ずっと前から、見ようと思って何年も何年も経ってしまった映画。
制作1985年、日本公開は翌年だった。
話題になったのは、本当のソリストのバレエダンサー、ミハイル・バリシニコフが主演することだった。私は「ブエノスアイレス」と「武曲MUKOKU」とともにGEOのポストインのレンタルで借りたが、最近は特に見たい劇場版映画がないから余裕で見られるかと思ったのに、結局武曲はみないままに返却期日が近づいて返却することになった。(;´∀`)
 
まず、画面いっぱいに舞台が映し出される。優美さや華やかさのない、殺風景な部屋風の舞台装置だが、そこで現代風のダンス劇が繰り広げられる。
 
 
 
これはコクトー原作の、「若い男と死」という作品を、ニコライ・ロドチェンコ(バリシニコフ)ともうひとり女性ダンサーが演じているのだった。演じ終えると、パリのオペラ座(多分?)のようなホールを埋めた観客から万雷の拍手。ニコライは、楽屋で恋人(?)とあいさつを交わし、女性マネージャーとすぐ日本に旅立つ。売れっ子ダンサーらしい。
 
しかし、彼の乗った旅客機は、エンジントラブルで、すぐ近くの空港に緊急着陸せねばならなくなった。北回りを飛んでいたらしく、なんと最寄りの空港は、シベリアにあるソ連(当時)の軍用空港だという。それを聞いたニコライの様子がおかしい。彼は、揺れる飛行機の中でトイレにかけこみ、破ったパスポート?をトイレに流そうとする。
 
下は、翼を建物に引っ掛けながら着陸した旅客機。
 
 
 
死者と負傷者を出した事故だったが、生存者も大勢いた。人道&世界へのアピールのため、ソ連は乗客乗務員をあそこにしては厚遇した。ソ連のKGBの役人チャイコ大佐が来て、病院にいっていない元気な人たちを領事館に送ると言った。そして、大けがをして病室で寝ている、一人だけパスポートを所持していなかったニコライに尋問をする。ニコライは誤魔化したが、彼はソ連から亡命した一流バレエダンサーだった。
役人は彼を(亡命した)犯罪者と言うが、彼がなにせ世界的に有名なダンサーであるため、あまり乱暴な扱いはできないらしい。これからずっとソ連にいて、ソ連のために踊るという誓約をするよう迫るが、のらりくらりとかわすニコライ。
原題のホワイトナイツは、白夜のことだ。チャイコは、ホワイトナイツの時期は嫌いだ、とつぶやく。
 
 
だんだん回復したニコライを、チャイコは、シベリアで質素なミュージカルショーを上演している男・アメリカ人のベトナム脱走兵であるレイモンド・グリーンウッド(グレゴリー・ハインズ)に預け、彼とその妻(ソ連国籍)ダーリャを見張り役にする。
レイモンドはニューヨークの貧困街生まれて、黒人であるため将来が開けず、戦争に行くしかなかった。しかし、行ってみたら婦女暴行とか略奪とか虐殺とか、とても耐えられないことばかり(軍内の規律がなってないね💦)で、それで脱走したという。彼はタップダンスが得意だったし、歌も歌えたので、こういう職にありつけたようだ。そして彼の通訳をしていた妻と結婚した。
 
三人はレニングラード(今のサンクトペテルブルグ)に送られ幽閉された(とはいっても広々として、バレエの練習場もある建物で、もしかしてキーロフ・バレエの劇場の入っている建物?ニコライの居室もある)チャイコはニコライを、キーロフ・バレエのシーズン開幕の夜に踊らせたい。力づくで言うことをきかせるのかな、と思ったけど、やっぱり体を痛めつけると踊れないし、本人がやる気にならないと舞台にあがれないからなんとなく(KGBにしては)緩いのかしら?(^^;)
 
さらに、ニコライが一緒に亡命したかった、かつての恋人でバレエでは相手役のガリーナ・イワノワ(ヘレン・ミレン)にも、彼を説得させようとする。ガリーナはダンサーであるとともに今は芸術部門の要職にもついているようだ。
 
 
しかし、話し合いは平行線。ニコライは、何より自由が欲しい。
キーロフ・バレエの舞台でガリーナに踊って見せるニコライ。やはり彼のダンス(モダンバレエ?)は素晴らしい。
 
 
浴室の窓から屋根の上に上がって、周囲を偵察するニコライ。見張りは玄関前の路上にいつもいるが、暇そうによくチェスをしているし、運転手は車の中で昼寝するようだ。脱出を諦めていないニコライはカーテン(?)かなにかを撚り合わせて、丈夫なロープを作り始めた。
ただ、別の階で小学生くらいの少女たちがバレエの練習をしているところに顔を出して、自分はイワノワと踊ったこともあるバレエダンサーだといっても、彼女らは全くニコライを知らず信じない。箒で戦おうとする勇ましい少女もいた。幽閉された階から抜け出たことを咎められ、ダーリャはレイモンドと離され連れていかれた。
 
 
そしてレイモンドとニコライは、人種も境遇も違うため、はじめ反目していたが、ダンスを通じて心をかよわせていった。レイモンドはいつも、流行りのダンスチューンらしいアップテンポの曲をかけてダンスする。(ラジカセでした、時代を感じるねえ)
(;^ω^)それにぴったりとシンクロして踊って見せるニコライ。圧巻だった。
 
 
 
 
 
 
 

 
 
いっぽうマネージャーも動いていた。アメリカ領事館では、担当者がニコライが脱出したらどこで落ち合って領事館に運ぶか計画を立てていた。また、ガリーナも秘密裏にその計画をサポートしていた。彼女は一緒に行こうとニコライに誘われても、やはり私はここに留まると断った。
 
ニコライはレイモンドのために、ダーリャに気がある振りをして、連れ戻させた。ダーリャが妊娠したことを知ったレイモンドは、この国で子供を育てることを考え、二人でアメリカに帰国することを決意した。
 
 
決行の日。チャイコが遠くに出かけたことを確認して、ロープを使っていつもの部屋から下の階に移る作戦。まずニコライがいき、ダーリャを移し、さあレイモンドというところで、勘のいいチャイコが帰ってきてしまった。察知したレイモンドは自分が時間を稼ごうと、戻ってチャイコを別室に誘導し、ニコライと妻の仲に対する愚痴を言い続けた。それがいつのまにか酒の強さを競うことになり、レイモンドとチャイコのウォッカの飲み比べが始まった。
その間、モニター室(ニコライの行くところには盗聴器だらけ(-_-;))では、カセットから流れるレイモンドとニコライの口喧嘩の模様が延々と聴かれていた。
 
ダーリャとニコライはレイモンドを案じるが、仕方なく玄関から抜け出て、領事館の役人と合流し、普通の小さい車でアメリカ領事館を目指した。役人はニコライだけを連れて行こうとしたが、ニコライは応じない。気づいて追ってきたソ連の警察・役人(KGB)から辛くも逃れ、しかもその日は何かがあってマスコミが領事館に来ていた日だから、領事館前の逃亡劇は世界中に発信されることになる。そこでソ連が非道なことをすれば世界中から批判が集まる。ソ連の警察(?)の車にニコライの車がぶつかり、降りて走って領事館に駆け込むニコライらを、迎えに走り出てくる人たち。青い服がマネージャー。
 
 
 
結局脱出と再亡命に成功したニコライ。チャイコは悔しそうだが、精いっぱいとりつくろった笑顔で、ソ連の親切さをアピールした。
ダーリャもアメリカ入国を認められたらしい。
 
その後のある夜、レイモンドは、収容所から出されて連れ出された。いよいよ処刑(?)とおののくが、連れていかれた先は国境地帯だった。向こうの方から、一人が歩いてこちらにやってくる。その男をこちらに引き入れると、レイモンドは、あっちへ行けと言われた。恐る恐るそちらにいくと、あちらには迎えに来たニコライの姿が。
これはトム・ハンクスの「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015)で見たことがある、「人質(捕虜)交換」であった。
 


そしてラスト。ライオネル・リッチーの「セイ・ユー・セイ・ミー」が割と唐突に流れるなか、二人の友情でこの亡命事件は解決したのだった。
 
 


 

そうだったのか。ほとんど予習なしに見たからわからなかったけど、これはつまり人種や国籍を超えた友情物語だった、ということなのね。
キーロフ・バレエの開幕は、だいたい9月くらいとのこと。ホワイトナイツが終わるころということなんでしょうね。