今日は、3連動地震が発生した場合には、北九州空港は羽田・中部・関空のバックアップ拠点になりうるのではというお話です。

 

 20163月頃のことですが、私が佐賀空港に新幹線を通す案を検討していた時に、日本の大手航空会社の幹部Aさんに意見を伺うことがありました。その時のメモを改めて読んでいたのですが、AさんはLCCが日本にどんどん就航してくることに賛成の立場でした。

御社の飛行機に乗っていないのにどうして歓迎するのですかと質問すると、「LCCの客は進化する」とのお答え。タイなどではLCCに乗って海外旅行をする人が増えましたが、経済成長とともにそのお客さんも所得が上がり、今ではタイから日本に来る時に、Aさんの会社の飛行機の利用が増えているのだそうです。だから、東南アジアの人たちがLCCでやってくるのは良いことだとの評価でした。 

 

 佐賀空港に新幹線を通したら空港としての魅力は増すと思いますかとの質問には、否定的な感触でした。理由は簡単で、佐賀空港に新幹線をとしたとしても、筑後船小屋駅にて九州新幹線と接続しますが、博多駅から鳥栖、久留米、筑後船小屋と経由する駅が多く、30分以上はかかると見込まれるからです。そして、県をまたぎますので、心理的に近い感じがしません。福岡市のお客さんが新幹線に乗って佐賀空港まで来るということについては否定的でした。

 

 一方、北九州空港に新幹線を入れるというアイデアについては、Aさんは「それは魅力的ですね。」と言って身を乗り出してこられました。24時間騒音を気にせず使える海上空港ですし、滑走路も3000mに延長できます。博多駅から北九州空港までが直通で25分程度。新鳥栖駅から40分、久留米駅からも45分、熊本駅からでも60分、大分駅からでも30分と九州各地から近いので、九州各地の海外への深夜早朝便の需要やヨーロッパ便の需要を集めることができれば、国際空港として面白い存在になるとのことでした。

 

 そして、もっとも興味深かった反応が、「三連動地震」が来た時のバックアップ拠点としての機能強化をしておくことが重要とのご意見でした。「三連動地震」とは、東海地震、東南海地震、南海地震が同時発生する巨大地震のことです。三連動地震が起こると、M9クラスの地震が起こる可能性もあると言われている巨大地震です。茨城県から鹿児島県の太平洋岸にかけて巨大な津波に襲われる可能性が高いのです。

 

この三連動地震が来ると、羽田、中部国際、関西空港は津波の被害を受ける可能性があり、東日本大震災の時の仙台空港のようにしばらく機能が停止するかもしれません。日本と海外との輸送を考えると非常にまずいことですが、その肩代わりができる空港は、津波の被害を受けない空港で、滑走路が3000メートル以上ある空港が候補となるでしょうか。現時点では、3000メートルの滑走路を持つのは、内陸の成田空港と新千歳空港、仙台空港(津波の被害については?です)、岡山空港、広島空港、熊本空港、鹿児島空港くらいですが、人口密集地に近いのは、成田と岡山、広島ですね。さらに24時間利用可能な空港となると、新千歳だけしかありません。

 

では、北九州空港はバックアップの拠点として使えるか。北九州空港の周辺はこれまで津波の被害を受けた歴史がないとのことですので(気象庁には確認していません。北九州市議会の情報です)、三連動地震が発生しても被害を受けないようです。そして、日本で数少ない24時間使える空港です。課題は、滑走路が2500mと短いこと。

 

 八田先生の論文によると、長距離便の就航が確実でなければ北九州空港の滑走路の3000mへの延伸は政府から認められないとのことですが、政府が管理している空港ですので、バックアップ拠点としての3000mへの延伸を政府に提案してみることも検討すべきではないかと思います。

一度、大阪航空局にきちんと取材をしてみないといけませんが、日本全体としてみた時には、三つの空港の機能がマヒした時に受入可能な空港を準備しておく必要があるというのはその通りと思いました。滑走路延長のための敷地は十分にありますので、舗装などの費用だけです。