その情報は、情報価値がないから流通しない−8 | 福田敏也 オフィシャルブログ PEACE! Powered by Ameba

その情報は、情報価値がないから流通しない−8

「その情報は、情報価値がないから流通しない」
というテーマで書き始めたら
なにやらいろいろ書きたくなって
止まらなくなってきました。
このエントリーは、その第9回の内容です。
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コーポレートサイトのリニューアル。
そうした仕事をお引き受けする場合にも
情報価値視点の整理は大切になります。

Webサイトは
サーバーに溜まった情報(ログ)をみれば
そのサイトのどんな情報を求めて人々がやってきているのか
一目瞭然。
そのサイトのどこに情報価値の高い情報があるのか
それが日々視覚化されていくのがWebサイトなのです。
その意味で
Webサイトリニューアルプロジェクトで最初にすべきことは
過去ログの解析です。
それを見て、その企業が発信している企業情報の
どこにもっとも市場ニーズが高いのかを探っていく。

しかし、過去のWebサイトに
その企業が発信しうる全てが存在しているわけではありません。
ログがはじき出している結果は
その企業がとりあえず今
企業HPで実現しているコンテンツの中での順位づけであって
そこに全ての可能性が集約しているわけではないのです。
まあ、当たり前の話ですが。

次にすべきことは、
その企業の歴史、沿革、経営理念やフィロソフィー、
日本市場で果たしてきた役割、海外市場で果たしてきた役割、
次期経営方針、ビジョン、社長の発言、
事業内容、サービス内容、提供商品、市場ポジション、
組織構造、社風、経営者の個性、社会活動など
その企業にまつわるあらゆる情報を読みこむこと。
そして同時に
主要部署にインタビューをかけて
文書ではみえてこない企業情報を拾いあげていくこと。
そして、そうした全体像をふまえた上で
その企業の強みが発揮される、あるいは
その企業らしさがもっとも現れる
情報発信のあり方がどこにあるのかを考える。

情報価値という視点にたったとき
そこにはいろいろな物差しがありえます。
わかりやすく技術力が優れていてその評価が圧倒的なら
それを基本に考えればいいし、
その企業の評価を支える特定商品ブランドやラインナップがあるなら
それを基本に考えるのもいい、
その企業の経営者が圧倒的にユニークで
その人に情報価値が高いなら
その人を中心に据えたあり方を考えるのもいい。
また、
その企業の個性が「圧倒的明るさ」という社風にあるのだったら
それを基本に考えるのもいい。

企業も人間も同じです。
人間を好きになる理由は、いろいろです。
仕事ができる、頭がいい、能力が高い、ということもあれば
家柄がいい、学歴が高い、収入が高いということもある。
性格がいい、優しい、明るい、マメである、ということもある。
その人が選ばれる理由は
必ずしも実績やスペックだけとは限らないのです。
その企業がもっている
情報価値の高い要素を柔らかく考えていく必要があるのです。

もちろんその企業が
今後どうなりたいか、
どういう企業に見られたいか。
その要素も重要です。
そのアウトプットの最終チューニングは
そうした要素もふまえながら
その落としどころを探っていくことになります。

ただ、コーポレートサイト設計において
もっと重要なポイントがあります。
それは、コーポレートサイトの価値は
リニューアルしたタイミングではなく
運用されて以降に決まっていくということ。
短期的な広告活動ではなく、
その企業があり続ける限り運用される企業活動そのものなのです。
リニューアルの瞬間にその表現が褒められても
それが短期的価値しか持たないとすると
そのサイトの情報価値は
ほんの数ヶ月で下落していくことにもなる。

最近さまざまな場面で語られているように
コーポレートサイトは
企業が自ら所有し運営するメディアなのです。
それがメディアであるという視点にたつと、
2つのことがとても大切になってくる。
メディアとしてどれだけ良くできた箱になっているか
その企業ブランドにふさわしい箱になっているか、
使いやすい箱になっているか、という点。
そしてもうひとつは、
そのメディアに載せるべき情報の情報価値を高める
情報編集と編成のあり方を日々考える機能が
あるか、という点。

結局、その企業の情報活動の価値は
日々の発信活動の視点と内容によって決まります。
企業が生き物のようであるように
その企業の姿をうつす鏡であるコーポレートサイトも
生き物のように姿を変えていくべきです。
その頻度と内容が
その企業のイメージをつくっていくことになる。

2003年からずっとお手伝いしている
森ビルさんのコーポレートサイト。
2008年に実施しリニューアルでは
企業のオウンドメディアとしてのあり方を模索しています。
街づくりの会社、ビルをたてる会社という側面だけではなく
文化事業、タウンマネージメントなど
さまざまな顔を持つに至った
現在の森ビルさんの活動が多面的に発信される箱は
どうあるべきなのか。

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777は、CMS、
コンテンツマネージメントシステムの意味を重視しています。
決して、システム開発の会社ではありませんが
そのあり方にはとても興味があります。
なぜなら、
そのあり方を考えることが
企業の情報発信の頻度と鮮度を保つことになる
と信じているから。
その仕組みとしての価値だけでなく
表現としてのあり方を考えることが
その企業の情報発信の価値を高めると信じているから。

森ビルさんのコーポレートサイトでは
画像とテキストを入れるだけで
トップエリアの企業情報が即座に切り替わる
CMSをつくっています。
それなりに表現リッチなエリアであっても
どんなスキルの担当者も対応できる仕組みをつくる。
そのことで
そのサイトは価値の高い情報発信の
道具になっていく。

CREATIVE CMS。
CMSという領域は
ただ単に、省力化やコスト効率化という文脈だけで
語られるべきではなく、
企業の情報価値を高める積極的な道具として
考えられるべきです。
その領域は中には、
クリエーターにしか組み立てられない
CMS設計がある。
そう信じているのです。

コーポレートサイトにおける情報価値の話を書き始めたら
予想を超えて長くなってしまいました。
すいません。

(つづく)