Cannes09:PEACE Report-2 | 福田敏也 オフィシャルブログ PEACE! Powered by Ameba

Cannes09:PEACE Report-2

福田敏也 オフィシャルブログ PEACE! Powered by Ameba-カンヌ

(昨日のエントリーからつづく)

昨日のレポートでは、今年の結果に至る流れを中心に書いてきましたが、Report-2では、そこから読み取れる今後の流れを中心に書いていきたいと思います。

社会を変える広告、その意味はどんどん重視される。

広告がきちんと社会に役立っていくこと。社会を変えることに関わっていくこと。そこにプロのコミュニケーションノウハウを惜しみなく注いでいくこと。広告会社、広告クリエイティブの存在意義が問われてきたこの数年、広告ってなんだろうを自問自答した結果が、こうした社会と広告のかかわりかただったんだと思います。オバマキャンペーンは、選挙という特殊なテーマでありながらグランプリを獲得した。しかも、TITANIUMとINTEGRATEDの2部門で。それがパブリックなテーマであろうがなかろうが、社会を変えうるコミュニケーション設計であれば、カンヌは積極的に最高評価を与える!という強い意志を感じます。

人をつないだこと、動かしたこと。

その仕事は、人をつないだかどうか、動かしたかどうか。それは、さらに重視されています。「THE BEST JOB IN THE WORLD」は、卓越したウェブインターフェースがあるわけではない。ものすごい感動的なCMがあるわけでもない。なにがしかすごいデザインシンボルがあるわけでもない。でも、PR戦略、ネットメディアの効果的な使い方と、それによる人々の巻き込みのシナリオが卓越していました。そしてそれは成功しました。小さな予算で世界中の膨大な数の人々の関心を得ました。時代は、コミュニケーション設計の時代へ。もちろん、この流れがさらにすすんでいけば、単品表現にも優れながらコミュニケーション設計としてもイケてる仕事が増えてくるに違いありません。でも、しばらく時代は、コミュニケーション設計の知恵と力が重視されることになりそうです。

ターゲットにとって価値あるサービスが最高の広告になること。

NESTLEのKit Kat「Kit Kat Mail」がPRのグランプリを獲得しとこと。それは、東京インタラクティブアドアワードのグランプリが「mixi年賀」になったのと同じように、ユーザーにとって価値あるサービスのあり方を考えることが最高の広告にになるっていう、世界的広告の潮流の延長線上にあるものだと思います。AKQAの「EcoDrive app for Fiat」。これもその考え方に近いもの。生活者の日常的UTILITYの中にブランドのありかたを考えること。ブランドファンの毎日にバリューを提供する企業活動のありかたを考えること。そのことが結果的に、イメージアップにつながっていくこと。この流れは、きっとこの先もいろんなカタチで試みられていくことになると思います。

ネット系なのかトラディショナル系なのか。。。

これまでネット系とトラディショナル系、2つのクリエイティブは役割分担的にもわかれ、棲み分けて来たのかもしれません。でも、もうそれも過去のことになろうとしています。メディア視点をもって新しい広告のあり方を考えてきたネット系クリエーターがマスまで含めた統合キャンペーンを考えること。もちろん同時に、トラディショナルな流れのクリエーターがネットコミュニケーションのあり方まで設計していくこと。統合型のキャンペーンのこれからは、こうした流れができてきたことによってさらに面白い時代を迎えそうです。つなぎ方、動かし方、広げ方のシナリオ、そして個々のクリエイティブ。やはりそれは、きちんと企みをもった誰かがその目線できちんと全体を組みたてていくほうがシャープに面白くなって行くに違いありません。

トラディショナルVSイノバティブ

トラディショナルなCM映像とOTHER SCREENの映像をわけて評価しようと2つのグランプリを想定していたFILM部門は、あえてそれを1つにして贈賞しました。しかしながら、そのトラディショナルVSイノバティブの2軸は、いろんな部門で議論され続けていく数年になることが予想されます。Outdoorの審査員長をつとめた電通鏡さんも、今年の審査を始めるにあたり、トラディショナルな文脈でのいいものとイノバティブな文脈でいいものを、きちんと2軸意識しながら審査したいとおっしゃったことが博報堂の石井さんのコメントの中でも紹介されていました。それは、引き続き来年も、FILM審査で、OUTODOOR審査で、RADIO審査で、その他審査で語られ議論されるポイントになっていくのでしょう。

そもそもこんなに部門が必要なのか。。。

個々のカテゴリーごとの縦割りの評価よりも、コミュニケーション設計としての横断的知恵の重要性が問われる時代的意味が重要になってくると、これだけ細分化された部門が存在することに意味があるのか。改めて問われることになるかもしれません。すでに今年、「Best Job In the World」でグランプリトリプル受賞が起こったように、次回、さらに次回に、トリプルどころか4冠、5冠もあり得るかもしれません。ホントにすぐれた横断的キャンペーンは、そんなにたくさん生み出されるわけではないでしょうから。そこで改めて、部門がこれだけ存在することの意味が、議論し直されるのかもしれませんね。

FILMが真ん中にいないカンヌ

常にカンヌは、FILMグランプリが、その年のカンヌを締めくくる存在であり続けてきました。そのグランプリの行方が、もっとも話題性をもって世界にアナウンスされるものでありました。でも、今年、その感じは、少し後退しています。コミュニケーション設計の重要性が問われる時代になるにつれ、FILM単体での素晴らしさは、カンヌにおける時代性議論の脇に置かれ始めているという印象すらあります。正直それは、FILMグランプリに対し目を輝かせて見まもってきた自分にとって、とても寂しいことでもあります。この変化と激動の時代が落ち着きを取り戻されれば、きっとまた。そうなることに期待をこめつつ、同時に、僕たち1人1人が、新たなコミュニケーション設計でありながら生活者のイマジネーションを心地よくドライブする仕事を生み出す努力をしなければいけないことを強く感じます。

歴史的世界的不況下で行われた今年のカンヌ。エントリー数や参加者数が減ったことによる盛り下がり以上に、変化のあり方を模索する熱い議論による違った意味の盛り上がりが起こった年であったのではないでしょうか。遠く日本からいろいろな記事をよんでいるだけで、その熱さが伝わってきました。日本市場なりの、日本の企業なりの変化のあり方をさらに積極的に考え、企業サポートしていくこと。問題意識をもってクリエイティブを考えていくこと。がんばんなきゃ!ですね。みなさん。