今日は、ひの新選組まつりの初日ですが。。。
そのレポはまた後日ね
150年前の本日は、元治元年4月6日。
この日、隊名を騙り市中で金策などを行っていた東本願寺の僧、介石らを捕縛しました
「副長、行ってきましたよ」
屯所の副長室を覗き込むようにして、総司が顔を出す。
「そうか。ご苦労」
歳三はちらりと目を上げたのみで、手元の書状に目を伏せた。
「えぇ~。それだけですかぁ。せっかく大立ち回りをしてきたのに…」
総司の唇が少しだけ尖がる。
新選組の隊名を騙っての押し借りの通報に、総司たちが出動したのだった。
ふうっと深い息を吐いて、歳三が諦めたように文机の前より移動する。
「わかったよ、入れ」
にっこりと笑って総司が入室し、歳三の前にちょこんと座った。
「捕縛したのは五名。高津八郎太郎他阿波浪人二名と五条通り小堀屋の亭主。それに僧介石」
「僧侶と町人が大小を持って浪士のふりか」
歳三が苦い顔をする。
「介石という人は常に大刀を携帯し、今弁慶との異名をとるくらいの怪力の持ち主だとの噂でしたからね」
「それだけじゃねぇ」
「えっ?」
「奴は宇和島藩の伊達家にも出入りし色々進言しているようだ」
「……」
「つまりは長州寄りのやつということだ」
「増えてきているようですね、そいう浪人が」
「ああ。島田や山崎の仕事が増える一方だ」
「歳さんも、ですよ」
えっ? というように歳三の目が見開かれた。
「さっきみたいに、おでこに皺寄せてばかりいたら、せっかくの男前も台無しですよ」
総司が両手の指で、眉間に皺を寄せる。
「っるせ!」
少し顔を赤らめて、歳三がぷいっと横を向いた。
「新選組の名を騙る奴らを許さないと思っているのは、歳さんだけじゃないです」
「……」
「新八さんや左之助さんをはじめ、皆がそう思っています。そしてそれは絶対に許しませんから」
「… そうだな」
「全部、背負わないで下さい。局長の為にも」
「勇さんの?」
「そうですよ。歳さんに倒れられでもしたら、一番困るのが勇先生ですからね」
「俺は」
言い返そうとする歳三の顔の前に、総司は自らの顔を近づける。
「鬼の霍乱、ということもあり得ます」
ふっと、歳三が笑う。
「山南さんの入れ知恵か?」
今度は総司の目が見開かれて思わず座り直した。
「なんで知ってるんですかぁ?」
にやり、と笑う。
「図星か」
「… もう休みます」
総司が立ちあがった。
「総司」
歳三が呼びかけて、懐から取り出し包みをほおった。
思わず受け止める。
「松緑庵という店のだそうだ」
金平糖であった。
「旨いらしいぞ」
半ば独り言のように言って、俺ももう寝るかと大きなあくびをひとつした。
2014年皐月10日 汐海 珠里
☆ 長州人医師の息子捕縛云々は、「酒泉直滞京日記」より
※ 六日 (中略) 東本願寺の弟子介石と申僧 此者大刀無双之者ニて名高き者也 出生者小倉之産ニて有りたる歟 東本願寺江参り弟子と相成 常々供抔致したる歟 外ニ同所之侍ニ高津八郎太郎と申者ト阿波浪人弐人 又外ニ五条通小堀屋とて酒屋有之候歟 此亭主右五人程 壬生浪士之ふりを致 所々金子を押借致 其外ニ種々不行跡ニ及候ニ付 壬生浪士ニて五人共ニ召捕申候 小堀某と申者ハ町人なからも襠高袴ニ大小杯帯し浪士之ふり致し 尤去年以来浪士共江力を合セ 種々不行跡ニ及候者之よしニ相聞申候 此節者京都市中浪士共 厳敷御吟味有之 (世話集聞記)