1949年の火災で金堂壁画の大半が消損したが、

 

残った天井板に描かれた職人の落書きが公開された。

 

仲間の老人の顔が描かれている。(上部は右手か)

 

その部分は隠れることがわかっていたため飛鳥の職人はいたずらでさらさらっと描いたのだろう。

 

それが1400年後に衆人の目に触れることになった。

 

あるいはこういうことも予想していたかもしれない。

 

名古屋のボストン美術館(現金山南ビル美術館)で葛飾北斎展が開催されたときに、

 

私は展示室の隅の落書きのような北斎の小品を見て、

 

それが実にイキイキとしていて人間北斎と対話しているような気持ちになった。

 

他の人が注目しない小品に自分だけの北斎を見出したような気持ちになった。

 

法隆寺の落書きも飛鳥の職人と世間話でもするような気持ちになる。

 

「今日はよく降るねえ」

 

「なぁに、明日は晴れるさ」

 

法隆寺の天井板に飛鳥時代の落書き 手慣れたタッチで男性の顔 ...