こんばんは。

連休中日、ですね。そして年始から265日目。つまり今年は残りあと丁度100日 叫び です。

 

さて、150年前の本日、文久3年8月10日

壬生浪士組結成当初から在籍していた 佐伯又三郎が惨殺されました ドクロ

場所は、千本通朱雀 そう、佐々木愛次郎さんが殺害された場所ですね。

さて、時間をちょっと逆戻り。昼下がりのこと…

 

 

「ごめんなさいよ。ちょっと掃除をさせておくんなさいまし」

相撲興行の最中、巡察途中で力士控室にて休憩をとっていた歳三は、その声に振り返った。

小柄な男が一人、頬かむりをして箒を手に入ってきた。

「ご苦労」

男はそのままの格好でひょいと腰を屈めると、歳三に近づく。

「佐伯が、捕まりました。島原廓にいたのを、召捕られたのです」

「!?」

「新見たちが見張っております。おそらく今夜始末をつけるものと…」

「そうか。芹沢は知っているのか?」

「いえ。新見は、任せると言われた事を盾にとって、事後報告で良いと考えているようです」

歳三は、切れるのではと思う程に、唇を噛む。

「どうしようもねぇな。俺らが手を出す訳にはいくまい」

「はっ」

 

「で、実のところはどうなんだ? 盗人だと本人は認めたのか?」

すこぉし目を細めて、男を見つめる。

「いえ。それが、その一件はどうでも良いようで…」

「?」

「もしかしたら、長州の間者かもしれません」

「何っ!!」

歳三の目が見開かれる。

「長州の久坂玄瑞をご存知ですか?」

「久坂…。名は聞いたことがある」

「攘夷派の過激長州藩士です。どうも新見とも面識があるようです」

「新見が? 長州派だというのか?」

「もともと芹沢も尊皇派です。もっとも芹沢は幕府に対してどうのという事はないかもしれませんが

新見は長州と密かに繋がっているやもしれません」

「それで、長州出身の佐伯に白羽の矢を立てたということか」

「おそらく内情を探るよう命じたものと思われますが…」

「佐々木愛次郎の件などがあり、芹沢の信頼も失せてきて、返って邪魔になったと?」

「確信はありませんが…」

 

目を閉じて、ひとつ頷く。

「一、いや斎藤はその事は?」

「ご存知だと思います。それと、斎藤さんから伝言がございます」

歳三の目が鋭く開かれる。

「政局が、動くかもしれません。それと、何があっても近藤局長を出動させないように、と」

歳三の目が、ひたと男の顔を見つめる。

男は、背に冷たいものが奔るのを感じた。

 

「わかった」

低い声にほっと、男が溜息をつく。

「ご苦労だった。佐伯の最期を見届けてやってくれ」

「はっ」

男が一礼した。

 

「では、ごゆるりとなさって下さいまし」

再び腰を折った男は、大きな声で挨拶をしつつ、部屋を出て行った。

歳三は立ち上がり、遠くを見つめる。

「どいつもこいつも、くだらねぇ事で命を落としやがって! 馬鹿ったれが!」

 

そして翌朝、さらに歳三を怒らせる一件が、報告されることとなる。

 

   2013年9月22日   汐海 珠里

 

☆長州間者云々は、「新撰組始末記」による。(久坂玄瑞が殺害したとの事)

※  八月十日 
一 千本通り嶋原より壱丁斗下ル朱雀村にて廿六七才之男胴斗り在之候処 其後傍之畑之中より首出申候 是ハ壬生ニ在留之浪士組之内 何か心得違之筋ありて 同組之人より討果し候よし        (みやこのにしき)
京都之風説荒増ニ候へ共 聞及候丈申上候 去ル十日 上京候へハ島原之裏ニ壱人斗之胴有之 是者裸ニ御座候  是ハ見申候  首無之候間 如何之訳哉ハ尋候へ共知れ兼候処 其後承り候へ者 会津侯之浪人組之内之由 是ハ勇士之由二候へ共 遊女屋等ニ而乱妨致 何分度々ニ相成候由二而 右同類之内二而 遊女屋江参り候所江参り しはり上裏道へ連行 首を取候由           (風説書)
一 城州葛野郡朱雀村領之内 千本通丹波口より壱丁斗北之方道端二 裸身二而首無之
                            男 死骸
右道端より左五間斗西之方 字岸之浦と申地中ニ有之候
                            男 首 弐拾五六才斗
右検屍之上三日肆申付置候間 心当り之者有之候ハゝ 右村役人へ引合之上 西町役所へ可訴出者也  亥八月十一日        (莠草年録)
元長州藩当時壬生浪士斉木又三郎ト申ス者 昨夜嶋原廓中ニ於テ召捕 千本通朱雀村上ノ入口畑中ニテ今暁切害有之候事
            八月十日      (近世野史)