今日のブログは「福岡県庁と福岡市役所は福岡空港移転を決断したのか?」というお話です。

 

先週、福岡県庁と福岡市役所など西日本の40ほどの自治体が参加して「西のゴールデンルート」を作る組織を設立したという報道がありました。

 

 

海外旅行の入国者は「ゴールデンルート」を巡ることが多いです。福岡の方たちにはなじみがないと思いますが、成田空港か羽田空港に入国し、東京を観光したのち、富士山を巡り、新幹線に乗って、飛騨高山か京都に行き、関西空港から出国するというルートです。関西空港から入国する逆ルートもありますし、関西空港から出国する前に、世界遺産である姫路城や広島の原爆ドームや宮島の厳島神社を楽しんでから帰るという方もいらっしゃるようです。

 

残念ながらその方達は九州まで足を伸ばしません。福岡の太宰府を目指してくるということもちょっと考えにくいです。もし、宮島まで来た外国人が九州まで足を延ばすとすれば、自然を楽しむという点で考えられるのは阿蘇山か桜島ですし、別府などの素晴らしい温泉を巡ることも考えられます。有田焼の柿右衛門窯を訪問することもありかもしれません。ヨットが好きな方にとっては佐世保の九十九島は大変評価は高いです。

 

このゴールデンルートを西まで伸ばそうというアイデアは、アイディアとしては大変素晴らしいのですが、大きな課題があります。それは関西空港より西には、

① 着陸容量に余裕があり、

② ヨーロッパやアメリカなど世界各国に路線を持つ

空港がないということです。

 

成田空港などの主要空港には何人の外国人が入国してくるか、皆さん、ご存じですか?

2023年はまだコロナの影響が多少残っていましたので、2018年の主要な各空港の外国人入国者数のデータを見てみましょう。

 

・成田空港:856万人

・羽田空港:408万人

・関西空港:765万人

・福岡空港:241万人

・那覇空港:175万人

 

福岡空港はすでに着陸容量が満杯の状態ですが、2025年の春には2本目の滑走路が完成し供用開始となります。しかし 1本目の滑走路との間が200m ほどしか離れていないので独立して運用することができません。 独立して運用するためには最低でも1300m 以上の距離が開いていないと無理だと言われています。このため、2本目の滑走路が供用開始されたとしても着陸容量は1.26倍、約30%しかアップしません。そうすると、単純計算で約72万人の増加となります。

 

この72万人の枠が西のゴールデンルートを来る方達に全て提供できるのかどうかわかりませんが、関西空港から入国してきた人たちの5%が九州に来て福岡空港から帰るとすると、それだけで約40万人となります。もし10%の人が福岡に九州に来て福岡空港から帰るとなると76万人。すでに着陸用より容量を超えてしまいます

 

西のゴールデンルートというわけですから関空や成田から入国してくる人たちの10%は最低でも目指しているわけですよね(これ、木下の推測です)?そうなると福岡空港の容量がすぐに足りなくなりますが、どうするのでしょうか。

 

そして、もう一つ問題があります。福岡空港の滑走路が短いということです。 2800m しかありません。関西空港に入国する人は、福岡空港に入国する人よりも欧米の人が多いです。この長さは、ある程度の大きな飛行機が燃料と荷物を満載してヨーロッパに直接飛ぶには厳しい長さとなります。

 

こういったことを考えると、本気で西のゴールデンルートを作るつもりであれば道は2つしかありません。1つは福岡空港の沖合移転です。副貸の反対により麻生知事が断念された構想ですが、これを福岡県庁と福岡市役所はもう一度トライするつもりではないかと考えられます。あくまで、本気ならですが。なお、完成までには30年はかかるでしょう。

 

もう1つは佐賀空港か北九州空港に新幹線を乗り入れるようにすることです。現在、長崎新幹線は佐賀駅ルートか佐賀空港ルートかを巡って揉めていますが、佐賀空港ルートとなったとしても、完成までには30年はかかります。

 

そうすると西のゴールデンルートを作ろうと打ち出したところで、20年間は、物理的に非常に難しいということになります。出口がないのですから。この問題一体どうするんでしょうね。

 

アイデアはいいと思いますので、富裕層に絞って温泉やなんかをゆっくり楽しんでもらうというコースの方が、人数は少ないけれどお金が九州に落ちるのではないでしょうか?ただ、富裕層に絞ると、今度は、福岡空港からの海外便にファーストクラスがないという問題にぶち当たります・・・知恵と工夫で何とかするしかないですが。

 

現在、福岡市役所は、福岡市の次期総合計画を検討中ですが、観光の目標が入国者数なんて陳腐な目標にはならないと思います。これからの観光の目標数値は、延べ宿泊者数と1人当たりの消費金額、要するにいくらお金を使ったのかということが目標になります。

 

そう考えれば西のゴールデンルートとしてたくさん人が来ることを追求することは現実的ではないですし、経済的にもあまり意味がないことだと思います。マスコミの皆さん、この程度の質問は、是非、お願いしますね。