俳優、香川照之(45)が27日、都内で会見し、来年6月の東京・新橋演舞場公演で九代目市川中車(ちゅうしゃ)を襲名することを発表した。三代目市川猿之助(71)と女優、浜木綿子(75)の長男として生まれたが、46歳にして歌舞伎俳優デビューする。両親の離婚により絶縁状態だった猿之助と、現在同居していることも報告。浜の応援があって実現したことに、香川は「お母さん、ありがとう」と涙を流して感謝した。

 映画、ドラマと映像分野で活躍中の香川が、ひのき舞台に立つ。

 「この船に乗らないわけにはいかない」

 会見には五代目市川團子(だんこ)を襲名し、ともに来年6月に歌舞伎俳優デビューする長男、政明くん(7)と出席。しっかり前を見据え、41年ぶりの復活となる名跡、中車を継ぐ決意を表明した。

 香川は猿之助と浜の長男として誕生したが、1歳2カ月のときに両親が離婚。浜に引き取られ、歌舞伎界とは無縁の俳優人生を送ってきた。

 猿之助とは絶縁状態が続いていたが、長男が誕生した2004年から、140年間途絶えることのない大名跡の重みを考えるようになり、「僕が生きていて、政明という長男がいて、『やらなくていいのか』と自分に問いてきた」と大きな決断に至った理由を説明した。今後、歌舞伎では「市川中車」、そのほかでは「香川照之」で活動予定。2つの名前を持つ歌舞伎俳優は戦後初という。

 会見では45年間無縁だった猿之助と、今春から3世代で同居していることも報告した。猿之助は00年に女優、藤間紫(享年85)と再婚するも09年に死別。03年11月に脳梗塞を患っており、「お弟子さんたちの運命も握っている父を誰がサポートしていくのか」と自ら歩み寄った。

 父親との生活で「ものすごく後頭部の生え際が似てることを発見した」と笑わせながらも、「何も言わなくても濃い血が流れているので」と親子の絆を確認した様子だ。

 会見の最後に猿之助も香川らに支えられながら登場。「隅から隅までずい~っと、お願いあげたてまつります~」と大声で口上を述べると、「浜さんありがとう。“恩讐の彼方”にありがとう」と感謝。

 隣で見守っていた香川も「母にもいろいろな思いがあると思いますが、僕のやろうとしていることに最大限のエールを送ってくれています」と語り、泣きながら「お母さん、ありがとう」と声を振り絞った。

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