上野公園は外国人観光客で大変な混雑とのこと。東京都美術館のボッティチェリ展すら行けなかったのでニュース情報です。江戸時代も上野の山に繰り出した貧乏長屋の連中は見栄を張った哀しい花見の噺。

長いです。お好きな人は読んでください。『 落語あらすじ事典 千字落語より 』

大家が、みんなで上野の山に花見としゃれ込もうと言う。酒も一升瓶三本用意したと聞いて、一同大喜び。ところが、これが実は番茶を煮だして薄めたもの。色だけはそっくりで、お茶けでお茶か盛り。玉子焼きと蒲鉾の重箱も、「本物を買うぐらいなら、無理しても酒に回す」と大家が言う通り、中身は沢庵と大根のコウコ。毛氈も、むしろの代用品。まあ、向こうへ行けばがま口ぐれえ落ちてるかもしれねえと、情なくもさもしい料簡で出発した。
初めから意気があがらないことはなはだしく、出掛けに骨あげの話をして大家に怒られるなどしながら、ようやく着いた上野の山。桜は今満開で、大変な人だかり。毛氈のむしろを思い思いに敷いて、一つみんな陽気に都々逸でもうなれと、大家が言っても、お茶けでは盛り上がらない。

誰ものみたがらず、一口で捨ててしまう。「熱燗をつけねえ」「なに、焙じた方が」「何を言ってやがる」

「蒲鉾」を食う段になると「大家さん、あっしゃあこれが好きでね、毎朝味噌汁の実につかいます。胃の悪いときには蒲鉾おろしにしまして」「何だ?」「練馬の方でも、蒲鉾畑が少なくなりまして。うん、こりゃ漬けすぎですっぺえ」


玉子焼きは「尻尾じゃねえとこをくんねえ」大家が熊さんに、おまえは俳句に凝ってるそうだから、一句どうだと言うと「花散りて死にとうもなき命かな」「散る花をナムアミダブツと夕べかな」「長屋中歯をくいしばる花見かな」 陰気でしかたがない。

月番が大家に、おまえはずいぶん面倒見てるんだから、景気よく酔っぱらえと命令され、ヤケクソで「酔ったぞッ。オレは酒のんで酔ってるんだぞ。貧乏人だって馬鹿にすんな。借りたもんなんざ利息をつけて返してやら。

「くやしいから店賃だけは払わねえ」「悪い酒だな。どうだ。灘の生一本だ」「宇治かと思った」「口あたりはどうだ?」「渋口だ」

酔った気分はどうだと聞くと「去年、井戸へ落っこちたときとそっくりだ」

一人が湯のみをじっと見て「大家さん、近々長屋にいいことがあります」

「そんなことがわかるかい?」


「酒柱が立ちました」