幕末です
150年前の本日は、慶応3年1月4日。
この日新選組は、大隅守廣光さんに刀を注文しました
卯正月四日
一、刀 二尺五寸五分
一、中心 九寸五分
一、巾 壱寸事
一、中ぼうし 新セん組
一、そり 五分
一、直刃
(刀剣注文簿)
この大隅守廣光さん、11代会津兼定さんの門人です
この「注文簿」は、師である兼定さんへの注文の「取次帳」とか
実は兼定さん、慶応元年2月に、自ら願い出て会津に帰っていました。
京都にはいなかったのですよ
ですから京にいる廣光さんを通して、皆さん発注していたという事のようです
注文簿には、薩摩藩等の記録もあります。
新選組に関しては、これ以外にも、島田さんの名前で
翌月に脇差を注文しています
この島田さんの注文した「廣光」が、現存しているとか
(私は写真でしか見ていないのですが、展示もされていましたよね)
でも、これはあくまでも 「取次簿」 であるという事は、
「廣光」ではなく「兼定」を注文したという事になるのではないしょうか
無論、廣光さん自身も、
慶応年間に「大隅守」を受領した大和郡山藩士の刀鍛冶です。
幕末の実戦刀として人気のある方なので、廣光を注文してもおかしくはないですけど。
ん~、兼定さんへの注文
廣光さんへの注文
そして本日、ついに新選組からのお迎えにより
カッシー、新八っちゃん、一ちゃんの3人が帰隊しました
四日の朝、隊長の近藤から使ひが来て、早々帰局するやうに言ふ。(以下略)
(永倉新八)
元日からの居続けでしたね
「永倉新八」によると、
元日は、三木さんらの同行者たちは、帰隊します。
でも、カッシーはいい加減酔って戻ろうとはせず、
あとの事は自分が引き受けるから、今宵は飲み明かそう
と言い、そのまま居続けました。
で、ついに本日4日になって、
勇さんが使いを出して戻させたのです
戻ってみれば勇さんは大層なご立腹
3人に「追って沙汰する」と、謹慎を申し付けました。
新八っちゃんは以前会津藩に対して、勇さんの「非行五箇条」を直訴しています
(その時の記事は、こちら☆)
以来、勇さんは新八っちゃんに対し
「含むところあったので」 切腹させようとします。
けれど歳様が、
「永倉一人を罪するは片手落」 と言って止めたとか。
結果、カッシーは勇さんの部屋で、一ちゃんは歳様の部屋で、
両人とも2~3日の謹慎。
新八っちゃんは別室にて、6日間の謹慎させられました。
という事です
カッシーは、何故新八っちゃんと一ちゃんを誘ったのかしら
さてさて、その夜の事。。。
「切腹か、俺は?」
足音もたてずに入室してきた歳三に、新八が尋ねる。
沙汰が下りるまで、一人での謹慎を申し付けられていた部屋の空気が、わずかに揺れた。
「いや、俺がさせねぇ」
歳三の言葉に、新八が眉をあげた。
「俺は度々、近藤さんに意見してきたからな、うっとうしい存在になってんじゃねぇか?」
「そういうヤツが、必要なんだよ」
ふっと、新八が笑う。
「局長(あの人)の一番の強みは、あんただな、きっと」
それには答えず、歳三は新八をじっと見つめる。
「何故、伊東の誘いに乗った?」
「ん? 意味なんかねぇよ。ただで酒を飲ましてくれるっつーから」
「では、あるまい」
歳三の目が細められる。
「……」
「左之のように、元日には待っている女とていように、殊更に騒ぎになるような真似をするのは何か意味があるんだろう」
新八は、身受けした小常の顔を、チラリと想う。
そういや、大晦日にも戻ってやれなかったー
「ったく。昔からあんたはヤなヤツだよな」
新八が観念したように吐き捨てる。
「どうせ見当はついているんだろ?」
「やはり、平助か」
「あいつはもともと伊東の道場にいたヤツだ。もし伊東が分離を考えているんなら、ヤツについて行くだろう」
「伊東に、平助を諦めさせる為か?」
「いや」
新八が歳三の目を、真っすぐに見つめた。
「平助がついて行くだけの価値のある男か、見極めに」
歳三の頬が、ピクリと動いた。
「伊東について行くか行かないか、それは平助が決めることだ。そこまで俺は干渉せん」
「……」
「だが、みすみす詰まんねぇ男に、俺の舎弟を渡せねぇからな」
「ヤツが入隊してから今までだって、ずいぶんと刻はあったろうに」
「そりゃそうだが、今まではそんなに気にしちゃいなかったからよ」
お前らしい、と歳三が笑う。
「それで? 伊東はそれだけの価値のある男か?」
今度は新八が、ニヤリと笑った。
「わかんねぇ~!」
「はぁ?」
思わず、歳三の方から力が抜けた。
「なんだ、それ?」
「俺もさぁ、嫌いじゃないから、ついつい飲み過ぎちゃってよ。わかんなくなっちまったぜ」
歳三が、深くため息をつく。
「けど」
「ん?」
「ヤツは本気だ。本気で新選組(おれら)の行く末を考えているぞ」
「……」
「近藤さんと、やり方は違うかもしれないけどな」
歳三は思わず瞠目する。
「そうか…」
二人の間に、しばし無言の時が流れる。
浪士隊として、京に上ってきたばかりの頃の事。
芹沢との絡みの中で、勇が「天狗」になった事。
やがての池田屋事件、明保野事件、そして勇への批判。
伊東の入隊、山南の切腹ー
様々に交差する想いは、言葉にはできずとも共に感ずるものがある。
「邪魔したな」
ふいに歳三が立ち上がる。
「ああ。しばし大人しくしてるよ」
新八が片眉をあげて自嘲するように呟いた。
「休息所には、しばらく極秘任務で帰れないと知らせをしとく」
「… かたじけない」
肯いて歳三は部屋を出ようとし、一瞬のためらいの後に口を開いた。
「して、お前は?」
甲子太郎が分離しようとした時、賛同するのだろうか。
新八が豪快に笑う。
「聞くまでもねぇ。俺は近藤勇が嫌いだ」
「……」
「けど、それ以上に、近藤勇って漢に惚れちまってる!」
歳三の口角が、ついっと上がる。
「なんだ、それ?」
2017年如月8日 汐海 珠里