無事帰宅した。何よりの愉しみに取り掛かろう。

世は,師走らしい。室内温度は17℃。外は何度だったろう。戻ると部屋は15℃だった。0時半ごろ出て,時計は3時半を示していた。温かい時間を狙って出る寒い時期。出かける前に用意していたスマホと腕時計をそのまま忘れてしまったと気づくのはやっと自転車を走らせて数分経っていただろうか。陽がでていたせいか,寒さは感じない。風もなかった。帰路は,まわりはさむざむとしていた。小学生の下校時間と重なる。2時半から3時頃だろうか,と・・・。

12月なのだ。外は前より静かだった。「シーン」としていた。耳が遠くなったせいだろうか。周りに見えるものが建物があっても,人は見えず,畑があったも何も居ないかのように動きを停めているかのようにじっとして時間が止まったかのように何も聞こえない。何も聞こえない時間など今まであまりない。仕事をしていたときは何かしら音がしたものだ。何も聞こえなくなる不思議さ。「シーン」を味わう。乗っている自転車の音さえ聞こえない。前回は,風が木の葉を舞いらせ砂煙を上げていた。小さい白い虫のようなものを浮遊させていた。そういう動きが見られない,冬期の,別のステージなのだろう。まだ寒気が深まったいく序盤かな?厳寒はこれから?日がさらに短くなっている?春を感じた日もあったのに。日が伸びているのか,短くなっているのか,わからない混濁・・・意識の混濁・・・・。

いつも寄るスーパーで一休み。例のコーナーに買い物を終えて帰路につく前に腰を下ろす。何席も空いた安らぎのコーナーには年老いた男性がひとりぽつねんと腰を下ろしていた。私は片隅の離れた席で,持参の水ペットボトルを取りだし一口飲む。

「暮れだなあ。歳の暮れ・・・だあれもいない・・・・皆忙しい・・・・」とだれにいうでもなく口にすると,横切って買い物袋から商品を取り出し入れ替えている,若い?お婆さんが・・・

「(おたくは)暇なんですか」と,口にした。

後ろ向きで詰め替えている。目の前の机には酒パックのもっとも小さい紙パックが見える。

酒ならもっと安いのがありますよ。・・と思いつくまましゃべっていると・・・・

「(おたくは)酒を飲みなさるんですか」

「少し・・・・」  黙っていたその初老の女性は,忙しそうにしながらも答える。

「私は酒は一滴も飲みません。これは料理用なんです・・・」

「料理ですかあ! 料理はいいね・・・・冷たいものばっかりでは・・・チンするだけではね・・・キッチンで自分で好きなように 工夫して料理するのがずっといい・・・それはイイ…一滴も呑まないんですか。」

また勘違いしていた。それを詫びることなく…のん気に話して居る自分はアホだろう。

「お先に・・・」

「気を付けて・・・」

 

出ると,自転車置き場のところに・・・夕方の買い物か・・・「寒い・・」といったやってきた。皆冬物の防寒着を身に着けた人が目立つ。

「寒いですね・・・」と返した,知らない中年の女性。置いてあったカートを使って入っていった。あ,そこにもあったのか。手際がいい主婦。元気に送る日常風景か。

街路は,すでに暗い感じ。陽光が傾き,影が深まっていた。西日を浴びたアパートの棟壁だけが明るく輝いている。風が冷たい。路地は,寒い風の通り道でもある。北風か,向きは北西であった。攣(つ)った右足のペダルを強く踏む。左は浮腫んできていたなあ。(ずっと座ったままで読書をしていると血流が滞り…浮腫むのか)

心はさまよっている。秋は紅葉だったな・・・もみじの二番は,散った葉っぱが水に流されて「離れて寄って・・・水の上にも置く錦♪」のように。

 

住宅街の道路わき,庭先から「さざんか」らしき花が見えた・・・田舎に咲いて高く咲いていた「椿」をいつも思い出す。ツバキに似ているが,丈が短い「さざんか」 ♪「さざんかのや~ど~」を鼻歌しながら,お経・般若心経・真言を唱えながら進む~「我昔所造諸悪業皆由無始頓瞋癡~~」小路を,唱道しながらペダル踏む・・ゆっくりと,しっかりと。いざ,どう逝ったらいいのか,見当がつかない,見えない。

 

図書館では,知らないもう一つの出入口に目が行った。書籍を運んでいるのだと分るには,時間がいった。使われなくなったビルを倉庫代わりに使っているのか・・・・師走はそんな整理の時期でもあるな。最初に掛けた言葉は,「どうなっているの?」

一番先に目の合った,やさしそうなおじさんに話しかけた。(彼は,きっと退職したばかりの初老の男性か)

「解らない」と言って微笑んで答えてくれた。しばらく雑談。

「ココはいいですねえ。(中で働く初老の受付の男性に掛けた言葉と同じ。外から入ると,温かい図書館は,ホッとする。

・・・・新聞や雑誌なども観れるスペースが玄関口にある。そこで,くつろぐ年老いた男性がいつも何人か必ずいる。

「(自転車で途中見かけた)『青年集会所』の看板が・・なのに,集まってくるのは年寄り,それも決まって女性だ・・・」午後のひとときをワイワイ?こじんまりと?楽しんでいるのか,女性はいつもいつまでも元気に見える・・・。

「(この町は)変わりませんねえ。・・・」とその初老は言った・・・

まわりの建物などを見回すと,確かに見た目は変らない。

しかし,私は即答していた。

「いいえ,変わってますよ・・・・さびれて朽ちかけています・・」

(昔のまま,そしてシャッター通りと化したまま街の様子はさびれ・・そして全く発展から見過ごされて“同じだ”と,錯覚してきた,自分も若い時分は。でも,身体も建築物もみな老朽化していく・・・変るのだ)

「この図書館の建物は何年たちます? 40年?50年もたてば橋もトンネルも壊れます・・・例の山梨のトンネル事故も,その警鐘だった・・・来た当初1996年頃か・・・橋は石でできていた,そこに刻まれた年号は昭和55年とか,57年・・・うううう・・・昭和59年(1984)頃だ・・人生の始まり!!・と,去来する記憶を辿っている・・・」 老人の想念は膨らむ。   感謝合掌