文久3年3月、清河八郎の暗殺未遂があったとか…

 

この時の記事は「追記」にもありますように、「新選組顛末記」をベースにして書いたものです。

再三再四書いていることですが、「顛末記」の元々は新八っちゃんの晩年に小樽新聞に連載された、記者の聞き書きですね。

「物語的要素」が強く、読む分には楽しいのですが…

「史料」として使用する(すべて史実というのではない)のであれば、やはり 「浪士文久報国記事」です。

 

 

御老中板倉伊賀守殿、清川八郎暗殺いたせとの内意、取調役幷に芹沢鴨組一統え御達し有之程に手を廻しをり。

清川八郎、土洲邸内え参り其跡をつけ、四条辺りにて殺害いたさんと存する処、山岡鉄五郎、御朱印を持ち持居り清川の側に始終付きをり、夫故に殺害すること難相成残念…

   (浪士文久報国記事)

 

 

文中の「板倉伊賀守」は板倉勝静さん、当時は「周防守」でしたね。

山岡鉄五郎」は、もちろん鉄太郎(鉄舟)さんです。

板倉さんが内々の意向として清河暗殺を、取締役(鵜殿鳩翁)と芹沢組に命令したが、常に御朱印を持っている山岡さんがいたので、果たせなかったということ。

その直後に「浪士組」の東下が決定されたので、彼らは自分たちは残留したいと鵜殿さんに訴える。

鵜殿さんはその意を理解して、京都守護職・松平肥後守へこの旨を届け、京都残留の通達があったと書かれます。

つまりは清河暗殺と京都残留は別案件。

 

対して「永倉新八」や「新選組顛末記」では、会津の容保さまが浪士13名を預りとした時に、清河暗殺を指示したと書かれます。

つまり交換条件ですね。

そして

 

 

ある日八郎が山岡鉄太郎とただふたり、当時土洲侯の旅館にあてられた大仏寺へでかけることが芹沢の耳にはいった。そこで好機逸すべからずというので十三名は二手にわかれ、芹沢は新見、山南、平山、藤堂、野口、平間の六人とともに四条通り堀川に、近藤は土方、沖田、永倉、井上、原田の五人を同行して仏光寺通りの堀川にいずれも帰途を擁して目的をはたそうと待ち伏せる。・・・

   (新選組顛末記)

 

 

正式に彼らが「会津公御預り」の報を得るのは、勇さんの書簡によれば、12日深夜。

 (日野市観光協会制定の「新選組の日」が、3月13日なのはここからの由来? 12日夜に通達あって13日から… という解釈なのかな)

「浪士組」が、江戸に戻るために京を出立したのが、13日。

容保公が「預り」と引き換えに、清河暗殺を指示したというのは、いうまでもなく考えられません。

また、この待ち伏せの時の二手への別れ方。

芹沢・新見・山南・平山・藤堂・野口・平間

のグループ・・・

もうこれ以上書かずとも、作為的なのはおわかりですよね あせる

 

もちろん新八っちゃんに悪気があったわけではまったくなく

ただ、後世の「読み物」になっているものは、ものすごく気を付けなければならないという事。

講座では何度も申し上げていますが、「通説の根拠」になっているものの中には、「新選組顛末記」や「聞きがき新選組」をそのまま史実として扱ってしまっているものも多い。

司馬遼太郎さんの「血風録」や「燃えよ剣」は小説だとちゃんと区別しているのに…ショボーン

 

ちょっと話が逸れたので戻ります !

清河さんの命を狙っていたことは、事実です。

というのは、この約ひと月後に江戸麻布赤羽橋で佐々木只三郎さんたちに討ち取られてしまうのですが、そのことについて勇さんがお手紙の中に書いております。

 

 

清川八郎義者、芝赤羽根ニ而打果候趣伝承仕候。尤右清川八郎、村上俊五郎、石坂周造、木村久之丞、斉藤熊三郎、白井庄兵衛右六人ハ洛陽おゐて梟首可致と周施仕候処、折悪不加誅戮候。右之者儀ハ道中より拙者共違論御座候。

   (近藤勇書簡)

 

 

これは文久3年6月初め(推定)に書かれたもの。

宛先人は、 萩原多賀次郎・寺尾安次郎・蔭山新之丞・佐藤彦五郎・島崎勇三郎・安藤伝十郎・田中恒太郎・青柳勇五郎・萩原糺・小島鹿之助・萩原半蔵・宮川音五郎・中島次郎兵衛・粕谷新助・谷合弥七・速水庄三郎・筑紫正一郎・関田庄太郎さんの計17名。

よくよく読んでいると、京都の情勢やこれまであった出来事とか書かれていて面白いです。

その中に、清河さんが討ち果たされたということを聞き、もっとも京にいる時にも彼らを梟首しようと周旋していたと、さらりと書いておりますねぇ あせる

しかも清河さんだけではなく、6名も びっくり

自分たちとは江戸から京への道中にも、意見が合わなかったとも。

 

勇さんのお手紙、面白いんですよ、本当に。

やっぱり 「近藤勇書簡集」 が待たれます。

 

と、いうことで7年前の記事の補足でした。

 

 

   令和2年新夏(しんか)23日  汐海 珠里