、トータルコンディショニング研究会代表の奥川です

「心と身体は繋がっている」「心と身体は分ける事の出来ないもの」
という言葉を書籍や講習などでよく目に、耳にする機会は多いと思われます。

そのような事もあり身体の健康に携わる仕事を突き詰めていくなら、いずれは心の健康について考える事も避けては通れないと思っている人は多いのではないでしょうか?

しかし、同時に「なぜ、その様に言われているか?」を突き詰めて考える機会は少なく、ただ漠然と「そうなのだろう」と思っている人も多いのではないかと思います。

そこで、今回は改めて「心と身体の繋がり」について、私達身体の健康に係る仕事の立場から考察してみたいと思っております。

さて、心と身体の繋がりを一番実感しやすく、私達の間でも話題に上がりやすい例としては「感情」と「姿勢」の関係があるかと思います。

笑顔

一般的にポジティブな感情は身体を伸展させ、ネガティブな感情は身体を屈曲させる傾向があると言われています。

「喜びや共感、根源的信頼、勇気といった感情は、人の身体を真っすぐにし、胸郭を広げ、息を勢いよく流れさせる。しかし他の多くの感情は、屈曲姿勢を強め、重力と協力して屈曲の作用を強める」(綺麗な姿勢になるためのエクササイズ:Karin Albrecht)

また感情が姿勢を変化させるように、姿勢が感情の方向付けをする事もあると言われています。姿勢改善の講習会などでは「ネコ背でうつむきながら喜ぶ事は出来ない」などの例え話がよく使われますが、姿勢が感情を方向付ける事は誰もが経験則から実感している事です。

このような影響についての科学的な理論背景としては表情筋の緊張が感情を左右するという「顔面フィードバック仮説」や特定の姿勢が表す社会的意味を自己知覚し、その方向に感情が変化する「ノンバーバル行動の自己知覚」などの仮説があります。
しかし、どれもはっきりとした結論には至っていないのが現状です(参考資料 http://ci.nii.ac.jp/els/110000073386.pdf?id=ART0000417299&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no&ppv_type=0&lang_sw&no=1420974742&cp

また、姿勢は性格特性との関連も大きいと発表している研究者もいます。
研究によると不安感情が特性的に強い人は閉眼時の重心動揺量が大きい事が実験から示唆されるようです。

つまり、性格的に落ち着きのある人の方が姿勢も安定しやすいのではないか?という事が推測されます。(参考資料 http://ci.nii.ac.jp/els/110000471430.pdf?id=ART0000853744&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no&ppv_type=0&lang_sw&no=1420982380&cp

様々な研究結果から心と身体には何らかの繋がりがある事が科学的にも証明されていますが、どれも仮説の域を出ていないというのが現状の様です。

しかし、このような実験の結果や経験則から、身体に携わる職業と言え突き詰めていくと心の事も配慮していかなくてはと実感している人は多いと思います。

例えば、姿勢改善を目的としたセッションでクライアントにネガティブな言葉掛けばかりしてしまうと、構造的に抜群のアプローチが出来ても十分な効果が出ない事もあるでしょう…そして、その逆にポジティブな言葉掛けや落ち着きのある環境づくりがセッション効果を促す事もあるでしょう。

姿勢改善などを職業とする人はもちろんのこと、不定愁訴改善、動作改善、リハビリテーション、etc…などのアプローチを行う上でも、心と体の繋がりはないがしろにしてはいけない問題だと思います。

加えて、私自身は昨今のストレス社会の事を考えると今後は益々その必要性が増すと考えています。ストレスから年々増加する自殺者、その自殺者の自殺の理由のダントツの第一位として「健康問題」が挙げられます。(健康産業の方は意外に思われるかもしれませんね)

また数ある健康問題の中でも「うつ病」「パニック障害」など心の病から自殺をする人が多数を占める現状からも(平成24年度版 自殺対策白書:内閣府)

今後は私達のような身体の健康に係る職業であっても、心の健康も配慮したアプローチといったものについても十分考えていかなくてはいけないのではないか?と思っています。

これは治療分野、健康増進の分野、美容の分野、に限らず、身体にアプローチする職業全般に当てはまると考えています。
というのも、それこそ身体と心は切り離せないものだからです。
フィジカルな部分だけ切り離し考えていく事は、ないがしろにされるメンタルな部分にとって何らかの不具合が出てしまっても仕方ないと考えるからです。



では、次回は少しメンタルな部分の健康と身体の関係について考察してみたいと思います。

メンタルな問題で何かと議論に上がる「トラウマ」についても、少し切り込んでいこうと思っています!

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